現状の継続か、秋春制を導入か 新チェアマン・野々村氏はJリーグをどう導く?

大島和人

新たなファンを掘り起こせるか――。野々村氏の見解は…

「サッカーの価値を上げていくのが僕の仕事」だと話す野々村氏の手腕に注目が集まる 【写真:松岡健三郎】

――若い人、新しいファンをどう引き込むかはJリーグの大きな課題だと思います。そこについてはどうお考えですか?

 上からのプロモーション、例えば地上波での露出もやるし、デジタルの若い世代へのピンポイントのプロモーションもやる。そういった複数の手を駆使していくしかないですね。90分を見たことのない人が、Jリーグを現場ですぐ見るかと言ったらそれはないでしょう。そういう人を、何を使ってどう誘導していくかみたいなところは、どの業態もやっているようなことをわれわれもやるべきだと思います。

 クラブはおそらく(プロモーションを)やりたいけれど、リソースが足りていませんでした。ローカルとはいえメディアもなかなか取り上げてくれないというのは、北海道ですらそうです。そこに対して、僕はリーグとして何かをしたいなと思っています。

――Jリーグは「草の根」「地方発」の動きが強かったリーグですが、近年はメルカリの鹿島アントラーズ買収、ミクシィのFC東京買収などIT企業がビッグクラブに参入する事例が増えています。外資の参入もあり得るでしょう。そういう投資はリーグの成長つながる動きとなり得ますが、チェアマンはどうお考えですか?

 Jリーグがというより、ヨーロッパを見ていれば当たり前に起こっているわけで、Jリーグだけがそれを排除することはないでしょうね。現場で働いている人たちも、そんな感覚はないはずです。どんどんオーナーが変わることはある世界です。

――アジア戦略の部分で言うと、野々村さんはコンサドーレ札幌の社長としてイルファン、レ・コン・ビン、チャナティップといった東南アジアの選手を獲得しました。経営者としてそのメリットをどう感じましたか?

 彼らの背景にはインドネシア、ベトナム、タイの国民がいて、これだけ興味を持っていると分かった上で獲得をしました。札幌のときも「クラブがどう成長するのか」を考えていて、他の国と比較すると10年後に北海道だけ、国内だけという中では追いつけないな……と思って、アジアの人たちに声をかけたわけです。

 彼らが来ることでその国の北海道を見る目が変わったのはよく分かりました。チャナティップが来てからはタイ人の観光客が練習場に毎日100人くらい見に来るような現象が普通に起こったんです。今すぐのマネタイズも大切なのかもしれないけれど、リーグとしても10年20年後を見たらもっと東南アジア、アジアに対しては積極的に取り組んだほうがいいと思います。

本物のサッカー文化を根付かせたい

――Jリーグとして秋春制の議論は一旦終わっていると聞いています。野々村さんがリーグの外にいて考えていたこと、リーグの中に入って考えていることはどうですか?

 自分は外にいたから、その決定は「分かりました」という形で聞いています。議論にも参加はしていました。

 以前から僕はずっと、サッカーの価値を日本の中でもっと上げていくことが一つの仕事だと思っています。サッカー発信で世の中の何か変えるくらいのことを起こせるなら、シーズンに関してだけでなく、チャレンジしていくべきだと考えています。でも一応リーグとしてはACL(AFCチャンピオンズリーグ)が春秋制だからとか、雪の問題があるからといって(秋春制の議論を)止めていました。今はACLも秋春制に変わって、話を始めていいなら話をしたほうがいいと思います。

――冬場のプレー環境、施設は秋春制導入の大きな障害です。

 施設の問題といえば施設の問題かな……とは思いますし、今はそう考えるのが自然な感じにはなっていますよね。試合をやる施設、練習施設と色々ありますけれど、でもそれが変わらないとやらないのかな? シーズンを変えないのかな? とも(疑問に)思います。

 そうだとしても、それ以上に世の中が良くなるかが重要だと考えています。フットボールの面でも、ヨーロッパとカレンダーを合わせることで良いところがたくさんある。日本全体に変えられる何かがあって、サッカーがそれを目指していくのであれば、変えたらいいのではないかと。ただそれが見つからないなら、変える必要はないんじゃないですかね。

――最後にファン・サポーターの方へメッセージをお願いします。

 コロナ禍ですし、ファン・サポーターが今のように協力をしてくれていなかったら、そしてストレスを抱えながらでも静かに手拍子で応援してくれなかったら、Jリーグはもっと大変な状況になっていたかもしれません。日本のサッカーはサポーターに守ってもらっていると強く感じます。

 ファン・サポーターは「こちら側の人」で、自分たちのパートナーです。だから、どうやったら自分の応援しているクラブがより良くなるかを一緒にやってほしい。それも伝えたいメッセージです。

 ファン・サポーターの力がチームの成長に直結する現象を、僕は札幌で体験しています。皆さんのそういう力を、ぜひ自分の大事にするクラブにうまく届けてほしい。それが色々なところで起これば、自然と本物のサッカー文化が日本に根付くと信じています。

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著者プロフィール

大島和人

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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