エンゼルス前監督マドンの言葉「大谷翔平の本質はあの日の午後に集約されている」
【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】
負けたくない思いは誰よりも強い。同時に、謙虚で、礼儀正しく、優しい男だ。ある意味で古風な気質を備えているともいえよう。
対戦投手のことについて、打撃コーチに助言をあおぐこともある。投手として対戦打者への配球をどうするか、スカウティングレポートに耳を傾けることもある。
しかし、いざ球場の中に入ると、この男は腕を思い切り振って大胆な絵を描いて見せるのだ。
何をしたいのか、何をすべきかを自分でもよく理解している。だから、毎回の状況に対しても独自に対処できる。周囲は何も言う必要はないのだ。ほかのどんな選手よりも優れているから。そして、試合の中で対戦相手を負かすには何が必要なのかを見極め、実践することができるということだ。
私のエンゼルスでの監督1年目は、2020年になるわけだが、全世界を新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が襲った1年でもあった。そしてまだ、ショウヘイのことはよく知らなかった。
私はただ目と耳を大きく開き、口を閉じて周囲の全員の反応を追っていただけだ。
だが、2021年に入り、私はショウヘイに対してどのような制限をかけるか、新任のペリー・ミナシアンGM(ゼネラルマネージャー)と協議する必要性を痛感した。
その結果、われわれはショウヘイに一切の制限をかけないと決めた。あいつを無理に縛ろうとしなかった点において、ペリーは高く評価されるべきだと私は思う。
休養を取り払ったことが、ショウヘイの大躍進につながった。あのような大成功が実現したのは、誰も横槍を入れて邪魔しなかったからだ。