連載:高校野球で生き続ける野村克也の教え

「言葉」を大切にする昌平・黒坂監督 野村克也との出会いはまさかの謝罪から

加藤弘士(スポーツ報知)
アプリ限定

【写真:加藤弘士】

「財を遺すは下、仕事を遺すは中、人を遺すを上とす」――。生前の野村克也が口癖のように話していた言葉だ。シダックス時代に薫陶を受けた“遺伝子”はアマチュア球界の各所に根を張り、若き野球人にその教えを伝えている。『砂まみれの名将―野村克也の1140日―』の著者・加藤弘士氏が、同書にも登場した高校球界で活躍する野村克也の教え子に取材。今回は埼玉の高校球界で新風を吹かせている昌平・黒坂洋介監督を取り上げる。
「第1巡選択希望選手 東北楽天 吉野創士 外野手 昌平高校」

 その瞬間、会見場にナインの歓声が響き渡った。ドラフト1位。新天地は杜の都だ。誰もが拳を突き上げ、仲間の新たな出発を祝った。

 拍手が鳴り止まない中、監督の黒坂洋介は隣に座った吉野と固く握手を交わした。愛弟子は泣いていた。黒坂も感極まった。良かったな。おめでとう。入学から今までの鍛錬の日々に思いを致すと、熱い滴が頬を伝うのが分かった。報道各社のフラッシュが絶え間なく光り、師弟の熱い絆を照らした。

 2021年10月11日、プロ野球ドラフト会議。埼玉県杉戸町にある昌平に、同校初のプロ野球選手が誕生した。

 吉野は通算56本塁打を誇る高校球界屈指のスラッガーだ。身長185センチで肩も強く、将来的には中軸を担える逸材としてプロのスカウト陣からも高評価を得ていた。

 でも、まさかドラフト1位で指名をされるとは――。

 黒坂はシダックス時代の恩師・野村の言葉を思い返していた。
  • 前へ
  • 1
  • 2
  • 次へ

1/2ページ

著者プロフィール

1974年4月7日、茨城県水戸市生まれ。水戸一高、慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、1997年に報知新聞社入社。2003年からアマチュア野球担当としてシダックス監督時代の野村克也氏を取材。2009年にはプロ野球楽天担当として再度、野村氏を取材。その後、アマチュア野球キャップ、巨人、西武などの担当記者、野球デスクを経て、2022年3月現在はスポーツ報知デジタル編集デスク。スポーツ報知公式YouTube「報知プロ野球チャンネル」のメインMCも務める。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント