【動画+解説で知る!パラスポーツ】これがボッチャだ!

チーム・協会

【©parasapo】

「パラスポーツのことを知りたい!」
そんな方、まずはここから。動画を見て、合わせてこの記事を読めば、パラスポーツの面白さがバッチリわかるはず。

今回は「ボッチャ」編。動画に登場するのは、日本のボッチャ界を引っ張るお二人、杉村英孝選手と廣瀬隆喜選手!日本ボッチャ協会の新井大基さんの細かすぎる解説と共にお送りします!

《まずは、動画をみてみよう!》

今回解説いただくのはこちらの方です!

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新井大基(あらい・だいき)さん
ボッチャとの出会いは、大学時代のヘルパーのアルバイトの時でした。生活のサポートを通じて、当時の日本1位の選手と知り合い、競技アシスタント(現ランプオペレーター)に誘われたのがきっかけで競技に参加することになりました。 日本選手権、世界選手権、アジアパラなど多くの大会に帯同させていただき、ボッチャの魅力にどっぷりとはまっていきました。現在は日本ボッチャ協会普及振興部として競技普及を担当しています。

赤青に分かれ、白いボールを目指して投げる!

「地上のカーリング」ともいわれるスポーツ、ボッチャ。
個人、もしくはチームで対戦。赤と青に分かれ、ジャックボールと呼ばれる白い目標球に向かって、それぞれの色のボールを投げる。ジャックボールにより近いボールを投げた選手に得点が入り、最後に得点が多い方が勝利!

ボールの大きさはテニスボールと同じくらいのサイズ。持ち球の数は赤青それぞれ6球 【©parasapo】

コートの大きさは、だいたいバドミントンのコートと同じくらい 【©parasapo】

新井さん:ボッチャには自力で投球できない選手のためのクラスもあり、BC3クラスと呼ばれています。BC3クラスでは、選手はランプオペレーターとパートナーとなり、2人1組で競技に参加します。また、自力での投球が難しいため、ランプという道具を使用してプレーをします。 狙いやランプの位置、ボールまでの距離などを選手から伝え、セッティングをするROと、指示を伝え、自らボールを押しリリースをする選手という役割に分かれプレーをしていきます。
さらに、フィジカル的な要素がないBC3では筋力によりボールの強弱をコントロールできないため、使用するボールの種類を選択して強弱をつけます。相手のボールを弾き飛ばしたいときは硬いボール、ジャックボールに近づけたいときは柔らかいボールなど、状況、戦術、技などによりボールを選択してプレーをします。しかし、ボールは6球ずつと決まっているので、試合途中で用途に適したボールが使えない場面もあります。そこをコントロールしながら戦術や戦略を考えていくのが、BC3クラスの面白さや魅力なのです。

白いボールにより近いボールの色の選手が得点

試合は、4回もしくは6回の「エンド」に分かれている。今回の動画は4エンド制。

まずエンドの初めにジャックボールを投げ、その後1球ずつ投げる。
投げる度に審判が距離を見て、ジャックボールからより遠いボールの色の選手が次のボールを投げる。

第1エンドで1球ずつ投げ合ったこの状態。青の方が赤よりもジャックボール(白)に近いので、次に投球するのは赤! 【©parasapo】

ボールの距離が見た目でははっきりわからないときは、コンパスのような道具・キャリパーを使ってどちらが近いかを判定!

どちらが近いかわかりにくいときは、器具を使って審判が確認 【©parasapo】

どちらも6球を投げ切ったら、そのエンドは終了。点数を数える。
ジャックボールに一番近いボールの色に得点が入る。

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この動画の第1エンドは、ジャックボールに一番近い青のボールの内側に、赤のボールが2つ。赤に2点が入る!

新井さん:ジャックボールは相手から遠く、自分から近いエリアに配置することが一般的。セオリーを意識してあえて相手から近い位置に投げることも戦略の一つです。置く位置によって、スローイングボックスの使い方や、見える角度も変わってくるので試合を大きく左右する重要なプレーです!
また、ボッチャの審判は細かい計測もすべて審判員によって手作業で行われます。試合の重要局面では手が震えることも⁈ 正確なジャッジで試合を支える審判にも注目です!

先の先を読む!究極の頭脳戦

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ボッチャの魅力は、頭脳戦!
相手の2手3手先を読み、自分の勝利に向かって戦略を組み立てる。

ポイントは、既に投げられた相手と自分のボールの位置、目標となるジャックボールの位置が動くこと。ただボールをジャックボールに近づけるだけでなく、ボールをぶつけて相手の邪魔なボールをよけたり、既にある自分のボールを押してジャックボールに近づけたりなど、色々な方法がある。

動画の中で、杉村選手は第2エンドの最後の2投をどんな意図で投げたのか……みてみよう!

