琉球の名物実況アナが教えてくれた あのフレーズが生まれたわけ
あったゆういちさんが生んだ数々の名フレーズは琉球アリーナでの試合だからこそ 【©B.LEAGUE】
「実は私、アナウンサー経験がないんです」
これは、2011年に公開された阿部寛さん主演映画「天国からのエール」で医者を演じた私が、阿部寛さんと妻役の美村里江さんに向かって言った台詞(せりふ)。
衝撃的な台詞(せりふ)ゆえにこの言葉を受け取る人のことを思い、医者として人として寄り添うような気持ちを持ってその言葉を口にしたことを覚えています。
そんな私が近年口にする言葉は、「ココナッツスリー」を代表格に、「ゴール下のアベンジャーズ」「どうにも止まらない山本リンダ状態」など初めて耳にした人にはなんのことだかさっぱりわからないような言葉を口にしています。
それもバスケの試合で、実況のあったゆういちとして。
局アナ経験もない、フリーアナウンサーでもない、役者の顔を持つ私がバスケの実況をするようになったのは2018-19シーズンから。前任のドン・パーディさんからバトンを渡される形になりました。
視聴者の感情と近い言葉を織り交ぜながら解説する屋嘉謙吾さんに、小気味よく合いの手を入れるドンさんの実況は、当時居酒屋実況と揶揄(やゆ)されることもありましたが、人気もありました。2人の掛け合いで見るバスケ中継は共感することが多く、私は大好きでした。
さて、そんな偉大な先輩から実況マイクを引き継いだ私に与えられたタスクは「ホーム・アウェー共に公平な実況」。
そのタスクを達成するために取り組んでいることは大きく分けて3つあります。
1.試合を繰り返し見る
選手名、身体的特徴、プレースタイルを覚え反射的に言葉が出るようにする。
NBAも観てないし、bjリーグ時代に見たことがあるのはキングスの試合だけ。圧倒的に観戦数が足りない私は、バスケ感を養うためにいろんな試合を見まくった。
2.スタッツの見える化
中継の中で使用頻度の高い項目の最新データ、キャリアハイなど、試合中すぐに確認できるように書き出してまとめておく。
3.選手の特徴やプレーを抽象化・言語化する
この抽象化に沖縄らしい南国感というかゆるさというか一癖あるのが、あったゆういちのスタイルと言えるかもしれません。