連載:遠藤保仁 632分の1の真実

「ヤットさんってやっぱりすごいな」 東口が忘れられない、優勝を決めた試合

二宮寿朗
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第2回

キックオフ前の写真撮影もソーシャルディスタンスを保って行われた 【(C)GAMBA OSAKA】

 難しくはないが、雰囲気はまるで違う。

 それが遠藤保仁のリモートマッチにおける率直な印象である。

 再開前の練習試合でそのイメージは大体つかんできたつもり。

「お客さんがいてもいなくても、試合に臨むにあたっての気持ちは変わらないですよ。ただ、どうしてもテンポは遅くなりますよね。そうなってくるとデカいのが先制点。絶対的に優位になるっていうのは感じていましたから。ホーム、アウェーがなくなる。特にサッカー専用スタジアムを持っているところはだいぶ違うんじゃないですか。いつも圧を与えているのに、与えられないわけですから」

 元々、先行すれば有利に立つスポーツではある。スタンドの「圧」がホームチームを奮い立たせ、アウェーチームをひるませる。先に点を取れば優位に立ち、逆に失っても挽回できる。しかしその利を享受できないとなると、流れをつかみ損ねてしまえばそのままスッと流れてしまう怖さがあるということ。

 しかし遠藤からすれば「難しくはない」。いつもどおり、地に足がついた戦いができれば問題ないのだ、と。

 悠然に、自然に。

 いつものヤットがそこにいる。

無観客は「難しくはない」が……

 ファーストタッチは開始から28秒。自陣右サイドで味方がボールを回収し、パスを受けた遠藤は左後方に控えるキム・ヨングォンに渡す。4分にはハーフウェーライン、宇佐美貴史が戻してきたボールをワンタッチでアデミウソンに送って前を向かせている。

 背番号7から発信される指針。

 しかし次第にチームがロングボールを選択する場面が増えていく。そこからチャンスになっていた背景はあるものの、ロング一辺倒になってくると話は別だ。ジャブからの組み立てを取りやめて、大振りのパンチばかりになってしまってはセレッソ大阪の堅守は崩れない。

 無観客は「難しくはない」が、セレッソは“簡単ではない”。

 遠藤はこう語っている。
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著者プロフィール

1972年、愛媛県生まれ。日本大学卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社し、格闘技 、ラグビー、ボクシング、サッカーなどを担当。退社後、文藝春秋「Number」の編集者を経て独立。 様々な現場取材で培った観察眼と対象に迫る確かな筆致には定評がある。著書に「 松田直樹を忘れない」(三栄書房)、「中村俊輔 サッカー覚書」(文藝春秋、共著)「 鉄人の思考法〜1980年生まれ、戦い続けるアスリート」(集英社)など。スポーツサイト「SPOAL(スポール)」編集長。

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