ドルトムントはバイエルンに匹敵する? クラブ存続の危機を経た“ナンバー2”の実情

ドイツ屈指の人気クラブ、ドルトムント 【Getty Images】

 ヨーロッパで最も多くの観客動員数を誇り、ドイツ国内屈指の熱狂的サポーターを擁するボルシア・ドルトムント。コロナ禍の現在は制限付きの有観客試合、もしくは無観客試合を強いられているが、それでも彼らに対する周囲の期待は大きい。しかし近年、この伝統あるクラブは常にバイエルン・ミュンヘンの後塵(こうじん)を拝してきた。そんな彼らは2020-2021シーズンの今季こそ、”盟主”を王座から引きずり下ろせるのだろうか。そこで今回は、ドルトムントが辿った数奇な歴史とドイツ国内における現状の立場、そしてタイトルへの意欲などの率直な評価を、クラブを長く取材する現地記者に記してもらった。

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瀕死(ひんし)に陥ったクラブ

  ボルシア・ドルトムントは、美しく攻撃的なサッカーを標榜し、多くの若いタレントを擁することで知られるクラブだ。しかしこのドイツの伝統的なクラブは、常に“盟主”バイエルン・ミュンヘンの影にある。したがってドルトムントは、2012年以来となるドイツマイスター(リーグチャンピオン)の座を目指してはいるものの、それが絶対的な使命というわけでもない。それは、このクラブの近年の歴史が密接に関係している。

 ドルトムントの歴史では数々の重要な出来事があった。中でも特に重要だったのが、あるアウェーでの“試合”だった。それはスタジアムではなく、デュッセルドルフ空港内の貨物倉で行われた集会のことだ。

 05年3月14日、ドルトムントはクラブが消滅寸前にあった。選手への給料は払えなくなり、さらなる借金もできなくなっていたのだ。その影響でクラブは、経営破綻とその懲罰として4部リーグへの降格を宣告されそうになっていた。1997年にドイツのクラブとして初めてチャンピオンズリーグ(CL)を制覇したドルトムントは瀕死状態だったのだ。そんなクラブに最後に残されたチャンスは、投資家たちが配当を委棄することだった。

 デュッセルドルフ空港での集会に招待されたのはドルトムントからホームスタジアムを買い上げた投資家たちだった。クラブ首脳陣はそこで、投資家たちに対して契約で約束された配当を委棄してもらえるよう働きかけた。サッカーに興味のない投資家たちがこれに合意してくれれば、クラブの将来は拓ける。しかし、投資家たちが首を縦に振ってくれなければ、ドルトムントの歴史はここで終焉となる。現在もドルトムントの会長を務めるラインハルト・ラウバルが当時を思い起こす。

「それは国民を代表して私が判決を出すようなものだ。終身刑、または無罪のどちらかを。あんな日はもう二度と経験したくない」

 ラウバルとドルトムントは運が良かった。結局、その集会では95パーセントの投資家たちが当面の配当委棄に合意してくれたのだ。そして、ここからドルトムントのクラブ再建が始まった。

 ドルトムントのことを理解したいならば、この05年の出来事を知らなくてはならない。なぜならば、奈落の底を見てしまった当時のことが、現在のクラブの経営方針にも影響しているからである。ラウバル会長と最高経営責任者(CEO)のハンス・ヨアヒム・ヴァツケは投資家たちに「二度と借金はしない」と約束し、実際に今日まで、その誓いは破られていない。当時のドルトムントはバイエルンを出し抜こうとして高い代価を払っただけでなく、命を落とす寸前にまで立たされたのだから。

CL王者がたどった苦難

1996-1997シーズンはユベントスを下してCLを制した 【Getty Images】

 97年のミュンヘン、オリンピア・シュタディオンで、オットマー・ヒッツフェルト監督率いるスター軍団のドルトムントがイタリアの強豪ユベントスを相手にCL優勝を決めたときは、まだ平和だった。当時、ラウバルの前任者だったゲルト・ニーバウム会長も「私たちは欧州のナンバーワンだ」と胸を張っていたものだ。しかし、この成功は高額な金で買われたものだった。マティアス・ザマー、シュテファン・ロイター、アンドレアス・メラー、カール・ハインツ・リードレ(いずれも元ドイツ代表)、パウロ・ソウザ(元ポルトガル代表)といったスター選手の給料は異常に高かったのだ。

 一方、ドルトムントに出し抜かれて屈辱を味わったバイエルンはザマーやロイターといった選手たちの引き抜きを試みた。彼らは94-95シーズン、そして95-96シーズンでブンデスリーガを連覇していたドルトムントが国内で新たにナンバーワンの座に就くのが許せなかったのだ。
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