湘南が日本初のトークンマッチデーを開催 サポーターと作るからこそ生まれる本質

池田タツ

普段とは異なるファン・サポーターの後押しやメッセージを受け、プレーに一層熱がこもった湘南の選手たち。川崎Fをあと一歩まで追い詰めた 【(c)J.LEAGUE】

 ファン・サポーターと新たな関係が築ける上に、収入源にもなる「トークン」に今、注目が集まっている。日本では湘南ベルマーレがプロスポーツクラブとして初めて発行し、購入者とのミーティングを開催。ついに5月26日の川崎フロンターレ戦で最初のイベントである“トークンのマッチデー”が実施された。権利を購入したサポーターに話を伺いながら、日本初の試みをリポートする。

マッチデーの新しい形がついに実現

 チームの勝利のために日々知恵を絞ってきたファン・サポーターと一緒にやるからこそ、できることがある――。

 湘南ベルマーレは5月26日、日本のプロスポーツクラブとして初めて“トークンのマッチデー”を実施した。

 本来、湘南のマッチデーとは、スポンサー企業に協賛金をもらい、試合日にスタジアムでスポンサーをPRする営業商品である。だが、J1第16節の川崎フロンターレ戦はスポンサー企業のマッチデーではなく、ファン・サポーターによるトークンのマッチデーとして実施された。

 トークンとは、クラブがデジタルで発行するもので、ファン・サポーターがトークンを購入すると、さまざまな権利が得られる代替物のことである。

 具体的に説明すると長くなるため詳細はコラム『湘南ベルマーレが導入「トークン」とは?』を読んでいただきたいが、スポーツクラブが発行するトークンは『ファントークン』などと呼ばれ、湘南はフィナンシェが管理するファントークンを導入した。
 5月26日の川崎F戦では、トークン保有者がマッチデーの名前を決めたり、限定販売されるタオルマフラーのデザインを決めたりと、トークン保有者の意見があらゆる企画やものに反映された。

 マッチデーの名前はトークン保有者の投票によって「緑と青の湘南トークンDAY」に決まった。スタジアム内に掲出される応援メッセージは、無類の強さを誇る川崎Fを意識した「青よりも衝撃的な緑を。」という刺激的な文言となった。

 前述したように、マッチデーは本来、スポンサー企業に与えられる特権だが、「ファン・サポーターの意見を反映することで、ファン・サポーターが喜ぶものを形にできたことが大きい。新しいマッチデーの形になりました」と、湘南ベルマーレの営業担当である加藤謙次郎さんも手応えを感じていた。

 今回のマッチデーでトークン保有者が決めたのは、前述したマッチデーの名前や応援メッセージだけでない。下記の権利も売りに出された。

・のぼり旗のお名前掲載コース
・試合前のウォーミングアップ見学コース
・大型ビジョンへのお名前掲載&ご紹介コース
・VIP席での試合観戦コース
・選手が選ぶおすすめグッズのオンライプレゼントイベントの参加権利コース
・貴賓席でのスペシャルデー観戦コース
・選手のデジタルコンテンツ

売り出された権利の中で、値段的に最もお得

『選手のぼりのお名前&メッセージ掲出』の権利を購入した湘南サポーターの須田大輔さん。三幸秀稔ののぼりにメッセージを入れた 【写真:須田大輔】

 今回、最も人気が高く、即完売したのが『選手のぼりのお名前&メッセージ掲出』だった。湘南の試合ではいつもベルマーレフードパークに選手ののぼりが立てられる。そののぼりに好きな名前とメッセージを掲出できる権利が販売された。

 サポーターの須田大輔さんは、仕事でも湘南ベルマーレ、フィナンシェの双方と付き合いがあったため、トークンが発売されたとき、迷わず購入を決意した。

 数々の権利の中で、のぼりの権利を購入したのは「今回売り出された権利の中で、値段的に最もお得感があった」からだという。

 販売金額は5,000円。確かにこの金額は、ファンなら安いと感じられる額だ。のぼりの選手は三幸秀稔を選び、『全試合、全力応援!須田大輔より』というメッセージを入れた。

「掲出されたあとはのぼりをもらえるので、また応援しに行くときにも、家で試合を見るときにも使えます。記憶に残るだけでなく、実際に手元に残るのはいいなと。次回は多くのサポーターが寄せ書きみたいな形でのぼりにメッセージを入れるのもいいんじゃないかと思います。その方が選手たちもパワーを感じてもらいやすいかなと」(須田さん)

 また、普段ならスポンサー企業などが行う花束贈呈の権利を、この日はVIP席購入者の中から抽選で選んだ。

 この権利を獲得したのは、目黒謙一さんだ。川崎市出身ということもあり、以前からこの試合の観戦を決めていた目黒さんは、VIP席が販売されることを知り、「せっかく見に行くんだから」と、購入に踏み切った。実際に花束贈呈をした感想を次のように語ってくれた。

「非常に緊張しました。ピッチに立てるだけでもうれしかったのですが、花束贈呈までできるなんて。花束贈呈自体はよくあるイベントですが、それが一般の方に開放されることってなかなかない。本当によく開放してくれたなと思います」

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著者プロフィール

株式会社スクワッド、株式会社フロムワンを経て2016年に独立する。スポーツの文字コンテンツの編集、ライティング、生放送番組のプロデュース、制作、司会などをこなし、撮影も行う。湘南ベルマーレの水谷尚人前社長との共著に『たのしめてるか。湘南ベルマーレ フロントの戦い』シリーズがある。

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