ダルビッシュ有、2020年の変化を分析 良かった球種、良くなかった球種は?
幻に終わったライバル二人の共演
サイ・ヤング賞の有力候補に挙がっているダルビッシュ。2020年の投球内容を分析してみた 【Getty Images】
ダルビッシュがバウアーからなにかしら復調のきっかけをつかめれば、ということか。
二人のデータやバイオメカニクスの知識を利用したアプローチには共通点が多く、同じ言語を話す。また、彼らの持ち球の種類、軌道は非常に似通っており、攻め方にも共通点が少なくない。二人なら、高い次元で意見交換もできるのではという狙いは、いいところを突いている。
ただその計画は、その年の8月にダルビッシュの右ひじの故障が当初の診断よりも重症で、オフは治療、リハビリが優先されることになったため、幻となった。
もっとも、最初に刺激を受けたのは、バウアーの方だった。
以前も紹介したが、2013年4月、ネット上でダルビッシュの5球種を重ね合わせた動画が広まると、それを見たバウアーは衝撃を受けた。
バウアーはすぐに、映像を重ね合わせることのできるファイナルカットプロというソフトを購入し、自分の投球映像を重ねてみたが、ダルビッシュほどフォームも軌道も一致しなかった。
「以来、そこが目指す方向の一つになった」
少々前置きが長くなったが、今年のナ・リーグのサイ・ヤング賞は、二人の争いになるとみられている。投球術だけではなく、飽くなく探究、それをSNSなどで惜しみもなく発信するスタンスも似ており、その意味でも興味深い。しかも、まれに見る接戦。今年の投票を行ったNBCシカゴのゴードン・ウィッテマイヤー記者も、「これまで何度もサイ・ヤング賞の投票を行ってきたが、これほど拮抗(きっこう)した争いは記憶にない。今までで一番難しかった」と話す。
現地11日(日本時間12日)に結果が発表されるが、今回の企画の前編では、今季の変化をボールの軌道、質という視点から辿(たど)ってみたい。後編では、バウアーがダルビッシュについて語っているYouTubeの動画を利用しながら、その各軌道がどう相互に作用しているのかをピッチトンネルの観点から掘り下げていく。
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