連載:「知られざる審判の世界」野球とサッカーを支える“フィールドの番人”

W杯予選でミスジャッジを犯した吉田寿光 59歳の今も笛を吹き続けている理由とは?

飯尾篤史
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59歳となった今も呼ばれれば駆けつけ、主審を務める吉田氏。娘も女子1級として活動している 【飯尾篤史】

 今から17年前、日本のトップレフェリーだった吉田寿光はW杯予選の大一番でルール適用ミスを犯した。試合はFIFA によって無効とされ、後日、再試合となった。この前代未聞の事態には、どのような背景があったのか。53歳までJリーグでレフェリーを務めた吉田が、59歳となった今もあらゆるカテゴリーの試合で笛を吹き続けている理由とは?

抜け落ちてしまった記憶

 ジーコジャパンが北朝鮮を2-0で下し、ドイツW杯出場を決めてから約3か月後の2005年9月3日、プロフェッショナルレフェリーで、国際主審の吉田寿光は中央アジアでの大一番を裁いていた。

 W杯アジア4次予選のウズベキスタン対バーレーン戦。このホーム&アウェイの勝者が北中米カリブ海4位との大陸間プレーオフに進出することになっていた。

 ゲームはウズベキスタンが先制し、さらに39分にPKを獲得する。ウズベキスタンのキッカーが蹴ったボールはGKが弾いたものの、ゴールに吸い込まれていった。しかし、蹴る前にウズベキスタンの選手がペナルティエリアに侵入したため、吉田はPKのやり直しを命じた――。

 ここで、事件が起きた。

 バーレーンの選手たちが吉田を取り囲み、激しい抗議を始めたのだ。
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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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