連載:ランキングと座談会で振り返る「高校サッカー選手権100回の歴史」

高校サッカー選手権100回記念座談会「歴代最強校」と「青森山田・松木玖生」

吉田治良
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座談会参加メンバーの(左から)水沼貴史、ワッキー、土屋雅史の3氏。選手権にまつわる興味深いエピソードが満載のトークセッションとなった 【スポーツナビ】

 今年度で100回目を迎える高校サッカー選手権を記念して開催したスペシャル座談会も、今回がラストだ。最後のテーマは、「歴代最強校」。元日本代表FWの水沼貴史、「ペナルティ」のワッキー、サッカーライターの土屋雅史の3氏が、それぞれの視点で選手権史上最も強かったチームを挙げてくれた。そして、2時間超の座談会の終わりには、今大会の大本命である青森山田のエース、松木玖生に話が及んで──。

97年度のヒガシは「持っていた」

水沼氏が挙げた00年度の国見、土屋氏が挙げた97年度の東福岡(写真)は、いずれも高校3冠を成し遂げている。歴代最強校と呼ぶに相応しいだろう 【写真:アフロスポーツ】

──では、これが最後のテーマです。みなさんが思う、選手権の歴代最強校を教えてください。

水沼貴史(以下、水沼) 僕は国見かな。帝京と並ぶ戦後最多6度の日本一でしょ。なんと言っても、赴任時は弱小だったチームを、瞬く間に常勝軍団へと鍛え上げた小嶺(忠敏)監督の指導力に頭が下がります。

──いつの時代の国見が一番ですか?

水沼 やっぱり(大久保)嘉人の代かな。インターハイ、国体(国見が長崎県代表として単独出場)、選手権の高校3冠を達成した時の国見(2000年度)は、本当に強かった。FWのところでも話したけど、嘉人だけじゃなく、松橋(章太)っていうスピードスターもいたしね。

土屋雅史(以下、土屋) 僕は世代も一緒なので、1997年度の東福岡を推します。52戦無敗で、こちらも高校3冠(インターハイ、高円宮杯全日本ユース、選手権)をやってのけています。

ワッキー 帝京との“雪の決勝”を制した時だね。

土屋 以前、本山(雅志)くんと中田(浩二)くんが口をそろえてこう言っていたんです。「あの決勝で雪が降っていなければ、絶対に帝京が勝っていた」と。実はそのくらい、両校には力の差があった。インターハイの決勝も東福岡が4-3で勝っているんですけど、その時もヒガシ(東福岡)のDF金古(聖司)と千代反田(充)が、帝京の木島(良輔)、高嶋(清善)という2人のドリブラーに翻弄(ほんろう)されたらしいんです。

ワッキー へぇー、そうなんだ。

土屋 そのイメージがあったから、選手権の決勝でも高島をスタメンで使ったんですが、スタジアムに入った途端に雪が降り出して、一瞬にして積もってしまった。それでドリブルが使えなくなり、帝京が思い描いていた試合運びができなくなったという背景があったんです。だから、もし雪が降っていなければ、ヒガシの無敗記録は51試合でストップしていたかもしれないし、逆に言えば、雪のおかげで52戦無敗と3冠を達成できたんじゃないかと。個々のキャラクターが立っていたのは確かですが、そういったことも含めて、あの年のヒガシは「持っていたな」って思うんです。

水沼 雪で九州のチームが勝つっていうのも面白いよね。もちろん九州にも普通に雪は降るけど、イメージ的にね。

土屋 鵬翔と京都橘の決勝(12年度)は雪で延期になりましたが、あれは試合のかなり前から降っていたので。帝京対東福岡も、もっと早くに降り始めていれば……。まあ、いろんな偶然が重なって、ヒガシは3冠を獲れたんだと改めて思いますね。

水沼 3冠なんてそんなに簡単じゃないからね。
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著者プロフィール

1967年、京都府生まれ。法政大学を卒業後、ファッション誌の編集者を経て、『サッカーダイジェスト』編集部へ。その後、94年創刊の『ワールドサッカーダイジェスト』の立ち上げメンバーとなり、2000年から約10年にわたって同誌の編集長を務める。『サッカーダイジェスト』、NBA専門誌『ダンクシュート』の編集長などを歴任し、17年に独立。現在はサッカーを中心にスポーツライター/編集者として活動中だ。

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