中国戦の向こう側に見える「最大の敵」 次戦はサッカーファンの心に再び火を灯す契機に

宇都宮徹壱

今予選における「日本代表の最大の敵」とは?

3カ月ぶりにアジア最終予選の会場となった埼玉スタジアム2002。この日も伊東純也が勝利に貢献 【宇都宮徹壱】

 久しぶりの日本代表戦の現場だった。

 1月27日に埼玉スタジアム2002で開催された、ワールドカップ(W杯)・アジア最予選。相手は6チーム中5位に沈む中国である。今予選、序盤の3試合で2敗と出遅れた日本は、10月12日のオーストラリア戦で劇的な勝利を収めると、11月のアウェー2連戦でも勝ち点6を持ち帰って2位に浮上。多くの同業者と同様、11月の2試合はDAZN桟敷だったので、代表戦の現場は3カ月ぶりである。

 試合に言及する前に、今予選における「日本代表の最大の敵」について触れておきたい。日本にとっての目下の脅威は、グループ首位を走るサウジアラビアでもなければ、1ポイント差で迫るオーストラリアでもない。グループのライバルたちよりも、もっとやっかいで、対策が立てにくく、気がつくと取り返しのつかないことになっている……。ただし、コロナではない。日本代表の最大の敵、その名は「無関心」である。

「え、今日は代表戦があったの?」──。試合当日の朝、SNSのタイムライン上で、そんなつぶやきをいくつも見かけた。ツイートしているのは、ライトなファンではない。W杯は必ず現地観戦していたり、普段はサッカー関連の仕事をしていたり、要するに「玄人さん」たちである。そんな彼ら・彼女らが代表戦、それもW杯出場が懸かる試合があることを、うっかり忘れさせてしまう。そこに「無関心」の恐ろしさがある。

 この状況は、果たして何に起因するのか? 多くの方が薄々お気づきだろうし、それを批判することが本稿の目的ではないので、これ以上の言及は控える。が、これだけは申し上げておきたい。今予選で唯一となるホーム2連戦、日本代表に求められるのは勝利だけでなく、蔓延する「無関心」の打破である、と。

 ただし中国戦に関しては、オーストラリア戦のように劇的である必要はない。相手との力の差を、しっかり見せつけて勝利すること。それで十分だ。

守備の要を欠くも安定的な試合運びで中国を圧倒

後半16分に伊東がヘディングシュートを決めたことで日本の試合運びはより安定感を増した 【Photo by Etsuo Hara/Getty Images】

 この日の日本代表、スターティングイレブンは以下の通り。

 GK権田修一。DFは右から、酒井宏樹、谷口彰悟、板倉滉、長友佑都。中盤は、アンカーにキャプテンマークを託された遠藤航、インサイドの右に田中碧、左に守田英正。FWは右に伊東純也、左に南野拓実、中央に大迫勇也。今回、吉田麻也と冨安健洋のセンターバックコンビが負傷で招集できず、代わって谷口と板倉の(元)川崎フロンターレコンビで穴を埋めることとなった。

 対する中国は、監督がリー・ティエからリー・シャオペンに代わって、最初の試合。相手がどんなメンバーとシステムで臨むのか、まったく情報がない状態で日本はこの日を迎えた。システムは4-2-3-1だったが、明らかに重心は後ろ向きだったので、日本は序盤から積極的にチャンスを作っていく。そして、伊東のクロスが相手のハンドを誘ってPKを獲得。これを大迫がきっちり決めて、前半13分に日本が先制した。

 森保体制になってからの日本は、先制された試合での勝利はないが、逆に先制した試合では無敗。それもあってか、先制後の日本は落ち着いた試合運びで、追加点を狙うようになる。ただしチャンスは作るものの、ネットを揺らすには至らない。前半24分には伊東のクロスに遠藤が頭で反応し、38分には南野がゴール前で決定機を迎えるも、いずれも枠を捉えることができず。日本の1点リードで、前半は終了する。

 エンドが替わっても、日本はなかなか追加点が奪えず、後半13分に最初の選手交代。長友と大迫のベテラン勢を下げて、前田大然と中山雄太がピッチに送り込まれる。すると、その2分後に待望の追加点。代わったばかりの中山が、左サイドでのスローインを起点にピンポイントのクロスを送り、これを伊東が豪快なヘディングで突き刺す。伊東は、この最終予選で3試合連続ゴール。まさに日本の救世主である。

 日本の3人目の交代は、後半28分。遠藤に代わった久保建英がトップ下に入り、田中と守田がボランチに下がることで、システムが4-3-3から4-2-3-1に変わった。さらに後半40分は原口元気と堂安律がIN(OUTは南野と伊東)。結局、2-0のスコアは動かず終了したが、危なげない試合運びで日本はグループ2位を堅持した。

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著者プロフィール

宇都宮徹壱

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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