日本歴代最高得点更新の村元/高橋組 カップルを支えたズエワコーチの言葉

沢田聡子

RD、FDともに日本歴代最高得点を更新

村元/高橋組のリズムダンス『Soran Bushi&Koto』は一度観たら忘れられない斬新なプログラムだ 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 リズムダンス『Soran Bushi&Koto』は、日本のアイスダンサーである村元/高橋組にしか滑れない、そして一度観たら忘れられない斬新なプログラムだ。

「今シーズンのリズムダンスは、ミッドナイトブルースとヒップホップ・アーバンストリートダンスという課題が出た。やはり他のチームといかに被らないよう、目立つようにするかということになると、他のチームにできない和のプログラム、日本チームだからこそできるプログラムをしたら面白いんじゃないかな、という発想から始まって。マリーナコーチと相談し『和のプログラムがいいんじゃない』という話になり、曲を探していた中でソーラン節とKotoの曲を見つけた。結果、すごくユニークなプログラムになったかなと思っています」(村元)

 モダンにアレンジされたソーラン節に合わせて滑る前半では、波や海・魚を表現する。

「リフトは、ちょうど“ドッコイショ”の部分に持ち上げるところがたまたまうまくはまった形。魚を釣り上げている感じにも見えるので『ちょうどいいのかな』と」(高橋)

 そして後半では、歌舞伎や神社、浮世絵など「ハチャメチャな、なんでもありの世界で日本っぽさを表現している」と高橋は説明する。さらにヒップホップ調の動きも加わり、現代的な和の世界が繰り広げられた。「今自分たちができるものをどう見せるか」、そのために最適な方法を熟知しているズエワコーチの下、村元と高橋が見せるリズムダンスはとても魅力的だ。今大会でもスタンディングオベーションを起こし、日本歴代最高得点である70.74という評価を得ている。

 また、フリーダンスは昨季から滑る『ラ・バヤデール』を「一年で終わらせるのはもったいない」(高橋)と継続。こちらはバレエ音楽を使ったクラシックなプログラムで、動きがぎこちない部分もあった昨季より洗練され、流れるように展開していく。滑り終えて抱き合う二人を大きな拍手が包み込み、こちらも日本歴代最高得点となる108.76というスコアを得ており、合計点も179.50で日本歴代最高得点を更新した。

 また、高橋の中にあったのはズエワコーチの「今の経験は今しかできない」という言葉だった。ズエワコーチは、多くのファンが待つ日本の大会に臨む高橋の背中を、言葉の力で押している。

「お客さんはあなたのスケートが観たくて、楽しみにして応援してくれているんだから、『うまくやらなくては』ではなく、どうしたら楽しんでもらえるかを考えながら滑りなさい。自分たちが楽しまないと周りには伝わらないし、とにかく貴重な今のこの瞬間を大切に楽しみなさい」

 高橋は「緊張感は高かったのですが、本当に楽しむことを一番に演技することができたのでうまくいったのかな」と振り返っている。

格段に完成度を増した村元/高橋組

高橋大輔(写真右)「ミスなく大きな舞台を終えることができたので、すごく自信になったと思います」 【坂本清】

 総合6位で今大会を終えた二人には、充実感が漂っていた。

「ミスなく大きな舞台を終えることができたので、すごく自信になったと思いますね。やはり今回緊張感も非常に高かったのですが、その中でも落ち着いて演技できたのは、本当に練習をちゃんとしてきたからこそかなと思う。ただやはり細かい部分では、これからもレベルアップしていかなければ点数につながらない部分はたくさんあった。その細かい部分は抜きで、他のところではうまくまとめられた要因には、この一年の成長があったんじゃないかな」(高橋)

 北京五輪代表の一枠をどのカップルが手にするかに注目する世間は、どうしても日本勢で最高位だったことに注目しがちだが、二人の視野はもう少し広いようだ。

「今回は、僕たちがアイスダンサーとして初めて国際評価をいただける試合になったと思うので。どういった評価を受けるのかまったく分からない状態で今回挑んで、演技としても全体的に大きなミスなく、自分たちが予想していた以上の評価というものをいただけたのかなと思った。スタートラインに立てたのかな」(高橋)

「昨シーズンと比べて、今回のNHK杯では自信を持って滑れた。国際ジャッジの方からの評価ではポジティブにとらえられ、テクニカルの部分では結構(点数が)とれていた。自分たちにまだ何が足りないのかが分かったので、すごく収穫が多い試合になりました」(村元)

 一年前より格段に完成度を増したアイスダンスのカップルとして世界トップのチームと戦った村元/高橋組の二回目のNHK杯は、実り多い試合になったようだ。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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