U-18侍ジャパンが世界で戦うために必要なこと 過去には「海外の洗礼」も…対応力に注目

沢井史

大学生には敗れるも、散見した課題を次に生かせるか

試合には敗れたが、4番に入った内海は大学生を相手に同点ホームランを叩き込んだ 【写真は共同】

 大学日本代表との試合は1-4で敗れ、馬淵史郎監督は「大きな力の差があった」と試合後にコメントしていた。中盤までは1-1と、スコア上ではほぼ互角の勝負はできたが、6回に1点、7回に2点を奪われ、高校日本代表はわずか4安打に終わった。もちろん、木製バットの対応力や大学生の今秋ドラフト上位候補のハイレベルな投手陣の球を見て、“見送りがち”だったシーンも散見されたが、この日に明るみになった課題を持ち帰って、これからの練習でどう生かすか。4番の内海優太(広陵)が広い千葉マリンスタジアムで放った一発は本番に向け自信になるが、この日は無安打に終わった1番・浅野が打線を活気づけていけるかも見ものだ。

 投手陣は、この日先発した香西一希(九州国際大付)が3回を1安打1失点と好投。120キロ台の球で大学生の強打者のタイミングをうまく外し、三振も3個奪った。4回から登板した2番手の宮原明弥(海星)も4回はテンポ良くアウトを重ねたが、5回は連続四死球を与えピンチを招いた。だが、3番の山田健太(立大)から空振り三振を奪い無失点で切り抜けた。この日は3失点したが、最速143キロのストレートとスライダーのコンビネーションで勝負できる森本哲星(市船橋)や香西、この日からチームに合流した古川翼(仙台育英)ら左腕の働きに注目したい。それに加えて、壮行試合では8回に登板し、1回を3奪三振で締めた山田が抑え役としてどんな投球を見せるのかも注目だ。

“海外の洗礼”に対する対応も注目

 アメリカの球場は土が粘土質のところが多く、日本の球場に比べると土が硬めだ。芝生部分も日本とは芝の長さが違うことが多く、ゴロのバウンドもこれまでとは異なり、守備でも違和感を覚えることもあるだろう。マウンドもとても固く、以前代表になったある投手は「海外のマウンドはすごく投げにくかった」と話していたこともあった。

 日本の球場、設備は「世界一」とされるほど充実しており、日本では今まで恵まれた環境の中で野球をやって来られたんだと、この大会で感じるかもしれない。12年のU18ソウル大会では試合中にマウンドのプレートが剥がれたり、同じく12年大会で起きたアメリカの選手によるラフプレーでルールが変更になったり、17年のU18カナダ大会ではスタンドから英語で大きなヤジを飛ばす者がいて、試合進行の妨げになったこともあった(その後強制退去を命じられた)。そういった“海外の洗礼”に遭うこともあるが、芯の強い山田キャプテンを中心に、日本の野球を世界の舞台でも見せつけて、悲願を達成してもらいたい。

野球の将来を担う子どもたちが一人でも増えたら

この日はトップチームを率いる栗山英樹監督(左)が激励に訪れた。大舞台で活躍する姿を次の世代に見せられるか 【写真は共同】

 そしてこの日、胸を打った光景がある。

 スタンドにいる侍JAPANのユニホームを着た子供たちは、日の丸のユニホームに袖を通した大学生と高校生が繰り広げるプレーに大きな歓声を挙げていた。ある野球少年は、試合前の選手たちのハイレベルなノックを食い入るように見つめ、8回裏に山田が登板すると、名前がコールされた瞬間に「山田くんだ!」と大喜びしていた少年もいた。

 こういった少年、少女たちが「自分も高校生になったら、大学生になったら、こういう舞台に立てるような選手になりたい」と夢を膨らませる。大観声の中で、日本代表としてプレーすることがどれだけ誇らしいことなのか―。そういう空気感を感じ、将来ここに立つことを目標にして、野球を楽しもうとする子供たちが1人でも増えてくれたらと思う。

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著者プロフィール

大阪市在住。『報知高校野球』をはじめ『ホームラン』『ベースボールマガジン』などに寄稿。西日本、北信越を中心に取材活動を続けている。

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