中国戦の向こう側に見える「最大の敵」 次戦はサッカーファンの心に再び火を灯す契機に

宇都宮徹壱

「爆買い」も今は昔。日中のサッカーの差がついた理由とは?

試合後の会見に臨む中国代表のリー・シャオペン監督。この敗戦で、2位以内の予選突破は消滅 【宇都宮徹壱】

 選手の距離感が良かったことについては「ディフェンスラインの押し上げ、そして(ラインが)下がったときの前線の選手の戻りが良かったので、われわれが優位に主導権を握ることができました」。谷口と板倉の評価については「もちろん吉田と富安とは(タイプが)違いますが、そこで彼らの良さをプレーで出してくれました」。試合後の森保監督のコメントは、いつも以上に滑らかで余裕が感じられた。

 思えば最終予選から7戦目にして、ようやく安心して見られる試合内容だった。主力不在の穴をしっかりと埋め、ベンチワークも極めて的確。何より、7大会連続のW杯出場を目指す国と20年ぶりの予選突破を目指す国との差を、まざまざと見せつけてくれた。一方、敗れた中国のリー・シャオペン監督。「この敗戦に責任を感じているし、大変申し訳なく思っている。今後の試合すべてに、200%の準備と努力で臨みたい」と語っていたが、その言葉からは虚無感ばかりが募る。

 中国の代表監督は、2011年のホセ・アントニオ・カマーチョから19年のマルチェロ・リッピに至るまで、一時期を除いてずっとヨーロッパ路線を貫いてきた。その後、なぜか国内路線に変更。前任のリー・ティエは中国人初のプレミアリーガーとして知られ、現監督のリー・シャオペンは35歳で女子中国代表のヘッドコーチに就任したことで話題にもなった。それでも中国からは、国際舞台で通用するような指導者が、なかなか出てこないのが実情だ。

 私は2012年に3週間かけて、中国超級(スーパーリーグ)を各地で取材したことがある。ちょうど広州恒大をはじめ、超級クラブの「爆買い」が話題になり始めていた頃だ。「次の指導者(習近平)はサッカーの強化に意欲的なので、10年後には日本に肉薄しているかもしれない」という話を現地で耳にしたこともある。その10年後が、この結果。タレントやインフラには惜しみなく投資しても、ロングスパンでの指導者や選手の育成を怠ってきたツケが、今の中国サッカーの実情につながっている。

 中国サッカーの残念な状況と比較すれば、日本代表を苦しめている「無関心」の問題には、まだまだ救いが感じられる。次の試合は2月1日、サウジアラビアを埼スタに迎える。「今日とは別次元の、高いレベルでの戦いになる」と森保監督。この試合が、カタールへの道を決定づけるだけでなく、冷めきったサッカーファンの心に再び火を灯す契機となることを期待したい。

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著者プロフィール

宇都宮徹壱

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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