連載:ドライブラインの正体〜最新鋭の野球に迫る〜

NPBの投手が自費で訪れるドライブライン 最初は倉庫を間借り、粗末な施設だった

丹羽政善
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今永、藤浪が指導を受け、キャンプに招待するチームも

今オフ、多くのNPB球団・選手とコラボレーションしたことで、ファンの話題に挙がった「ドライブライン・ベースボール」。シアトル郊外に構えるトレーニング施設は、どのように発展してきたのか 【丹羽政善】

 昨年11月から12月にかけて、埼玉西武、千葉ロッテ、横浜DeNAが選手を派遣し、DeNAからは、今永昇太、濱口遥大、京山将弥が自費でトレーニングに訪れていたドライブライン・ベースボール(米シアトル郊外、以下ドライブライン)。

 ドライブラインのスタッフは、北海道日本ハムがアリゾナ州で行った秋季キャンプ(現地10月30日〜11月9日)へ“出張”し、同じ11月には福岡ソフトバンクの招待で宮崎へ。また、12月には沖縄へ飛んで、阪神の藤浪晋太郎、中日の藤嶋健人らを指導している。

 結果として、科学的なデータなどを採り入れたトレーニング施設ということは広まったが、“重いボールを使ったトレーニングで球速が上がる”といった表面的な話が先行する。そもそもそれが誤解で、球速アップは結果であって、決して目的ではない。

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自費で渡米し、トレーニングに励むDeNA・今永昇太(写真中央)。京山将弥もその様子を見守る(同右) 【丹羽政善】

「アプローチが逆」と同施設でトレーニングをし、大リーグを代表する投手となったトレバー・バウアー(レッズ)もこう警鐘を鳴らす。

「そもそも、その考えではケガをする。正しい準備、正しい体の動き、正しいリカバリープログラムを把握してからの話だ」

 では、ドライブラインとは、どんなトレーニング施設なのか。

 このオフ、バウアーの来日に帯同しながら折に触れて話を聞き、今永らを通じてドライブラインを取材。さらに1月、バウアーの同地でのトレーニングに1週間ほど密着して、ようやくこういうことかな、と見えたものがある。

 関係者らの取材も通して、その正体をたどっていく。

2016年、全米唯一の全国紙に記事が掲載

マリナーズ在籍時のジョー・ベイメル。筆者は彼の話からドライブラインを知ることになった 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 まず、過去の取材メモを手繰ってみたところ、2015年にマリナーズにいたジョー・ベイメルという投手に、ドライブラインについて話を聞いていた。

 11年を最後にメジャーから遠ざかっていたが、ドライブラインでトレーニングを始めると球速がアップし、37歳となる14年にマリナーズと契約。その年、56試合に登板して防御率2.20という成績を残すと、翌15年の再契約を勝ち取っている。

 当時彼は、SNSなどで、重さの異なるボールを使ったドライブラインでのトレーニングの様子を発信しており、そこでアップされていた映像などをもとにコンセプトなどを聞いた。

 ただ、ほとんど印象に残っておらず、それこそ理解できたのは「重いボールを使ったトレーニングで球速が上がる」という程度の薄っぺらいものだった。ベイメル自身がちょっと変わった選手だったこともあり、それ以上、深く掘り下げることもなかった。

 その後、再びドライブラインのことを目にしたのは、16年6月のこと。全米唯一の全国紙ともいえる『USA TODAY』紙に記事が出ていた。
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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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