終焉を迎えたリカルドと浦和レッズの2年間 濃密だった22年とJ1最終節の意味
【(C)URAWA REDS】
澄みわたった青空の下、ディフェンディングチャンピオンの川崎フロンターレ相手に2-0と完勝し、FUJI FILM SUPER CUP 2022のタイトルを勝ち取った。
2点をゲットした江坂任の動きはキレキレで、新加入の岩尾憲のゲームコントロールにも唸らされた。伊藤敦樹の左サイドハーフ起用もハマったし、その伊藤が左サイドハーフとボランチのふた役をこなしたのも見事だった。そして、アレクサンダー ショルツは相手のエースを完璧に封じ込めた。
あの日、レッズの周りは笑顔に満ち溢れていた。
それから8か月半が経ち、キックオフされた目の前の試合では、横浜F・マリノスに次々とゴールを割られていった。相手は優勝の懸かった重要なゲームとはいえ、この差はいったい……。
なぜ、こうなってしまったのか。
どこでボタンをかけ違えてしまったのか。
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その序盤で不用意なファウルから退場者を出し、勢いに乗れなかったことも自分たちの首を絞めたし、3年計画の3年目、優勝を目指すということで、発展途上に過ぎないチームが過度のプレッシャーを背負ったことも苦しんだ要因だろう(ナイーブと言えばそれまでだが)。
いや、そもそもレッズの歴史や文化を考えたら、リカルド ロドリゲス監督を招き、ポジショナルプレーの概念を身につけ、スペイン式のポゼッションスタイルに挑戦するという選択自体が間違っていたのかもしれない……などと言い始めたらキリがない。
いずれにしても、今季のレッズが3大タイトルを逃したことは紛れもない事実だ。
ただ、苦しんだはずの1年を振り返ってみると、意外にもポジティブなシーンがたくさん思い浮かんでくる。
FUJI FILM SUPER CUPはその筆頭だろう。3月19日のジュビロ磐田戦後半から登場したダヴィド モーベルグがその4分後に相手DF3人に囲まれながらゴールを奪った衝撃や、5月18日の横浜FM戦の後半だけでキャスパー ユンカーがハットトリックを達成した衝撃は、今でもはっきりと覚えている。
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勝ち切れない試合ばかりだったにもかかわらず、なぜ、こんなにもポジティブなシーンがたくさん浮かんでくるのか。
『Football LAB』によると、シュート数はリーグ3位、チャンス構築率はリーグ2位! どうりで、好シーンが印象に残っているわけだ。
そして、なんと言っても今シーズンのハイライトは、埼玉スタジアムで声出しが解禁された8月10日の名古屋グランパス戦から、6-0の大勝を飾った8月13日の磐田戦、8月19日に開幕したAFCチャンピオンズリーグ2022ノックアウトステージまでの流れだろう。
名古屋戦では北ゴール裏から奏でられるチャントと浦和レッズコール、スタジアムに鳴り響く手拍子に鳥肌が立ちっぱなしだった。心を揺さぶられ続けたせいで、試合後の『We are Diamonds』で涙を堪えるのに必死だった。
PK戦までもつれ込んだACL準決勝での全北現代との死闘では、最後に江坂がゴールネットを揺らした瞬間、その場で立ち上がり、思わずガッツポーズをしてしまった(記者としてはあるまじき行為だ)。
久しぶりに、レッズサポーターの底力、真の姿を見た思いだった(入場制限があったわけだから、真の姿でないことは分かっているが)。