フットボールの祖国に愛された吉田麻也 その人柄とセインツでの功績を振り返る
7月1日に8年間所属したサウサンプトンと契約満了を迎えた吉田麻也。プレミアリーグで日本人最多となる154試合に出場した。 【写真:ロイター/アフロ】
サウサンプトンで出場を続ける難しさ
加えてサウサンプトンは、若い選手を育成し、高額でビッグクラブに売却することを得意とするクラブだ。現在リバプールに所属するセネガル代表FWサディオ・マネや、オランダ代表DFフィルジル・ファンダイクなど、挙げ出せばきりがないほどだ。シーズンごとに主力が引き抜かれ、新たに才能豊かな若手が加わり、大幅にメンバーが変わる。それどころか、監督すら毎年のように変わっている。実際にプレーした7年半で吉田は、7人もの監督の下でプレーをした。
現在リバプールに所属するセネガル代表FWサディオ・マネ(写真左)や、オランダ代表DFフィルジル・ファンダイクも、かつては吉田と共にサウサンプトンでプレーをした 【写真:ロイター/アフロ】
そんな難しい状況でも、プレミアリーグで日本人最多となる154試合に出場したのだ。サッカー界では、どうしても得点など攻撃面で目立つプレーばかりが注目されがちだが、日本人にとって簡単ではないCBというポジションで、かつ環境変化の多いサウサンプトンで長くサバイブした事実は、日本サッカー界において間違いなく大きな偉業なのである。
イタリアへローン移籍、そして退団へ…
足りないプレーがあれば、努力と工夫で改善し、時には本職ではないサイドバックでも出場するなど、あらゆる手段を講じて監督の信頼を得てきた吉田だったが、さすがに自身の年齢を若返らせることはできない。
結果、2020年1月の移籍市場で、イタリアのサンプドリアに半年間ローン移籍することになる。契約終了は2020年夏のため、このローン移籍は事実上の退団だった。
とはいえ、吉田にとってサウサンプトンは長く過ごした土地だ。正式に退団する前に、関わった多くの人たちにあいさつなどはするつもりだったはずだ。
しかしそんな中、2月頃から新型コロナウイルスの猛威が世界中を襲った。欧州サッカーの各リーグは中断を余儀なくされ、5〜6月に再開。結果、移動制限もある上に、イタリアでリーグ戦もあるため、イングランドに戻れないまま吉田はサウサンプトンとの契約終了を迎えることになる。
こうして迎えた契約満了日の翌日の7月1日、吉田は、自身のTwitterを通じて英語で以下の内容を発信した。
「本日、サウサンプトンとの契約が公式に終了しました。一つ後悔していることがあるすれば、チームメイト、スタッフ、友人、そしてファンの皆さんへ、きちんと別れのあいさつができなかったことです。もちろん、別れもフットボールの一部。それでも『ともに歩んできた』ことは忘れません。いつか再会できることを楽しみしています。ありがとう」