終焉を迎えたリカルドと浦和レッズの2年間 濃密だった22年とJ1最終節の意味

飯尾篤史

【(C)URAWA REDS】

 先ほど「ハイライト」と書いたのは、つまり、そういうことだろう。あの8月が今シーズンの物語のクライマックスとなってしまった。

 あれだけの演出と声援による大サポートを受け、あれだけの舞台で、あれだけの激闘を繰り広げたのだから、誰だって燃え尽き症候群のようになる。

「そんなやつらは浦和の漢じゃない」と言われれば、そのとおりだろう。その点、あの流れで決勝を戦えなかったのは不運だった。あの勢いに乗れば3度目のアジア制覇を成し遂げ、このチームが今シーズン、無冠に終わることはなかったかもしれないのだ。

 ただ、ここで言いたいのは、「たら・れば」の話ではない。スタジアムの日常を少しだけ取り戻し、最高の雰囲気を作り上げ、サポーターと選手が一緒に『We are Diamonds』を歌った今シーズンは、そんなに悪いものじゃなかったのではないか、ということだ。

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 10月31日にリカルド ロドリゲス監督の解任が発表された。

 情報は少し前から入手していたものの、実際にリリースを突きつけられると、心苦しいものがある。僕はこの監督が好きだったし、この監督が実現を目指したサッカーも好みだったからだ。

 もっとも、発表から数日が経った今は、それも仕方がないという思いでいる。いくら目標を見失ったからといって、C大阪に0-4、サンフレッチェ広島に1-4、横浜FMに1-4と続けざまに大敗し、ポジショナルプレーの概念も薄れていた。サッカーのスタイル以前に、マネジメントの部分で問題を抱えてしまったかもしれない。

 でも、近年、方向性を見失っていたレッズにひとつの道筋が示されたこの2年間のチャレンジは、決して無駄ではなかったし、無駄にしてはいけないと思う。

 3年計画の残り2年という難しいタイミングで就任し、天皇杯のタイトルとACL決勝の出場権をもたらしたリカルド ロドリゲス監督は、リーグ優勝という期待には応えられなかったが、レッズの歩みを進めた功労者のひとりだろう。

 チームが敗れたときには先頭に立ってファン・サポーターに頭を下げ、『We are Diamonds』がスタジアムに鳴り響いていたときは、ベンチサイドで感動と誇らしさの混ざった表情で聞き入っていた。リカルド ロドリゲスとは、そういう監督だった。

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 その意味では、ミシャさん(ミハイロ ペトロヴィッチ)のようにシーズン途中の別れではなく、ラストゲームを一緒に戦って別れのときを迎えられるのは、レッズに関わる人すべてにとって幸せなことだろう。

 そして、監督が代われば、選手も変わる。阿部勇樹や槙野智章、宇賀神友弥のような形で送り出すことはできないだろうが、レッズのユニホームを脱ぎ、ひっそりと大原サッカー場から去る選手は確実に存在する。

 それぞれにさまざまな思いが去来していると思うが、11月5日に行われるアビスパ福岡とのホーム最終戦では、リカルドレッズの最後の勇姿を目に焼き付けたいものだ。このチームのラストマッチを見届けることから、来シーズンが始まるのではないか。そうやって、サッカークラブの歴史は積み上げられていく。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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