連載:ヤクルトが強くなったワケ

20歳の長岡秀樹、UZRは名手・源田に匹敵 セイバーメトリクスが浮き彫りにする守備の進化

小西亮(Full-Count)
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強力打線のイメージが強いヤクルトだが、セイバーメトリクスの視点から守備の強さも浮き彫りとなった 【写真は共同】

 12球団ダントツの本塁打数と総得点。セ・リーグ連覇へとひた走るヤクルトには、“狭い本拠地”の神宮球場で打ちまくって勝ってきたイメージも強い。衝撃的なシーズンを送る若き主砲の村上宗隆内野手を筆頭に、リードオフマンの塩見泰隆外野手やキャプテンの山田哲人内野手ら打線は確かに強烈な破壊力を誇る。
 その一方で守備にスポットライトが当たる機会は決して多くないが、今季の強さを語る上で欠かせないひとつの要因でもある。6年ぶりにリーグを制覇した昨季とも違った姿が、データで明らかに。攻撃編に続き、今回は「守備編」。セイバーメトリクスの観点からプロ野球のデータを分析する「DELTA(デルタ)」のアナリスト・大南淳氏の協力を得て検証した。(数値は8月31日時点)

遊撃手・長岡秀樹の圧倒的な貢献度

UZRでは、高卒3年目の長岡秀樹が名手・源田壮亮と遜色ない数字を残している 【写真は共同】

 チーム457失点はリーグ4位、56失策は同3位。よく目にする端的な数字には、特筆すべき点はない。だが、セイバーメトリクスの指標に落とし込むと、一気に景色が変わる。用いたのは、守備全般の貢献を表す「UZR(ultimate zone rating)」。打球の種類や位置などを細分化し、野手のプレーによってもたらされた影響を計測。同じ守備位置の平均的な選手に比べ、どれだけ失点を防いだかを得点化した総合指標だ。

【データ提供:株式会社DELTA、図表作成:スリーライト】

 12球団別ではソフトバンクと西武が40点台前後と頭ひとつ抜けた数値ではあるが、セ・リーグで見るとヤクルトはトップの「15.6」。チーム全体で16失点近くを防いでいる計算になる。セ・リーグ次点の中日が「1.2」、3位の広島でさえ「-11.1」なのを考えると、リーグでは圧倒的な数値と言える。昨季の「-22.7」から考えると、飛躍的な改善を果たしている。

 大南氏は「センターラインの数値が目立っていることが大きい」と指摘。野球のセオリーである守備の屋台骨、「8.8」の中堅と、「3.3」の捕手はいずれも阪神に次いでリーグ2位。「13.9」の遊撃も西武に次ぐ抜群の数値で、「2.2」の二塁もリーグ3位ながら悪くない。守りのキーマンとなる選手たちが、期待通りかそれ以上の貢献を果たしていることが分かる。

 中でも見逃せないのが遊撃。高卒3年目を迎えた長岡秀樹内野手の躍進が目覚ましい。10を超えれば一流とされる中で、選手別のUZRは「12.0」。4年連続でゴールデングラブ賞を獲得している西武の名手・源田壮亮内野手の「13.9」には現時点で及んでいないが、時期によっては上回る数値をたたき出していたことも。内外野で最も負担の大きなポジションで、20歳の存在感が際立っている。

 2年目の昨季は1軍でわずか5試合の出場で、2軍では82試合で打率.261、7本塁打、21打点。大南氏も「昨年ファームでもそこまで伸びた成績を残していなかったので…」と驚きを隠さない。セ・リーグの遊撃では今季、3年連続ゴールデングラブ賞の巨人・坂本勇人内野手が度重なる離脱で万全とは言えない状況。記者投票とはいえ、データ上では初の戴冠も見えてくる。
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著者プロフィール

1984年、福岡県出身。法大卒業後、中日新聞・中日スポーツでは、主に中日ドラゴンズやアマチュア野球などを担当。その後、LINE NEWSで編集者を務め、独自記事も制作。現在はFull-Count編集部に所属。同メディアはMLBやNPBから侍ジャパン、アマ野球、少年野球、女子野球まで幅広く野球の魅力を伝える野球専門のニュース&コラムサイト

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