「言葉」を大切にする昌平・黒坂監督 野村克也との出会いはまさかの謝罪から
【写真:加藤弘士】
その瞬間、会見場にナインの歓声が響き渡った。ドラフト1位。新天地は杜の都だ。誰もが拳を突き上げ、仲間の新たな出発を祝った。
拍手が鳴り止まない中、監督の黒坂洋介は隣に座った吉野と固く握手を交わした。愛弟子は泣いていた。黒坂も感極まった。良かったな。おめでとう。入学から今までの鍛錬の日々に思いを致すと、熱い滴が頬を伝うのが分かった。報道各社のフラッシュが絶え間なく光り、師弟の熱い絆を照らした。
2021年10月11日、プロ野球ドラフト会議。埼玉県杉戸町にある昌平に、同校初のプロ野球選手が誕生した。
吉野は通算56本塁打を誇る高校球界屈指のスラッガーだ。身長185センチで肩も強く、将来的には中軸を担える逸材としてプロのスカウト陣からも高評価を得ていた。
でも、まさかドラフト1位で指名をされるとは――。
黒坂はシダックス時代の恩師・野村の言葉を思い返していた。
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