藤田が重要 上野の負担を減らせるか ソフトボール元日本代表が代表選考を解説

中島大輔

金メダル獲得へ向けて、投手の2本柱として活躍が期待される上野(写真左)と藤田 【写真は共同】

 日本ソフトボール協会は3月23日、東京五輪に臨むソフトボール日本代表の15人を発表した。2008年北京五輪で金メダルに導いたエース・上野由岐子らが順当に選ばれたなか、頂点まで勝ち進むポイントはどこにあるのか。2000年シドニー五輪で銀メダルを獲得し、現在は淑徳大学ソフトボール部を率いる増淵まり子監督に聞いた。

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キャッチャー3人体制のメリットとは?

――選出された15選手を見てどんな印象を抱きましたか?

 9割は予想どおりでした。意外だったのはキャッチャーを3人体制にしたことです。アトランタ、シドニー、北京と過去のオリンピックでは2人だったので驚きましたね。

――過去の五輪と比べると、投手が4人から3人に減った一方、捕手は我妻悠香、清原奈侑、峰幸代と1枠増えました。捕手3人体制のメリットはどこにありますか。

 練習でも1人のピッチャーに1人のキャッチャーがつけるので、調整しやすいと思います。私が過去のオリンピックや世界選手権に出場した際、ピッチャー4、5人に対してキャッチャー2人という場合もあり、投球練習で控えの野手に受けてもらうこともありました。ピッチャーとキャッチャーがマンツーマンになるのは、試合中も、試合に向かうまでの練習でもすごく調整しやすいと思います。

――投手陣は上野由岐子、藤田倭、後藤希友の3人が選ばれました。なかでもエースの上野投手は38歳まで現役を続け、並々ならぬ気持ちで臨むと思います。

 2018年世界選手権の決勝ではアメリカと対戦し、延長10回に打たれて負けました(スコア6対7)。マウンドで呆然と天を仰ぐ上野の顔を見て、『あっ、上野も人間なんだな』と正直思いましたね。2度とああいう経験をしたくないはずなので、当時からレベルを上げるための取り組みをしていると思います。

 ただ、北京五輪から13年が経っていますし、連投になるときついと思います。藤田と後藤が自分の仕事をどれだけして、最終的に上野の負担を減らせるかも重要です。

――藤田投手は二刀流としても注目されますが、マウンドではどんな役割を期待されますか。

 経験も十分にありますし、今年から上野と同じビックカメラ高崎に移籍してコミュニケーションをたくさんとっていると思います。上野と同じように、先発完投で1試合を任せたいですね。

金メダル獲得へ、初戦がカギ握る

キャプテンとしてチームの精神的支柱の山田 【写真は共同】

――今回は過去の五輪と異なる大会方式になります。北京五輪まではページシステムという、予選リーグの1位から4位までが決勝トーナメントに進める仕組みだったのが、東京五輪ではリーグ戦の1位と2位だけが決勝に進みます。金メダルを目指すには、エースの上野投手に加えて藤田投手の活躍が不可欠ですか?

 そう思います。6カ国によるリーグ戦なので、藤田が2、3試合くらい先発完投、もしくは後藤につないで逃げ切るような仕事をしてくれると、チームとして良いバランスで決勝を迎えることができます。

――ページシステムからリーグ戦に方式が変わったことで、選手にはどんな影響が考えられますか。

 1試合も落とせないというプレッシャーがかかると思います。リーグ戦で3位になると、絶対に金、銀メダルは狙えないので。初戦のオーストラリア戦がキーになります。

――上野投手、峰捕手、山田恵里外野手と五輪経験者が3人入りました。ベテランの経験はどういう形でチームの力になりますか?

 峰がキャッチャーで入ったのは、オリンピックでの経験を買われたと思います。私は20歳でシドニー五輪に出たとき、今の日本代表でコーチを務めている山路典子さんがファーストを守っていました。山路さんは本職のキャッチャーからファーストにまわり、『マス(増淵)、この場面はここを気をつけよう』『ここはまだ勝負する場面じゃないよ』とか、いろいろアドバイスしてもらいました。経験のある方から声をかけていただけると、安心して投げられるのは間違いないです。

――キャプテンの山田選手は3度目の五輪出場になります。

 たとえ調子が悪くても、勝負どころに向けて自分の調子を持っていくことができる選手です。確実に活躍するだろうなという安心感がありますよね。野球のワールド・ベースボール・クラシックのイチロー選手のように、大事なところで打ってくれると思います。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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