ティモンディ前田が語る済美・野球部時代「高岸と新発売のグミを見るだけで幸せだった」
夏に期待したいのは履正社と浦和学院
高校野球って、冬を越して、春の経験が大きな差になったりもするんです。その点で、僕は大阪府大会の履正社に期待したいですね。今の大阪桐蔭は、根尾(昂/現中日)世代よりもポテンシャルがあるような気がして、海老根(優大)選手とか、ちょっと段違いだなとも思うんですが、たとえば中田翔(現巨人)さんの代も、最後の夏は金光大阪に府大会決勝で負けてますからね。
聞くところによると、質の履正社、量の大阪桐蔭みたいに言われて、履正社はそんなに練習を長くやらないみたいなんですけど、その強度がすごいらしいんです。春の府大会決勝は大阪桐蔭に惜敗(2-3)しましたが、今、めちゃくちゃ肩を温めてると思いますよ。
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今は監督の世代交代がいろんな学校で進んでいて、浦和学院も森士(おさむ)さんから息子の大(だい)さんにバトンタッチしましたね。それまでの良い伝統は残しつつ、アプローチの仕方を少し変えているようですが、僕は正直、みなさんが大阪桐蔭を大本命に推す中で、この夏は浦和学院にやってほしいなって気持ちがあります。まずは県大会を勝ち抜かなくてはなりませんが、宮城くんの最後の夏を甲子園で見たいですね。
──自分を重ね合わせながら?
そうですね(笑)。浦和学院のすごいところって、エラーの少なさとか、送球の正確さとか、細かいプレーの質の高さにあるんです。それを練習量で仕上げてくる。センバツは悔しい負け方(準決勝で近江に延長11回サヨナラ負け)もしていますし、それも込みで、楽しみにしたいチームですね。
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愛媛は今、すごく面白いんですよ! この春から新体制になった済美の監督は、1期生で04年センバツ優勝メンバーの田坂(僚馬)さんで、まさに上甲イズムを受け継いだ方なんですが、去年のセンバツに初出場した聖カタリナ学園の越智(良平)監督も、宇和島東時代に選手として甲子園に出場した上甲監督の教え子。それに、ずっと今治西で監督をやられていた大野(康哉)さんが、ライバルの松山商の監督になったりもしてますしね。高校野球って監督で本当に変わりますから、目が離せないですよね。
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中学時代はホームラン0本の鵜久森が
前任の中矢(太)監督は、松井秀喜さんの5打席連続敬遠で話題になった当時の明徳義塾の選手で、だから馬淵(史郎/明徳義塾監督)イズムもちょっと入っていたんですけど、今はもう「ザ・上甲野球」って感じじゃないですか。
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済美は毎年、叩き上げですからね。強豪校でベンチに入れるかどうかくらいの選手を、鍛えて鍛えて、全国で通用するレベルにまで持っていく。あの鵜久森さんも、中学時代はホームランを打ったことがなかったらしいんです。それが高校通算47本塁打ですからね。鉄の棒を1万回振るとか、10トンメニューをこなして、そこまでになったんです。
──10トンメニュー?
1日の間に、普通の練習もしながら、トータルで10トンの重さを上げるんです(笑)。ダンベル100キロを100回でも、10キロを1000回でも、なんでもいいので。そういう練習を鵜久森さんは自分なりに落とし込んでやってきたから、最終的には済美の練習グラウンドに「鵜久森ネット」が作られるまでになったんです。通常のネットは軽々と超えてしまうから、近隣の方に迷惑をかけないようにって。中学時代、ホームラン0本の選手が、ですよ。鵜久森さん自身は、その三角ネットも越えてたらしいんですが、練習量ってやっぱり大事なんだなって思わせられるエピソードですよね。
──前田さんは「鵜久森ネット」を越えたんですか?
僕は左打者だったので、「あのネットに当たってなければ場外だったねー」って打球は打ったことがありますけど、越えられはしなかったんです。でも、右打者の高岸は1回だけ越えたことがあって。越えた越えないで張り合ってた時期もありましたね(笑)。
──この夏の話題に戻りますけど、花巻東の佐々木麟太郎選手をどう見ていますか?
うらやましいかぎりのポテンシャルの持ち主ですけど、1年生の頃から周りにはやし立てられて、やりにくさはあるだろうなって思います。元プロ野球選手の方に話を聞くと、口をそろえて「野球はメンタルスポーツだ」っておっしゃる。練習ではなく、大事な試合の大事な場面でコンスタントに打たなきゃならないのがプロの世界。高校生にそのメンタルを持ち合わせろっていうのも酷な話ですけど、変な負荷だけはかからないようにしてあげてほしいですね。
同じ花巻東出身の大谷翔平選手(現エンゼルス)がそうだったように、佐々木選手もすでにプロを見据えた思考を持ってるだろうし、持っていないとダメだろうなとは思います。こういう言い方すると失礼かもしれないですけど、彼の場合、甲子園に行くよりも、もっと目指すべき大切なものがある選手なのかなって。
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それ、めちゃくちゃいいですね。甲子園というコンテンツに興味を持つ方って、マニアもいれば、ライト層もたくさんいると思うんです。そのライト層が甲子園が終わってライトのまま離れちゃうのはもったいない。興味を持った時に、より深みにはまれる情報がこうして1つにまとまっていると、すごくいいなって。ただ甲子園好きがさらに増えて、今以上にチケットが取れなくなるのは困りますけどね(笑)。
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ネタはまだまだありますよ(笑)。明徳義塾で言うと、練習が嫌で夜に脱走しても、寮が人里離れた場所にあるから、山を2つ越える前に車で追いかけてきた監督に速攻で捕まるらしいです。これ、明徳あるあるです(笑)。
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僕は当時から高岸と一緒に行動することが多かったんですね。夜10時過ぎに練習が終わって、そこから自転車で1時間とか1時間半ぐらいかけて寮に帰るんですけど、2人して急いでペダルを漕いで、その時間を10分くらい短縮するんです。それでできた時間を使って、遅くまで開いている薬局で新発売のグミとかをただただ見る。
──見るだけ?
はい。買い食いしてるのを誰かに見られて、それが上甲監督の耳に入ったら、もうおしまいなので。だから、せめて見るだけ。「メロン味の固いグミがあるんだね、美味しそうだね」って2人で話して、また自転車に乗って帰る。それだけで、当時は幸せだって思えましたからね(笑)。
(企画・編集/YOJI-GEN)
プロフィール
1992年8月25日生まれ、神奈川県出身。中学時代は硬式野球チームの「座間ボーイズ」でエースを務めた。野球の強豪校である愛媛県の済美高に進学。高校時代は控え投手兼外野手だった。卒業後は野球を断念。駒澤大法学部、明治大法科大学院へと進み、弁護士を目指した。15年に済美高・野球部の同期だった高岸宏行に誘われ、お笑いコンビ・ティモンディを結成し、大学院を中退。現在はバラエティ番組やYouTubeの『ティモンディチャンネル』を中心に、サッカー観戦やファッションなど幅広い趣味も生かしながら、多方面で活躍中だ。