連載:高校野球で生き続ける野村克也の教え

野村シダックスを愛する中央学院・相馬監督 2年で“戦力外”も東大卒業に匹敵する価値

加藤弘士(スポーツ報知)
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【写真:加藤弘士】

「財を遺すは下、仕事を遺すは中、人を遺すを上とす」――。生前の野村克也が口癖のように話していた言葉だ。シダックス時代に薫陶を受けた“遺伝子”はアマチュア球界の各所に根を張り、若き野球人にその教えを伝えている。『砂まみれの名将―野村克也の1140日―』の著者・加藤弘士氏が、同書にも登場した高校球界で活躍する野村克也の教え子に取材。今回は2018年には春夏連続で甲子園出場を果たした中央学院・相馬幸樹監督を取り上げる。

 あるメロディーを聴いた時、その音と一緒に過ごしていた季節の記憶を呼び起こされることが、たまにある。

 あの日もそうだった。

 2018年3月25日、甲子園球場で行われたセンバツ高校野球大会。

 千葉の初出場校・中央学院と四国の雄・明徳義塾とのマッチアップ。NHKの甲子園中継から流れる、中央学院の吹奏楽部が奏でる音楽に私は耳を奪われ、心を躍らせた。

「シダックスファイヤー」だ。懐かしいな――。

 その勇猛な旋律は瞬間的に15年前の東京ドームへといざなってくれた。

 03年の都市対抗野球大会、野村シダックス1年目の情景だ。エース・野間口の力投やキンデラン、パチェコの豪快な打棒。野村はメガホンを片手にベンチから大声で指示を送っていた。

 決勝では三菱ふそう川崎に逆転負けを喫したが、快進撃をスタンドから後押ししたのが、チームのオリジナル応援曲「シダックスファイヤー」だった。

 ツイッターをチェックする。甲子園期間中は好事家たちが出場校のブラバン応援について感想や批評をぶつけ合うのだが、高校野球の聖地で初めて奏でられるこの曲には「魔曲すぎる」「めちゃくちゃかっこいい」といった声が散見された。

 中央学院野球部監督の相馬幸樹がシダックスの一員であったことを誇りとし、強いこだわりを持ってその後の野球人生を歩んでいることがうかがえた。

 野村からの教えを現在の高校球児にどう伝えているのだろうか。

 相馬に会いに行った。
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著者プロフィール

1974年4月7日、茨城県水戸市生まれ。水戸一高、慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、1997年に報知新聞社入社。2003年からアマチュア野球担当としてシダックス監督時代の野村克也氏を取材。2009年にはプロ野球楽天担当として再度、野村氏を取材。その後、アマチュア野球キャップ、巨人、西武などの担当記者、野球デスクを経て、2022年3月現在はスポーツ報知デジタル編集デスク。スポーツ報知公式YouTube「報知プロ野球チャンネル」のメインMCも務める。

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