錦織圭が紡ぎ始めた新たなストーリー フェデラーばりの「30代で完全復活」へ
十分な試合数もこなせないまま迎えた全仏オープンは2回戦敗退。それでも錦織は「いい時の自分」に向かって、ここから一歩一歩進んでいく決意だ 【Getty Images】
今の錦織にエバンスは嫌な相手だった
テニスはまさに今がその時だ。エキサイティングな日常はまだほとんど取り戻せていないが、少なくとも世界最高峰のグランドスラムで、連日試合が行われている。
9月27日に開幕した全仏オープンでは、わずか1000人の制限付きとはいえ観客が帰ってきた。ナイスプレーのあとに聞こえる歓声は、本来の10分の1のボリュームにさえ満たないにもかかわらず十分に刺激的で、半年ぶりどころではない懐かしさがこみ上げる。
そんな光景の中に、13カ月ぶりにグランドスラムのコートに立つ錦織圭を見ることができたのは二重の喜びだった。錦織は、昨夏に負った右肘のケガとその後のリハビリの辛さ、長いブランクで感じた不安などをことさら感情的に語るわけでもなく、また8月の新型コロナウイルス感染の不運を恨むわけでも、この場所に戻って来られた感激を饒舌に表現するわけでもない。
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