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まずは、「ヒット」!
一番近いボールは、ジャックボールにくっついた赤いボール。これが邪魔をしている。
なので、青はボールを投げてぶつけ、この赤いボールを横に動かす!そうすれば、青はジャックボールに向かって直接投げることができるようになる。

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そして、最後の1投で「プッシュ」!
赤を動かしたおかげで、青がジャックボールを直接ねらえるようになった。
杉村選手はただ青をジャックに近づけるだけでなく、ジャックボールを投げたボールで押して、奥に動かそうとしている!
ジャックボールが動いた先には……青のボールが!大量得点のチャンスというわけだ。

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実際の投球も、ねらい通りに成功!ジャックボールが動いて、ジャックに一番近い赤のボールの内側に、青のボールが3個。杉村選手が3点を獲得!
新井さん:自分のボールを近づけるためには、相手のボールを弾くことも重要。 弾いては近づけの攻防の中でどこにボールが残っているか、ジャックの周りのボールも見逃せないです!失敗だと思った投球が最後には得点になっているかも!相手の考えを見通す、先読みの力が大切なんです。ジャックボールの正面だけでなく360°すべてがフィールド。ボールの残し方や、相手の投球ラインにいかにしてボールを配置できるか、6球すべてを使った攻防が醍醐味です!

スーパーショット「ライジング」

ボッチャのトップ選手は、投球技術もすごい!
ジャックボールにボールがいくつもくっついている…というときに、こんな投球が繰り出されることがある。
その名も、「ライジング」!

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廣瀬選手が第3エンドで投げた赤のボールは、ころころと転がって……

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ジャックボールの前にあるボールの上に乗り上げ、ジャックにぴったりとくっついてフィニッシュ!

大技が決まり、廣瀬選手もおたけびを上げる! 【©parasapo】

新井さん:(動画では廣瀬選手がライジングを披露しましたが)杉村選手の代名詞ともいえる「スギムライジング」。 ボールを上に乗せるスキルは、トップランカーでも難しい高等技術です。ボールを乗せるための土台作りまで意識したプレーが必要で、最後はピンポイントで狙う技術、ボールの勢い。すべてがかみ合わないとできない大技です。1点を争う重要な局面で、同点、逆転を演出する大技にも注目してください。

真剣勝負の緊張感と高揚感!

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各エンドには制限時間がある。選手は相手との読み合いを続けながら、プレッシャーのかかる中で時間内に正確な投球をしなければならない。ねらった1投が決まったときの高揚感はすごい!
新井さん:投球前の静けさはボッチャの特徴。投球後には爆発的な盛り上がりが会場を包みます。静と歓声の中でプレーする選手は相当なプレッシャーと戦っており、ミリ単位で勝敗が決まるポッチャでは、投球前のルーティンを決め、プレッシャーの中、自分を落ち着かせる選手もいます。投球時間内の選手の行動にも注目してみてみるとさらにポッチャが面白くなるかもしれません。

ボッチャの面白さをもっともっと味わおう!

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技術、正確性が求められる、とても奥の深いスポーツ、ボッチャ。年齢や体格、障がいのあるなしに関係なく楽しめるのも魅力のひとつ。国内では、障がいの有無に関わらず出場できる大会もある!もっとボッチャについて調べて、体験して、試合もみてみよう!
新井さん:ボッチャは戦略と戦術のスポーツ。投げたボールがピタリとジャックボールに近づくのは当たり前。その中でどの位置に近づけたのか、また、どのように弾いたかで、後半に使える戦術のパターンが大きく変わります。ターゲット競技と違い、6球をフルに活用した攻防に注目し、観て、プレーしていただけるとボッチャの魅力がさらに高まると思います。また、団体戦では選手同士のコミュニケーションも重要! 少ない球数で仲間を信頼して任され、任す。そんなチームワークにも注目です。

<ご出演いただいた皆さま、ありがとうございました!(敬称略)>
杉村英孝 廣瀬隆喜 村上光輝

<絵本でもボッチャのことがわかる!>
日本ボッチャ協会の公式マスコット「ボッチャマン」が登場する絵本、『ボッチャマンはきみだ!』が登場!合わせて読んでみては?

【photo by Haruo Wanibe】

text by parasapo

※本記事はパラサポWEBに2024年8月に掲載されたものです。
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著者プロフィール

日本財団パラスポーツサポートセンター(パラサポ)が運営するパラスポーツの総合サイトです。パラスポーツの最新ニュースやコラム、競技・選手の紹介、大会・イベントの日程を広く、深く、お届けします。

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