投手部門は山田陽翔(近江)が春夏連続でトップを獲得【写真は共同】
投手では選抜でもこの企画でトップだった山田陽翔(近江)が春夏連続でトップを獲得。得票率は選抜の27.66%から約20%アップしており、2位以下にも大差をつける結果となったが、この夏の活躍を見ればそれも納得だ。春は故障明けで、さらに京都国際の出場辞退による急遽の出場ということもあったが、この夏は地方大会でも調整が上手く進んだこともあってかストレート、変化球ともに明らかにレベルアップした印象を受ける。特にカットボール、ツーシーム、スプリットの速い変化球は高校生ではなかなか見ないレベルのボールである。名実ともに2022年の甲子園を代表する投手と言えるだろう。
次いで得票率が多かったのが2年生の前田悠伍(大阪桐蔭)だ。準々決勝の下関国際戦では悔しい逆転負けを喫したものの、ストレートは選抜を上回る最速146キロをマーク。ただその一方で高めに浮くボールも目立っただけに、秋以降は出力を上げながら精度をどこまで高められるかが重要になりそうだ。
捕手も春夏連続で松尾汐恩(大阪桐蔭)が選出された。こちらも春の49.24%から大きく得票率を伸ばしており、圧倒的な数字となっている。2回戦の聖望学園戦での2本のホームランも素晴らしかったが、打撃面ではしっかりボールを見極めて4試合で6四球を選び、出塁率.667という数字が光った。さらに春からの成長を見せたのが守備だ。スローイングは速さと正確性を兼ね備え、二塁送球タイムはプロでも上位に入る。キャッチングやブロッキングも大きく成長し、春まで見られた守備の不安定さはかなり解消された印象を受ける。
2位以下は混戦となったが、山浅龍之介(聖光学院)は攻守とも高レベルでプロ志望なら十分指名を狙える選手と言えるだろう。
一塁手部門は1回戦で2本の長打を放った村上慶太(九州学院)が選出された【写真は共同】
内野手もファースト、セカンド、サードの3ポジションは1位が2位以下を大きく引き離す結果となった。ファーストの村上慶太(九州学院)は3試合で3安打、打率.250と成績は目立たないが、やはり村上宗隆(ヤクルト)の弟という期待値の高さから票を大きく伸ばした。まだまだ課題は多いが、1回戦で2本の長打を放っており、3試合で三振は1個だけとバットに当てるうまさはあるだけに、今後が楽しみな素材である。
セカンドの星子天真(大阪桐蔭)も春に続く選出。プレーというよりも、チームリーダーとしてのキャプテンシーに対して評価する声が多い。準々決勝で敗れた後に、選手を鼓舞していた姿は立派だった。
サードの伊藤も春夏連続の選出。春は2位と僅差だったが、この夏は50%を超える圧倒的なトップとなった。今大会は4試合で9安打を放ったが、そのうち6本が長打で積極的な走塁と安定したサードの守備も光った。チームに勢いをつける意味では最高の1番打者と言えるだろう。
混戦となったショートは2年生の緒方蓮(横浜)が赤堀颯(聖光学院)と伊藤基佑(愛工大名電)をわずかに上回った。昨年夏の逆転サヨナラスリーランのインパクトは大きいが、今大会も2試合連続でヒットを放ち、出塁率は5割をマークするなどトップバッターとして十分な役割を果たしている。軽快な守備に対する評価も高く、秋以降も注目を集めることは間違いないだろう。
外野手部門は今大会3本塁打を放った浅野翔吾(高松商)がトップ選出【写真は共同】
外野手は大方の予想通り、3本塁打を放った浅野翔吾(高松商)がトップで海老根優大(大阪桐蔭)、石川ケニー(明秀日立)が続く結果となった。浅野は3本のホームランが右中間、レフト、そしてセンターバックスクリーンと見事に打ち分けており、上背のなさを懸念する声を完全に吹き飛ばした印象だ。外野手は3人を選べるということもあるが、それでも全ポジションの中でトップの得票率だったことも納得である。海老根も初戦で見事な一発を放ち、センターの守備でも強肩を披露。石川は投手としても度々登板した姿が強く印象に残った。
投手では山田、野手では浅野と準々決勝で直接対決した2人の得票率が高く、今大会の投打の顔と言えるだろう。また春夏連覇は逃したものの、大阪桐蔭から4人が選出と改めて個々の能力の高さを感じさせた。果たして来年はどんな選手が甲子園を湧かせてくれるのだろうか。今から興味は尽きない。
(解説:西尾典文)