日本歴代最高得点更新の村元/高橋組 カップルを支えたズエワコーチの言葉

沢田聡子

村元/高橋組を支えたマリーナ・ズエワコーチ(写真左) 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

“It’s not what you do,but it’s how you do it”
「何をするかではなく、今自分たちができるものをどう見せるかが一番大事だよ」

 NHK杯に臨む村元哉中と高橋大輔に、コーチであるマリーナ・ズエワがかけた言葉だ。村元は「マリーナって、本当にいつもいろいろな名言が出る」と言う。ズエワコーチは、ソチオリンピックでは教え子のメリル・デイビス/チャーリー・ホワイト組がアイスダンスの金メダル、テッサ・バーチュー/スコット・モイア組が銀メダルを獲得している名伯楽である。そのズエワコーチの言葉が、村元に力を与えた。

「本当に『そうだなあ』って。やはりトップのチームとどうしても比べてしまったりする時もあるのですが、比べたところで何も変わらない、何もいいことがないので。『どれだけ自分たちが今できることを、どういうふうに表現してパフォーマンスするかだ』とマリーナに言われて、それを今回すごく意識した結果、良い評価も得られたし、表現面でも昨シーズンよりはよく出来たのかなと思う」

2シーズン目を迎える村元/高橋組

高橋大輔(写真右)「技術力も向上してきた分、パフォーマンスにも力を加えて練習してきました」 【坂本清】

 2シーズン目を迎える村元/高橋組は、もちろん「自分たちが今できること」を増やすことも心がけてきた。NHK杯開幕前日の公式練習後、村元は「一番集中的に練習していたのはスケーティングのクオリティ、質」だと話しており、「自信をもって滑れるように練習してきました」としている。

 また高橋も「スケーティングスキルやテクニカルの強化は必要だったので、そこを重点的にやってきた」と言う。シングルスケーターとしての高橋が持つスケーティングスキルが世界最高レベルであったことは言うまでもないが、シングルとは靴も違い、パートナーとの連携も必要なアイスダンスのテクニックを身に着けることは必須だった。

 さらに、シングルにはないアイスダンスの要素や、二人で滑るアイスダンスならではの課題にも取り組んできた。氷上練習後に週3回のオフアイストレーニングも行っているという高橋の上半身はたくましさを増しており、本人も「『全体的に一回り大きくなったのかな』というのは、自分の姿見たときに思います」と自覚している。その結果、リフトについては「昨シーズンは不安定なものがかなりあった。安定感はでてきたのかな」と自信を深めているようだ。

「滑る距離感や組んだ時のポジショニングの具合やユニゾン、いろいろ挙げればたくさん成長してきた」(高橋)

 どこかぎこちなさもあり、二人が別々に滑っているような印象もあった昨季のNHK杯とはまったく違う村元/高橋組が、そこにはいた。

 そして高橋は、技術的な課題に取り組んだ上で、パフォーマンスも強化したと話している。

「先シーズンはテクニックのことで頭がいっぱいで、コネクションやパフォーマンスまでいかなかったところを、技術力も向上してきた分、パフォーマンスにも力を加えて練習してきました」(高橋)

 その結果、表現では唯一無二の存在である高橋が華やかなアイスダンサーである村元と磨きをかけたプログラムは、とても見応えのあるものに仕上がっている。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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