SHO-TIME 大谷翔平 メジャー120年の歴史を変えた男

エンゼルス前監督マドンの言葉「大谷翔平の本質はあの日の午後に集約されている」

ジェフ・フレッチャー

【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 2021年シーズン最終盤、われわれはオークランド・アスレチックスと対戦していたが、ショウヘイが登板したのは、うだるような暑い午後だった。

 私はアスレチックスの一塁手、強打者のマット・オルソンを歩かせるよう捕手にサインを出した。ショウヘイはこの指令を受けたが、私に笑顔を見せつつ指を前後に振った。

 つまり、敬遠なんてしたくないのだ。そんな必要はないのだと訴えているのだった。私はこの意図を受け入れ、笑顔を返した。
 試合終盤になり、再びオルソンが打席に立ち、カウントが2ボールノーストライクになった。

 再び私は敬遠を命じたが、ショウヘイはまたも同じ反応を見せた。
 
 あいつはオルソンとの対戦で、どうしたいのかが明確だった。絶対に打ち取れると確信していたのだ。周囲の雑音など求めていなかった。

 オルソンの対大谷の数字は、まあ、ひどいものだった。ショウヘイに対して手こずっていたし、ショウヘイもそれをよくわかっていた。

 私は笑いながら、指を振り返した。私は監督として、ショウヘイの意図を却下したが、それでもショウヘイの自信は大したものだと感心した。

 当然のことだが、ショウヘイは今までに誰も見たことのない孤高の存在だ。

 あいつの日々の戦績は、あまりにも突出している。だが、あいつの本質はあの日の午後に集約されていると私は思う。

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