“監督”遠藤保仁が追い求める理想とは?「見ていて楽しく、攻撃に特化したチーム」
これまで多くの監督のもと、さまざまなサッカー観に触れてきた。選手としてキャリアを重ねる中で、「監督・遠藤保仁」としての明確なイメージも出来上がったようだ 【写真提供:ジュビロ磐田】
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パッと浮かんだのはレシャックとアギーレ
基本的には、どの監督にもそれぞれに面白さを感じていましたし、刺激も受けてきたので、誰か一人を選ぶのは難しいです。それに……正直、これだけキャリアが長くなると、それぞれの監督がどんな戦術を用いていたのかまでは、よく覚えてない(笑)。ただ、今その質問をされてパッと思い浮かんだのは、横浜フリューゲルス時代の(カルロス・)レシャック監督と、元日本代表監督の(ハビエル・)アギーレさんの名前でした。
──レシャック監督はプロ1年目に一緒に仕事をされた、ご自身にとっても初めての外国籍監督でした。
レシャック監督のサッカー観は、いまだに自分の中で特別だった印象があります。現代サッカーでは運動量や走力を求める監督が多いけど、当時のレシャック監督は「なんで、そんなに人間が走るんだ? ボールを走らせればいいだろう」というのが基本にありましたからね。実際、練習でも「走れ」と言われたことはなかったけど、「走りすぎだ」っていう言葉はよく聞いたし、そもそもボールを走らせてパスをつなぐサッカーは、僕自身が面白いと感じていたので、プレーしていてもすごく楽しかった。それって、サッカーの本質だと思うから。
最近は、球際に強くとか、運動量やハードワークといったフレーズが先行している気がするけど、僕にしてみれば、それは技術のひとつであって戦術ではないというか。サッカーの本質は、「いかにボールを握って、相手ゴールにボールを入れられるか」で、ボールを追い掛け回していればOKではない。レシャックはその本質を追求する監督だったし、バルセロナのようにパスでゲームを作っていくサッカーは楽しさしかなかった。なにより、練習もパス回しばっかりでめちゃ楽だったし(笑)。
──アギーレ監督と一緒だった期間は短かったと思いますが、何が一番印象に残っていますか?
サッカー観も面白かった気はするけど、とにかくチームや選手の「持っていき方」がすごくうまかったのは覚えています。アメとムチの使い分けというのかな。どの選手に対しても平等で、誰に対しても良くないと思ったことはハッキリと口にするし、めちゃめちゃ怒ることもあるけど、でも良いプレーはきちんと評価してくれる。選手に声を掛けるタイミングや、やる気にさせる雰囲気づくりが本当にうまかった。
基本的に日本代表はプライドの高い選手の集まりだけど、スタメン組だけでなくサブ組の選手にもしょっちゅう声を掛けていて、チーム全体としてモチベーションを引き上げていく感じも絶妙でした。
──サブ組まではなかなか目が行き届かないものですよね。
いろんな監督を見てきた中で、この「控えの選手をよく観察している」という点は、僕が「良い監督」だと思う要素のひとつですが、その部分は(アルベルト・)ザッケローニ監督にも感じたことでした。ザックは僕が一緒に仕事をした外国籍の代表監督の中で、誰よりも日本という国に溶け込もうとしていたし、日本人選手の本質も理解していた気がしますしね。監督の方から選手に歩み寄って話をすることもしょっちゅうで、自分の戦術について選手の立場からどう感じているのか、みたいなこともよく聞かれました。
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自分のサッカー観に一番近かったのは……
ザッケローニ(写真右)とアギーレに共通するのは、「控え選手をよく観察している」という点。それは遠藤が「良い監督かどうか」を判断する要素のひとつでもある 【Getty Images】
そうだった?(笑) 確かサイドでの数的優位を生かして攻めるのが特徴で、守備の時も常に攻撃のことを考えているというか……いや、詳しくは覚えてないから、これ以上語るのはやめておきます(笑)。ただ、攻撃的なパスサッカーを指向していたという点で、楽しかった記憶はあります。
──他に戦術面で印象的だった監督はいますか?
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