川崎F・谷口彰悟が語る災害の恐ろしさ「自分たちが得た教訓を後世に残したい」

吉田誠一

子どもたちを笑顔にするのが僕たちの役目

長年にわたり、東日本大震災の被災地・陸前高田市をサポートする川崎F。2014年の加入直後から支援活動に参加する谷口は、「近年は一方通行ではない交流も進んでいる」と話す 【写真は共同】

――新型コロナウイルスの感染が拡大した過去2年を除き、フロンターレは毎年、陸前高田市で子どもたちとのサッカー交流、学校訪問などを続けています。どのような思いで活動をしていますか。

 保護者の方々から、子どもたちが震災後、笑わなくなったのが悲しいと聞きました。僕たちと交流している間はすべてを忘れ、笑顔になってもらいたい。次の日から笑顔で学校に行き、友だちと遊んでもらいたい。そう思って交流しています。それが僕たちの役割です。近年は一方通行ではない交流にしようと、フロンターレのホームゲームで陸前高田の特産物を販売し、フロンターレのファン・サポーターに陸前高田の良さを知ってもらうイベントも重ねています。

――陸前高田の人たちは、防災についてどのような話をしていますか。

 自分たちが得た教訓を後世に残さなければいけない、震災の記憶を風化させてはいけないという話をよくされますが、その通りだと思います。教訓を後世につなげていかなければなりません。

――サッカーも試合前の準備が重要で、試合中であっても一瞬一瞬の準備が欠かせないのではないですか。

 サッカーに限らず、何事も準備が大事だと思っています。サッカーでは、しっかり準備したかどうかで結果が変わります。僕はDFなので、なおさらそう感じるのかもしれません。

 次の対戦相手に関する情報に基づいて準備をし、トレーニングをします。試合中のひとつひとつのプレーにおける判断、決断には事前の準備が必要です。先のプレーに対する予測と準備を怠ると、やられてしまいます。あらゆることを想定し、何手も先を読み、こうなったらこうだと備えて、正しいポジショニングをする。90分間、その連続です。集中して、根気よく備え続けることができるかどうかで勝負は決まります。

――備えを怠ると、痛い目に遭う。そういうことが実際によくあるのですか。

 たくさんあります。準備をサボったから、そこにボールが来てしまってやられることが何度もあります。ここには来ないだろう、ここには来てほしくないと思ったところにボールは来るものなんです。そこでサボらず、正しいポジションを取っていればピンチにならずに済むんですが。

準備がものをいった横浜FM戦の劇的勝利

準備が大切なのは防災もサッカーも同じだ。劇的な勝利を収めた8月7日の横浜FM戦では、事前の準備の成果が結果になって表れた 【(c)Y.F.M.】

――ここには来ないだろうと思ってはいけない、常に準備を怠ってはいけないというのは防災と同じですね。

 そうですね。準備をしているのに何も起こらないというのが普通です。だから防災意識を保つのは難しい。つい意識が薄れてしまいます。でも、準備を続けるしかないんです。何も起こらなくても、準備をしておいて損はありません。

――サッカーの話に戻りますが、当然、準備をしたからうまくいったこともたくさんあるわけですよね。

 それもたくさんあります。ここに来るだろうなと思った通りに相手が来る。準備によってピンチは未然に防げます。対戦相手は毎試合変わり、相手選手の特徴もそれぞれ違います。駆け引きを制するには、情報をしっかり頭に入れておくことが重要です。

――アディショナルタイムの決勝ゴールで劇的な勝利を収めた8月7日の横浜F・マリノス戦(第24節/2-1)で、準備がモノをいったプレーはありましたか。

 レアンドロ・ダミアンの先制点は準備の成果だと思います。あれは僕が対角に蹴った山根(視来)へのロングパスが起点です。事前のスカウティングで、F・マリノスはハイラインでボールサイドをコンパクトにしてくる、だから遠いサイドにピンポイントでパスを届ければチャンスになる、という話がありました。あのパスはそのスカウティングをもとにしたもので、準備が得点につながったわけです。

――事前の情報が大切ということですが、ソナエルJapan杯のヤフー防災模試は、災害時に生かせる知識、情報に関するテストです。

 良い企画だと思います。これを受けることで、自分の防災の知識、情報が十分かどうか分かります。知っているつもりでいたけれど、実際にテストを受けてみたら全然ダメだったということもあるでしょう。みんなで受けた方がいいと思います。もちろん僕もトライします。

(企画・編集/YOJI-GEN)
谷口彰悟(たにぐち・しょうご)
1991年7月15日生まれ。熊本県出身。大津高から筑波大に進学し、大学在学中の特別指定を経て、2014年に川崎フロンターレに正式加入した。主にCBとしてプロ1年目から出場機会を得ると、17年シーズンのJ1初優勝など数々のタイトル獲得に貢献。連続出場155試合は、フィールドプレーヤーとしてJ1歴代2位の記録だ。15年6月のイラク戦で日本代表デビュー。その後、代表とはなかなかな縁がなかったが、今年初めのカタールW杯アジア最終予選の2試合(中国戦、サウジアラビア戦)で、負傷欠場した吉田麻也、冨安健洋の穴を埋める活躍でチームを勝利へ導き、一気に評価を高めた。

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