ハーランドだけじゃない“才能の源泉” ドルトのヤングスターがブンデスを席巻

島崎英純
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若手選手が躍動する今季のボルシア・ドルトムント 【Getty Images】

 ルシアン・ファブレ監督体制のボルシア・ドルトムントは現在、健全なクラブ経営の一助となるチーム構築を推し進めている。中でも近年のドルトムントの経営戦略でクローズアップされるのが、確かなスカウティングをもとにした選手獲得術と、クラブ、及びチームで純粋培養されて確かな経験を積んだ選手を移籍させることによる売却益保持の姿勢だ。

 近年のドルトムントは多くの優秀な選手を他クラブへ譲渡している。近年ではウスマン・デンベレ(→バルセロナ/1億500万ユーロ:約129億円)、ピエール=エメリク・オーバメヤン(→アーセナル/6640万ユーロ:約81億円)、クリスチャン・プリシッチ(→チェルシー/6400万ユーロ:約79億円)など、クラブが多額の移籍金を手にしたケースは枚挙にいとまがない(カッコ内は当時移籍したクラブ)。

 一方で、ドルトムントは世界中に張り巡らせたスカウト網を駆使し、若く将来性のある選手を安価な金額で獲得する術にも長けている。2010年に当時Jリーグのセレッソ大阪に在籍していた香川真司を育成補償金の35万ユーロ(約4300万円)で獲得し、12年6月に出来高を含めて2,200万ユーロ(約27億円)の移籍金でマンチェスター・ユナイテッドへ放出したケースはまさに代表的で、選手の能力を見極めて育成する土壌の確かさには定評がある。

 そんなドルトムントには今、このクラブ、チームを支え、なおかつ近い将来にヨーロッパシーンで輝かしい成果を成し遂げる可能性を秘める“ヤングスター”たちが多く在籍している。

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“怪物”の出現

ノルウェー代表のハーランドはドルトムント・ヤングスターの旗頭 【Getty Images】

 まず、真っ先に挙げなければならないのは昨季途中にオーストリア・ブンデスリーガのレッドブル・ザルツブルクから完全移籍で加入したFWアーリング・ハーランドだ。彼はノルウェー国籍の20歳で、アカデミー時代からノルウェー国内で頭角を現し、モルデFK在籍時の2019年にザルツブルクへと引き入れられた。その後、ハーランドは19-20シーズンに南野拓実(リバプール/イングランド)やファン・ヒチャン(ライプツィヒ/ドイツ)らとともに攻撃陣の中軸を担い、19年12月29日に移籍金2200万ユーロ(約27億円)の4年契約でドルトムントへと加入した。

 ハーランドのプレースタイルを一元的に捉えるのは難しい。彼は194センチ、87キロという大柄な体躯(たいく)だが、そのフィジカルを前面に押し出してもいない。当然、対人能力は抜群に高いが、それ以上に、彼は機敏な判断と足元のスキルに長ける繊細で緻密なプレーヤーでもある。直近のブンデスリーガ第5節・シャルケとのレヴィアダービーではジェイドン・サンチョとの流麗なワンツーリターンから華麗なチップキックでゴールを射抜いた。最前線での確かなポストプレーから瞬時に味方と敵の位置を把握してボールを離した刹那、決定的なスペースへ飛び込んでワンタッチゴールを決める挙動はゴールハンターの究極形でもある。

 ちなみにハーランド本人が影響を受けた選手はクリスティアーノ・ロナウド(ユベントス/イタリア)、ズラタン・イブラヒモビッチ(ACミラン/イタリア)、ミチュ(元スウォンジーなど)などだが、もうひとり、モルデFK時代に監督と選手の間柄だった元ノルウェー代表FWオレ・グンナー・スールシャール(現マンチェスター・U監督)を理想の選手として挙げていて、そのスールシャールとハーランドのプレースタイルには相似点が多いように思える。

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著者プロフィール

1970年生まれ。東京都出身。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当記者を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動。現在は浦和レッズ、日本代表を中心に取材活動を行っている。近著に『浦和再生』(講談社刊)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信。ほぼ毎日、浦和レッズ関連の情報やチーム分析、動画、選手コラムなどの原稿を更新中。

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