U-18侍ジャパンが世界で戦うために必要なこと 過去には「海外の洗礼」も…対応力に注目

沢井史

代表にとって大切なのは「協調性」

西日本の選手が多く選出された今回のメンバー。どのようなチーム作りが進んでいくか 【写真は共同】

 8月31日に千葉マリンスタジアムで行われた高校日本代表と大学日本代表との壮行試合。コロナ禍で2年間開催できず、3年ぶりの開催となり、スタンドには侍JAPANのユニホームに身を包んだファンや野球少年など多くの観客が詰めかけた。
 3年前の高校日本代表では20人のうち6人がドラフト1位指名を受ける(うち4人が投手)などハイレベルな布陣だったが、今年はどちらかと言うと戦力的にも全体的に小粒だという声も聞かれる。今夏の甲子園でさらに評価を上げた浅野翔吾(高松商)など、スターと目される選手はいるが、例年のような常にテレビカメラが追い続けるような選手がいる“異様な熱気”とまではいかなかった。それでも、全国から厳選され、日本を代表する選手として異国でプレーすることは同じだ。

 28日に代表メンバーが召集され、この日は合宿4日目だった。初めてチームの雰囲気を目の当たりにしたが、思った以上に選手間での笑顔や、会話が多かったように思う。代表チームとはいえ、連合チーム。悲願の頂点を狙うには、短期決戦でいかにチームがまとまっていくかが重要性を占める。

 11年から8度、筆者はU-18日本代表を現地の大会まで追って取材をさせてもらったが、毎年チーム作りについて取材をするたびに「チームワーク」「コミュニケーション」といったキーワードが行き交っていた。全国から特色の違った選手が集まり、個性の強い選手もいる。「世界一に向けてみんなで頑張ろう!」と一言で言っても、全員が同じ方向を向くわけではない。「世界一にはなりたいけれど……自分はこうしたい」とか「そういうのは自分のプレースタイルじゃない」とか、そっぽを向く選手もいるからだ。そういった選手が、いかにチームの中に溶け込み、協調性を持ってやっていけるのかもポイントとなる。

 今年のチームは大阪桐蔭から4人、九州国際大付から3人、という人数でも見るように、関西圏や九州といった西日本の選手が多い。東日本からは聖光学院から2人、仙台育英、市船橋、山梨学院から各1人と例年に比べると比較的少なめだ。以前、関西圏の選手の選出がかなり多かった年に、関西のパワーに圧倒されていた選手がいる中、そのノリに徐々に溶け込み、全員が引き込まれてチームが明るくなったこともあった。

主将の山田が、プレーでも背中でもチームを引っ張る

甲子園でも大きなインパクトを残した山田が、今回の主将を務める 【写真は共同】

 チームのキャプテンを務めるのは山田陽翔(近江)だ。山田は高校野球ファンなら誰もが知る“大黒柱タイプ”の主将だ。プレーでも背中でもグイグイ引っ張り、きちんと自分の意見を周囲の大人に伝え、反映もできる。結団式の会見では「とにかくしっかりコミュニケーションを取りたい」と話していたように、マメに仲間に言葉を掛けながら交流を深めているように見えた。

 チーム内ではかねてから交流のあった松尾汐恩(大阪桐蔭)、浅野、渡部海(智弁和歌山)らとともに行動を一緒にすることが多いが、近江高校でも、周りを見ながら行動に移し、発言もできるキャプテンだった。山田は一目置かれる存在かもしれないが、それぞれが世界一になるためには何が必要なのかを考え、個々の技術を高める中でも気持ちも束ねられるか。慣れない異国の地での試合を重ねるうちに、自然と絆が深まっていくことも多い。

1/2ページ

著者プロフィール

大阪市在住。『報知高校野球』をはじめ『ホームラン』『ベースボールマガジン』などに寄稿。西日本、北信越を中心に取材活動を続けている。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント