2025年の東京ヤクルトスワローズのポジション別デプスチャートを作って野手陣の選手起用を予想してみた

note
チーム・協会
【これはnoteに投稿されたskaviosa01さんによる記事です。】
こんにちは。中藤練です。
某SNSのAIに「まるで、チームのキープレーヤーであるかのように情報を集め、分析し、ファンとしてチームの成功を願う姿勢が見て取れます」と評されました。「チームのキープレイヤーのように振る舞うファン」とはただの迷惑な人では?
新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて、我らが東京ヤクルトスワローズは今オフ、退団選手17名、入団選手16名(育成選手含む)となかなか活発な動きをしています。
獲得した選手を見てもバウマン、ランバートというMLBでの実績がある投手や、楽天イーグルスで長年に渡って活躍してきた茂木など、近年にないくらいのお金のかけ方をしており、これはやはりフロントとしても「村上がいるうちにもう一度優勝したい」ということなのでしょう。

新外国人投手の獲得(…あるよね?)やトレードなど、これからまだもう少し動きがあるかとは思いますが、とりあえず野手の来季の陣容は大体は見えてきているので、「2025年の東京ヤクルトスワローズの各ポジションの編成はどんな風になっているんだろう!」というのが本記事の趣旨となります。

この記事を書くにあたり、以下のような資料を各ポジションごとに作成してみました。

例:キャッチャー陣のデプス 【skaviosa01】

昨年の出場実績(途中出場も含む)を踏まえて作った各ポジションごとのデプスチャート(年齢分布表)になります。名前の欄が黄色の選手は新加入選手となります。

デプスは昨年の1、2軍公式戦とフェニックスリーグの出場実績を基に作っていて、1試合でもそのポジションでの出場があれば名前を入れています。なので時々「この選手がなんでこのポジションのデプスにいるんだ」みたいことが発生していて、例えば澤井は7/14と8/2の2軍戦にてセンターを守った実績があるのでセンターのデプスにも名前が入っています。そのあたりはご愛敬ということで大目に見ていただきたいです。
また、新人選手や報道で秋季キャンプなどでコンバートの話があった選手については、私が勝手に予想して各ポジションに入れています。

年齢は「2025年に何歳になるのか」で表に記載しています。
例えば橋本は学年で見ると村上の1年後輩になりますが、村上は早生まれなので「2025年に何歳になるのか」で考えると同じ25歳となります。
学年でデプスを分けているサイトもありますが、NPBは3月末にシーズンが始まって11月頭には日本シリーズまで終わる「年度」という概念を無視したカレンダーになっているので、「年度」や「学年」は無視してもいいのかなと思った次第です。

なお、各ポジションの出場試合数についてなのですが、2軍の外野は一部私が手集計で数えておりますので間違えているところが恐らくあります。なので2軍の外野の各ポジションの出場試合数については目安程度で見ていただきますと幸いです。

前置きがかなり長くなってしまいましたが、毎度の通り全体的におおらかな気持ちで読んでいただけますと大変ありがたいです。

キャッチャー

候補選手とデプス

【skaviosa01】

キャッチャー陣のデプスで特徴的なのは23歳のところだけで内山、中川、矢野と3人も支配下登録の選手がいるところでしょう。
昨シーズンの開幕前まではこの年齢のところには内山しかいなかったのですが、昨年の途中で中川が加入し、更にドラフトで矢野が指名され、昨年だけでこの年代のキャッチャーが2名も増えたことになります。

中川についてはキャッチャー陣に怪我が続出したことによるシーズン途中の補強ということで選択肢がなかったところもありますが、ドラフトで既に同じ年齢の選手が2名もいるところに重ねて矢野を指名してきたというのは何らかの事情を感じます。某雑誌にて橿淵デスクが「年齢層と優先順位を考えて5位で矢野を指名した」というコメントを残しており、もしかしたら内山が腰の手術を経て腰の負担が比較的少ない他のポジションにコンバートされるかもしれないという可能性を考慮して、この年齢のキャッチャーの層を厚くしてきたのかもしれません。

幸い、内山の腰の手術は成功して経過も良さそうで、本人も「キャッチャーのレギュラーはこれまでも目指してきたところ」とキャッチャーのポジションを続けることに意欲を見せていたので、いったんは内山をキャッチャー陣のひとりとして数えてもいいかと思いますが、春のキャンプやオープン戦でどのような起用になるのかは注目していきたいです。

キャッチャー陣の人数は9名と昨年と同じではありますが、昨年限りでの退団となった西田とフェリペはコンディション面でコンスタントにキャッチャーとして出場するのが難しかったのかなというところがあり、実質的には1.5人増くらいで考えてしまっていいかもしれません。

1軍:中村がレギュラー格 2番手争いが熾烈

昨年の出場実績を見ていくと1軍は最年長の中村が94試合と最も試合に出ており、それに続くのは中村の次に年長である松本直樹で55試合、三番手は内山で17試合となっていました。2軍では橋本が73試合、鈴木が47試合、途中加入の中川が17試合に出場しています。

順当にいけば今年も1軍のレギュラーは中村でしょう。2番手争いは昨シーズン飛躍を遂げた松本直樹が軸になるでしょうが、フェニックスリーグで6試合に出場し怪我からの回復をアピールした古賀、腰の手術を経て完全復活が期待される内山あたりとキャンプやオープン戦から激しい競争が繰り広げられそうです。

昨シーズン、2軍をキャッチャーとしても打線の中軸としても支えた橋本ですが、「中村に次ぐ2番手」と考えると他の候補の選手たちよりも守備の面でビハインドがある感じが拭えません。
秋季キャンプから練習しているサードの守備がある程度形になって、オープン戦で自慢の打棒をアピールできれば、〈内外野のユーティリティ〉兼〈左の代打〉兼〈第3捕手〉として開幕1軍に入り込んでくるかもといったところではないでしょうか。

2軍:矢野と鈴木が起用の軸に?

2軍では昨年高卒ルーキーながら1軍初出場&初ヒットを放った鈴木と、昨年のドラフトで5位で指名された矢野の2人が一定数出場機会を得ることができると予想します。

鈴木は既に昨年2軍で47試合出場したという実績があり、順当にいけば今年はより試合出場数を伸ばすことになるでしょう。
昨年のシーズン序盤はブロッキングや盗塁阻止といった守備面に課題がありましたが、シーズンが進んでいくにつれてメキメキと上達していき、シーズン終盤は安心して見れるようになっていました。シーズン通算の盗塁阻止率が.386、5月以降は.478(※筆者集計)と、既にイースタン屈指の強肩キャッチャーであると言ってしまっていいでしょう。
打者としては、4月には戸田打線の中軸を打つ場面もありましたがシーズンが進んでいくにつれて結果が出なくなり、最終的な2軍打率は.196とプロの壁にぶつかりました。新人合同自主トレのフリーバッティングにて戸田のバックスクリーンのボードの最上部に当てるくらいにはボールを飛ばす力があるので、どうにか今年は確実性を上げていって欲しいです。

また、矢野についてはルーキーとはいえ23歳という年齢や、昨年のドラフト時点で「今から2軍に混ぜても問題なく試合に出場できるくらいの守備のうまさ」という前評判もあることから、1年目からある程度の出場機会を与えられるでしょう。打撃面で通用するかどうかは別として、守備で破綻する可能性が低いというのは大事なポイントです。
不安があるとすれば独立リーグの1年目で肩を、3年目で肘を怪我していることでしょうか。まずは1年間コンディションに問題なくプロの生活を乗り切ってもらいたいです。

この2人の他に1軍枠から外れたキャッチャーが入ってきて、だいたいその3人で回すことになると思います。

中川は昨年なかなか守備でも打撃でもアピールができず、フェニックスリーグでも古賀・橋本・鈴木がキャッチャーとして5試合以上出ている一方で中川は2試合だけと明らかにキャッチャーとしての序列が落ちています。まずは持ち味である打撃でアピールして、出場機会を増やしていきたいところです。

松本龍之介はキャッチャーとしては珍しく足の速さがアピールポイントの選手になります。昨年のドラフトで自身を含めてキャッチャーを2名指名したので、キャッチャーの人数としては足りている感もあり、1年目は高校時代に経験のある外野とキャッチャーで同じくらいの出場試合数になるかもしれません。今年で20歳とまだまだ若い選手なので、ここから全ての面で成長し、2~3年後に支配下登録されることを目指して頑張ってほしいです。

去年の事態を反省して今年はキャッチャーとして出場できる選手をある程度揃えてきたように見えるので、昨年のようにこのポジションだけ怪我人が続出するような事態さえなければ、キャッチャーは2軍でも競争力のあるポジションになりそうです。


ファースト

候補選手とデプス

【skaviosa01】

ファースト候補としては昨年ファーストを経験した選手が13名+昨年のドラフトで指名された根岸を入れて14名でデプスを作ってみました。最年長は38歳の川端になりますが川端は年齢的にファーストで出る機会はそこまでなく、実質オスナ以下の13名がポジション争いをすることになるでしょう。
デプスは30歳以上のベテラン勢、20代中盤の中堅勢が分厚く、23歳以下の若手の人数が少ないように感じます。ただ、ファーストは助っ人外国人が入ってきやすいところなので、あまりドラフトでファーストをメインポジションにしている選手を指名することがなく、若手といわれる年齢層が薄くなってしまうのは仕方ないところがあると思います。

1軍:オスナがレギュラー格だが、茂木の加入により競争も

ファーストは、昨シーズン守備についた選手は多いですが、ファーストをメインのポジションにしている選手は少なく、他にメインのポジションを持っている選手がチーム事情によりファーストを経験したという場合が多いです。

昨年の出場実績を見ると1軍についてはオスナが141試合とダントツの数字を残しています。SNS上ではなんやかんや言われておりますが、恐らく今年もファーストの一番手はオスナになるでしょう。

今オフに獲得した茂木は、昨年は1軍でも2軍でもファーストをメインに出場しており、スワローズでも同じような使い方をされるのであればオスナとファーストのスタメンを争う有力なライバルとなりえます。
2021年のオフにヘルニアの手術をしてからはなかなか目立った成績を残せていませんでしたが、昨年は代打として打率.480(25打数12安打)、出塁率.519と異次元の数字を残しています。交流戦ではDeNAの伊勢や阪神のゲラ、今年から巨人に入団したライデル・マルティネスとセリーグが誇る素晴らしいセットアッパーたちからヒットを放っており、かなり早い段階でセリーグの配球に慣れる素質を持っていそうです。
パリーグで三度の二桁ホームランを記録したことがある打棒が完全復活すれば、チームにとって強力な補強となることでしょう。

他の1軍のファースト候補としては、宮本丈や北村拓己、増田、北村恵吾、赤羽といった選手でしょうか。どの選手も他にメインのポジションを持っている選手になりますが、とにかくファーストは打てる選手が入るポジションになるので、オスナや茂木以上に打撃で結果を残す選手が出てくれば、その選手が起用されることになるはずです。

2軍:昨年のレギュラー格が抜け、ルーキー根岸にチャンスあり 

オスナ、茂木と起用の軸になるだろう選手が見えている1軍のファーストと違って、2軍のファーストについては明確な軸が見えてこない状況です。これは、昨年の2軍のファーストはその多くを三ツ俣(47試合)とフェリペ(41試合)で回していて、その二人ともが退団したからになります。

昨年の2軍での出場実績だと、宮本が22試合、太田が12試合、増田が10試合、北村恵吾が24試合と、このあたりの選手がファーストでの出場が多かった選手になります。この中で2軍に落ちている選手がファーストでの出場を増やしていくことになるでしょう。

特に北村恵吾はフェニックスリーグでファーストとして5試合出場しており、他の選手より多くファーストで使われました。北村恵吾は来年が大卒3年目ということで、そろそろ1軍で勝負することが求められる年齢にはなっていますが、もし2軍生活が長くなるということになればファーストでの起用が多くなりそうです。

もうひとり、2軍のファーストとして出場機会を掴みそうなのは昨年の育成ドラフト1位で指名された根岸です。スカウトコメントではバッティング技術が高く評価されていますが、ドラフト直前に根岸を特集した記事では根岸自身が「ファーストの守備が一番のアピールポイント」とコメントしており、本人がこのポジションにこだわりがあることがわかります。
根岸はアメリカの大学から加入した選手にはなりますが今年で25歳と先ほど名前をあげた北村恵吾と同い年であり、1年目からある程度の結果が求められるます。ファーストメインにするのであれば、できれば1年目から2軍で打率.280以上、ホームラン10本以上期待したいところです。
根岸が早くから2軍の投手の球に適応できるようであれば、2軍のファーストはほぼ根岸がつとめるようなことになってもおかしくありません。

前述したようにファーストは助っ人外国人が入ってきやすいポジションで、実際今のスワローズにはオスナというここ数年結果を残し続けている選手がおり、日本人選手がファーストをメインポジションにして勝負していくのはなかなか大変だと思います。
ただ、ファーストに日本人選手を使えるようになれば投手陣にもう一人助っ人外国人を使えるようになるわけで、オスナとの契約が切れる3年後をひとつの目途にして、1軍で活躍できる選手になっているとチーム的には大変ありがたいことでしょう。

他には、太田や中川、フェニックスリーグでファーストに挑戦していた髙野、楽天から加入した澤野も昨年2軍でファーストでの試合出場が11試合あり、このあたりの選手がチーム状況や試合の流れによってはファーストに入ることになりそうです。

昨年の2軍のファーストは、メインのポジションを他に持つ選手がチーム事情によって仕方なくつとめる「穴埋め」的な起用が多かったことが否めませんでした。三ツ俣やフェリペといった選手に代わって北村恵吾や根岸といった選手がファーストをつとめることで、戸田の打線に厚みが出ることを期待したいです。


セカンド

候補選手とデプス

【skaviosa01】

セカンドは今年33歳になる山田を最年長として、25歳前後の選手が多いデプスになっています。ただ、選手の名前を見ていくと二遊間をメインにしているという選手は案外少なくて、内外野のユーティリティになっている選手の名前が多く入ってきている印象があります。
小森が抜けたことで22歳以下の選手が昨年のドラフトで指名された高卒の田中しかいなくなり、先の話にはなってしまいますが今年のドラフトで二遊間の選手はひとつのポイントになるかもしれません。

1軍:山田が離脱したときの穴を埋めるのは誰か

スワローズのセカンドといえばここ10年間、「山田哲人」という偉大な存在が君臨してきました。もちろん今年も山田がレギュラー格になるでしょうが、ここ数年は下半身のコンディション面の不良で離脱を繰り返しており、山田が離脱したときに誰が入るのかも重要になってくるポジションになります。

山田に次ぐ存在として、今季から加入となる茂木に期待がかかる部分が大きいでしょう。ただ、茂木は前述の通りヘルニアの手術を受けた経験があり、昨季から挑戦しているセカンドも1軍で5試合つとめただけと、セカンドの守備がどれくらいできるのかは未知数です。サードの守備の指標はいいので捕球や送球といった面では問題ないとは思いますが、守備範囲がどうかといったところでしょうか。

茂木と同じ内野のユーティリティで、同じ右打ちの北村拓己の奮起にも期待したいところです。昨年はなかなか1軍で持ち味をアピールできませんでしたが、スワローズに移籍して2年目となる今年こそセカンドの二番手のポジションを確立させたいところでしょう。
茂木の加入により今シーズンにかける思いは人並み外れたものがあると思います。ここの競争に負けてしまうと2軍生活が長くなってしまうかもしれないので、今年は彼の真価が発揮できるシーズンになるよう、声援を送りたいですね。

昨年の1軍の出場試合数だけ見ると、ポスト山田に一番近づいているのは武岡でしょう。昨シーズン、山田のコンディションが上がり切らないところで武岡が試合終盤に守備固めとして出場する機会が増え、1軍のセカンドとして山田に次ぐ71試合に出場しました。
守備関連の指標の数字は意外に渋いのですが、終盤に守備固めとして起用される程度には首脳陣から守備の評価はあるようで、あとはどれくらい打てるかです。”山田並み”はさすがに難しいと思いますが、安定して打率が2割後半打てるようになれば、より山田の後のセカンドのレギュラーに近づくことでしょう。

赤羽もポスト山田の有力な候補です。昨年は1軍で打撃のコツを掴みかけたかのように見えたところで不運な形で怪我をしてしまい、その後のシーズンを棒に振ってしまった訳ですが、フェニックスリーグで実戦復帰しているので春季キャンプからは問題なく参加できそうです。
赤羽に不安要素があるとすれば安定感でしょうか。昨年こそ印象深いバッティングを見せてくれましたが、プロ生活通じて1軍でも2軍でも打率が.250を超えてシーズンを終えたことがありません。調子の波がかなり激しい選手の印象があります。
長打力には前から定評がある選手で、ここ数年はかなり三振率も改善してきているので、今年の飛躍を期待したい選手のひとりです。

2軍:小森が抜けて混沌状態

2軍のセカンドについては、昨年60試合と最もセカンドで出場した小森が今年も軸として起用されると予想していたのですが、茂木選手の人的補償で楽天に行くということになり一気に状況が混沌としてきまいた。

昨年の出場実績を見ると、伊藤や今オフに楽天から加入した澤野あたりがセカンドを多くこなしていますが、現状の選手層を踏まえるに伊藤はショートがメインになりそうですし、育成の澤野が一番出るような状況はあまりよろしくはないでしょう。

無難にいけば2軍のセカンドは宮本丈や北村拓己、増田、赤羽、武岡といった面々の内、1軍の枠に入れなかった人が日替わりで出てくるような形になるでしょうが、個人的な希望としては昨年のドラフトで指名された田中が出てくることを期待したいです。
焦る必要は全くありませんが、183cm/83kgと高卒にしては体格がかなりできあがっており、チーム事情によっては割と早めに2軍の試合に出場するようになるかもしれません。


サード

候補選手とデプス 

【skaviosa01】

サードのデプスの特徴は、25歳以下の選手が多いことです。また、ファーストやセカンドと違って、22歳以下にも選手が何人かいます。
これは間違いなく村上の影響でしょう。プロ入団後10年も経たずに球界を代表するスラッガーとなった若き大打者がいたことでそれまでサードを守っていた歳上の選手がほぼ一掃され、さらにここ数年はポスト村上を見据えてサードを守る選手をドラフトで定期的に指名してきたので、他のポジションと比べて候補選手の年齢が若くなっています。

1軍:今年もサードは村上宗隆

今年も東京ヤクルトスワローズのサードのレギュラーが村上であることを疑う人は少ないでしょう。2025年をNPBでの一つの区切りとしてMLBに旅立とうとしているスワローズの至宝が今シーズンどのような成績を残してくれるのか、大変楽しみです。

村上は余程のことがない限りはほぼフル出場でサードを守るので、なかなか1軍で他の選手がサードを守る機会がありません。昨年、村上の次に1軍でサードを守った回数が多かったのは北村拓己ですが、19試合に留まりました。今年も恐らくは1軍のサードを村上以外の選手が守る機会はそこまで多くないでしょう。

それでもあえてサードの二番手候補をあげるのであれば、やはり茂木に期待したいところです。茂木は2024年のシーズンでは1軍でも2軍でもサードを守っておらず、公式戦でサードを守った記録は2023年までさかのぼることになりますが、2021年のサードの守備の指標はパリーグで最も高く、リーグ屈指のサードの名手として評価している人もいました。今年も試合展開によっては村上をファーストに回す場面が出てくるはずで、代わりにサードに入ったときに往年のサードの守備を見せることができれば、チームの中でひとつ立ち位置を確立することになるでしょう。

そして「サードの二番手」という立ち位置でも茂木のライバルとなりそうなのが北村拓己です。数は少ないですが昨年は1軍で村上の次にサードを守りました。右打者としても内野手としても茂木に負けないところを見せてほしいです。

他に、ポスト村上として赤羽に期待を寄せる方も多いと思います。ただ赤羽はピッチャーとキャッチャー以外のどこでも守れる選手なので、今シーズンは村上のいるサードではなく他のポジションで出場する機会が多くなるのではないかと思います。

茂木が加入したことで、北村拓己や赤羽といった〈右打者〉で〈内野のユーティリティ〉という属性を持つ選手たちはかなりの危機感を持って今シーズンに臨むことになるでしょう。その危機感がうまく競争意識に代わって、各選手が大きくレベルアップしてもらいたいです。

2軍:どうなる西村瑠伊斗?

ここ2年間、「ポスト村上」となるべく2軍でサードとして多くの出場機会を与えられてきたのが西村になります。昨年も2軍のサードとしてチームで最も出場機会を与えられているのですが、実はシーズン終盤は外野手としての出場も多く、台湾のWLでは(チーム事情もあったのでしょうが)ほぼ外野手として活動し、何故かいくつもファインプレーを見せてくれました。
サードの守備も向上はしてきていますが、1軍で出せるかと言われると微妙で、いっそ外野手として活動したほうが西村の長所であるバッティングも伸びるのではないかと素人の私なんかは思ってしまうのですが、他に2軍でサードを守れそうな選手を数えてみると案外少なくて、このあたりはシーズンが始まってみないとどうにもわからないところになります。
とにもかくにも西村は今年こそ2軍で結果を残したいところです。昨年はイースタンで打率.226、ホームラン0本、OPS.538となかなか思ったような結果を残せませんでしたが、台湾WLでは(相変わらず三振数は多いものの)打率.283、ホームラン1本、OPS.824と評価できる結果を残しており、この調子で今年こそ戸田の中軸としての活躍を期待したいです。

昨年の2軍で西村の次にサードで出場機会を得たのは髙野です。
全体的に発展途上という感じで、打撃でも守備でもなかなか結果を残せず、高卒1年目は分厚いプロの壁を感じるシーズンになりました。
思い切りのいいスイングには見どころがありますし、見た目に反して身体能力が高くて走塁面で意外な才能を発揮するなど光るところがあり、できれば長い目で成長を見守りたい選手です。
今年は全体的な確実性を向上させていき、昨年よりも多くの出場機会を得て、打率、三振率、失策数などの項目が良化していけばいいなと思います。

西村、髙野と昨年のサードでの出場機会が多かった選手を紹介してきましたが、今年サードでの出場機会が増えそうな選手としては、昨年の秋季キャンプからサードの練習を始めている橋本がいます。
本職はキャッチャーになりますが、昨年ドラフトで2歳下の矢野が支配下で指名され、6歳下には若干19歳にして既にキャッチャーとしての能力を高く評価されている鈴木がいることを踏まえると、2軍でも昨年並みにキャッチャーとしての出場回数が貰えるかどうかは不透明で、そこで持ち味のパワフルな打撃を生かすためにサードでの出場が増えていくのではないでしょうか。
昨年の橋本は2軍で打率.269、ホームラン7本、OPS.699という記録だったのですが、負担の大きいキャッチャーというポジションでの出場が減ってサードでの出場が増えていくことで、昨年以上の打撃成績を残すことを期待したいです。
今年2軍でサードの守備の経験を重ねて、問題なくできるところまで成長するようなことがあれば、来年「ポスト村上」のポールポジションに立っているのは案外橋本になるかもしれません。

もうひとり、サードでの出場機会が増えそうなのは北村恵吾です。
これまでは出場機会を増やすためにセカンドやショートを守ることもありましたが、今年から茂木、澤野、田中とセカンドに入れる選手が加入したことで2軍でセカンドに入ることも少なくなり、持ち味の長打力をいかせるサードやファースト、外野の両翼をつとめることが増えてくるのではないかと予想します。
大学の同級生である阪神の森下よりも球を遠くに飛ばす力があると評価されたこともあるほどのパワーヒッターで、1年目から2軍で二桁ホームランを打ち、昨年はホームラン数こそ減ったもののOPSは向上、三振率も13%まで低下と着実に成長をしてきています。とはいえ北村恵吾は今年でもう大卒3年目になるので、できれば2軍ではなく1軍で長い時間を過ごしてほしい選手です。

来年には村上がいなくなるということで、今年のドラフトで創価大学の立石の指名権を獲得しない限りは、来年の1軍のサードはここまでに挙げた選手の誰かが守ることになるでしょう。
今年の2軍のサードは誰が守るのか、どんな成績を残すのかをひとつ注目していきたいところです。


ショート

候補選手とデプス

【skaviosa01】

ショートは最も候補選手が少なく、若い選手が多いポジションになります。小森が流出したことで更に人数が少なくなりました。
セカンドのところでも書きましたが、ショートというか二遊間は今年のドラフトで大卒選手をあたりを取りに行くとデプス的にはちょうど良さそうです。また、全ポジションの中で飛びぬけて候補の選手が少ないので、野手でこれから補強が走るとしたらショートができることがひとつのポイントになるのではないかなと思います。

1軍:長岡は全試合フルタイム出場を成し遂げることができるか

2024年は長岡がブレイクした年でした。143試合全てで先発出場し、最多安打のタイトルを獲得したことは、低迷したチームの中で数少ない明るい話題となりました。一昨年の打率が.227だった選手が1年で打率.288まで上げてくるわけで、やっぱり若手の成長はたまらねぇなといったところです。
昨年の秋季キャンプは途中離脱となってしまいましたが、12月には木澤と野球教室に参加するニュースが流れてきたので、そこまで大きな怪我ではなかったということなのでしょう。そう信じてます。
ショートという過酷なポジションではなかなか厳しいかもしれませんが、今シーズンこそは昨年達成できなかった全試合フル出場を達成したうえで、2年連続で打撃部門のタイトル争いに絡んできてもらいたいです。

2番手は同期で同い年の武岡でしょうか。実は武岡は2年目までは2軍で長岡よりもショートに入っており、もしかしたら当時の2軍の首脳陣の中では長岡よりも武岡の方が守備の評価が高かったのかもしれません。
ここまでは同期の長岡にかなり先を行かれてしまった形になっていますが、ここからどうにか盛り返して高いレベルでのライバル関係を築いてほしいです。

昨年2軍で最もショートとして出場した伊藤はかなり守備の能力が高く、守備だけなら1軍でも十分にやっていけそうな選手です。
1年目ながら2軍のUZR(守備範囲を示す指標)が10を超えており、これはカープの矢野の1年目よりも良い数字が出ているということからも彼の守備能力の高さがわかります。伊藤の課題はバッティングで、昨シーズンは2軍で序盤こそ良かったもののシーズンが進んでいくにつれて打てなくなり、結局は打率.221、OPS.561という結果に終わりました。今年で23歳、大卒1年目の歳とまだ若く、個人的にはもう1年2軍に漬けて打撃面を成長させるくらいの余裕を持ってもいいのかなと思います。ただ、仮に長岡に何かしらのコンディション不良があったときに守備面を重視したいという方針が取られるのであれば、伊藤が1軍に入ってきてもおかしくありません。

茂木については、ショートでの起用をどこまで想定されているのかわからなかったので年齢分布表から外しました。
茂木は2019年にショートとして1軍で122試合出たという実績はありますが、2020年は45試合、2021年は3試合、2022年は5試合とショートでの出場は減っていき、ついに2023年は1軍でのショートの出場は0、昨年は1軍でも2軍でもショートとして出場したことはありませんでした。
繰り返しになってしまいますが茂木は2021年のオフにヘルニアの手術を受けており、そのあたりの体のコンディション面や、他にも武岡や伊藤など1軍でショートを守れそうな選手がいることを踏まえると、無理に茂木をショートで起用することはないのではないかと予想します。

2軍:田中陽翔の出場機会が結構ありそう

前述しましたが、長岡に何もなければ今シーズンも2軍のショートは伊藤が多くつとめることになるのではないかと思います。課題である打撃面で安定していい結果を出し続けるようなことがあれば、シーズン中に1軍に上がる機会があるかもしれません。

問題は2軍で伊藤に次ぐショートが誰になるのかです。昨年2軍のショートで52試合出ていた小森の流出が、ここでかなり効いてきます。
小森が抜けたことで、今のスワローズで昨年ショートに入った経験のある選手は7人しかいなくなりました。長岡・武岡は昨年同様に基本的に通年1軍と仮定すると残りは5人。この5人の中で北村拓己と赤羽は昨年ショートをこなした回数が1、2軍合わせて10試合もありません。
仮に伊藤の調子が良くて1軍に上がった場合、2軍には昨年ショートでの出場経験があまりない選手ばかり残ってしまう事態になりそうです。

長岡、武岡、伊藤の3人に次いでショートでの出場経験があるのは今年楽天から加入した澤野になります。澤野はバッティングに課題はあるものの、昨年は内野の全てのポジションでUZRがプラス評価となっており、内野の守備のユーティリティとして重宝されるはずです。

そして高卒新人の田中も小森の流出によってショートでもある程度の出場機会を得ることになりそうです。
田中については1年目からどれくらいの打撃成績が残せるか楽しみなところです。夏の甲子園の県大会予選の決勝で日本ハムから4位で指名された前橋商業高校の清水の147キロのストレートを叩いてホームランにしたことがあり、本人もインタビュー記事で「速い球の対応に自信がある」と語っているので、もしかしたら1年目から2軍で打率.250、OPS.650程度打てるのではないかと期待しています。
とりあえず今シーズンは二遊間で多く起用されて、将来スワローズのセンターラインを支える大型内野手として育成されていくことでしょう。
田中の父はスワローズでプレーしたことのある田中充さん、自身はスワローズジュニア出身、そして中学時代は宮本慎也さんに指導を受けるなど、かなりスワローズに所縁のあるプロフィールを持っていて、彼がスワローズでプロとしての一歩を踏み出すのは運命じみたものを感じてしまいます。

なお、これは余談なのですが、田中はドラフトの有識者によって「打撃が凄いけど守備はイマイチ」と評価されたり、「守備はプロでもショートができそうだけど打撃が課題」と評価されたりする、見る人によって印象が異なる「鵺」のような選手です。
これは個人的には宮本慎也さんが自身のYoutubeチャンネルで田中を「シルエットが良い選手」と評していたのがしっくりきていて、「大柄な体格の割に体の動きがスムーズで、一見すると打撃も走塁も守備も全て悪くないように見えるが、観点を絞って見ていくと気になる部分が出てくる」ということなのかなと思います。
見る人によって長所と短所が全く違う田中がどのような選手に育っていくのか、今後が楽しみです。


レフト

候補選手とデプス

【skaviosa01】

レフトは最も候補選手が多いポジションになります。昨年レフトで出場したことある選手は15名いて、そこに新人の根岸と松本龍之介を加えて17名でデプス表を作ってみました。最年長はサンタナの33歳になります。ベテランから若手までバランスよく選手はいる印象です。

1軍:サンタナ当確 他に候補となる選手を考えてみた

1軍のレギュラーは何もなければ今年もサンタナでしょう。昨年は首位打者のタイトルを惜しくも逃がしてしまい、今年こそは何かしらの打撃タイトルを獲得してほしいです。

仮にサンタナに何かしらのコンディション不良があった場合、レフトのスタメンを争うことになるのは西川、宮本、澤井あたりになるでしょう。

西川は昨年、レフトとしてサンタナに次ぐ出場試合数を記録しています。ただ、西川はサンタナが試合の途中で交代したときに守備固めのような形でレフトに入っていたことが多く、スタメン争いとしてはセンターやライトが主戦場になってくることでしょう。

宮本は昨年レフトで先発した回数がサンタナの次に多かった選手になります。また、宮本自身が出場したポジションとしてもレフトが一番多く、ここ数年で二遊間の選手から徐々にファーストと両翼を中心にこなす選手に代わってきています。
昨年の宮本はシーズン打率.259、出塁率.313に終わり、これは両翼とファーストを中心にこなす選手としては物足りないです。粘り強い打者なのでこれからも代打として生き残る道はあるでしょうが、スタメンを狙うのであれば宮本のような打者は3割近い打率を目指してほしいですし、そのポテンシャルはあるのではないかと思います。

この3人の中で、最もこれからのポテンシャルがあるのは澤井でしょう。
昨年1軍で守備についたときはライトのみで、レフトを守る機会はありませんでしたが、2軍ではレフトとして14試合出場しています。
一昨年のフェニックスリーグで膝に大怪我を負い、昨年はシーズン途中からの合流となったことでなかなか調子が上がりませんでしたが、今オフはスワローズファンおなじみとなってきた韓国のSSTCで打撃の動作解析を行うなど精力的に動いており、今シーズンこそ1軍でその打棒を遺憾なく発揮してほしい選手になります。
とはいえ澤井もまずはレフトではなくライトのスタメン争いに加わる選手になるはずです。

ここ数年の実績という点から有力な候補からは外してしまいましたが、本来であれば濱田もこの3人と一緒に1軍の外野の両翼のスタメン争いに絡んできてほしい選手です。ここ2年間はアピールポイントであるはずの打撃面で苦しんでおり、もどかしい思いをしているファンの方も多いのではないでしょうか。早くから出てきた選手なので忘れがちですがまだ25歳であり、これからブレイクする可能性も十分にあります。
因みに濱田は打撃にフォーカスされがちですが、実はレフトの守備が案外うまいです。特にフェンス際の打球のキャッチがうまくて、戸田で長打になりそうなあたりをフェンスにぶつかりながらナイスキャッチしている光景をよく見かけます。
今シーズンはその光景を戸田ではなく1軍の舞台で見たいです。

2軍:戸田のレフトは今年もたぶんレギュラー不在

昨年の戸田のレフトの出場試合数を見ると、一番多かったのが西村の34試合、次が濱田の26試合、3番手が北村恵吾の24試合で、3人中2人が内野登録の選手になっています。
試しに内野手登録の選手がレフトで出場した回数の合計と外野手登録の選手がレフトで出場した回数の合計を比較してみると、内野手登録の選手の方がレフトで出場した回数の合計の方が多くなります。

外野のポジションなのに内野手登録の選手の方が出場回数が多いというのは不思議な気もしますが、この理由のひとつに昨年のスワローズの外野陣の稼働できる選手の少なさがあるでしょう。
昨年のスワローズの外野陣は、そもそも外野手登録の人数自体が10人しかいなかったところ、シーズン当初から澤井がフェニックスリーグで負った膝の怪我の影響により出れず、5月には塩見が前十字靭帯と半月板を痛めシーズンを棒に振ることになり、7月には並木が肩を脱臼と例年通り怪我人が相次ぎました。
ついでにいえば澤井は5月終わりから復帰したものの試運転期間がそれなりにありましたし、昨年で引退した山崎コーチもコンディションに問題を抱えている状態でのプレーが続いており、コンディションに不安がなく万全な状態で外野をできる選手が2軍にいることがほぼありませんでした。
その結果、外野の中でも比較的守備負担が軽いレフトに内野手登録の選手が多く起用されるようになったのでしょう。

この状況は今年も続くと思われます。
外野手登録の選手は昨年青木と山崎コーチが引退し、今オフで入団したのはモイセエフ・ニキータだけだったので、昨年からひとり減って9名となります。キャンプから塩見が戻ってきそうなので、稼働できる選手は昨年よりも増えた形でのシーズンインにはなるかもしれませんが、戸田の外野まで外野手登録の選手がするには人数が足りるかちょっと不安です。

ただ、内野手登録とはいえ宮本や太田や増田といった選手は昨年ほぼ外野手としての起用になっており、こういった「隠れ外野手」の存在によって2軍が致命的に回らなくなるということはなさそうです。
上記の選手に加えて今年は西村が外野での出場をさらに増やしてくるかもしれませんし、昨年のドラフト指名された根岸や松本龍之介といった選手も外野の両翼で出場することがあるでしょう。

1軍のレフトにはサンタナという不動のレギュラーがいることですし、2軍のレフトについてはキャッチャーや内野手としての出番が限られてくる選手たちのアピールの場として空けておくというのが、ひとつの在り方なのかもしれません。


センター

候補選手とデプス

【skaviosa01】

センターは33歳の西川を最年長として、昨年センターとしての出場実績がある14名にドラフト2位で指名されたモイセエフ・ニキータを加えた15名を候補として挙げてみました。ただ、センター起用のコアとなってくるのは西川、塩見、岩田、丸山、並木、赤羽、モイセエフ・ニキータの7人になるでしょう。30歳を超えた西川と塩見のベテラン勢、ベテラン勢からスタメンを奪っていきたい岩田、丸山、並木、赤羽といった中堅勢、数年後にスワローズの主軸を担うことが期待されるモイセエフ・ニキータといった分類になると思います。
欲をいえば来年あたりモイセエフ・ニキータのライバルとなりえそうな選手を獲得できればなおよさそうですが、このあたりは今年のスカウト陣がどういった選手を視察するのか注目していきたいところになります。

1軍:ベテラン勢に昨年爪痕を残した選手たちが挑む構図

1軍のセンターとして昨年最も試合に出たのは西川になります。加入1年目にして印象的な活躍を見せ、端正なマスクも手伝って昨年の1年間だけで西川のファンのことを指す「ハルキスト」がスワローズファンの間でも急増しました。
昨年の西川のシーズン成績を見てみると、打率は.260ながら出塁率は.350と打つ以上に攻撃面で貢献していることがわかります。盗塁数も10と二桁に乗せることができて、まだまだ足も衰えていないようです。
また、西川はオールスター前までは打率.227、OPS.607と苦しんでいたのですが、オールスターが明けてからは打率.341、OPS.846と打ちまくっており、この後半戦の調子を今シーズン頭から見せることができれば、レギュラーをぐっと引き寄せることでしょう。

スワローズのセンターといえば塩見も忘れてはいけません。
前述した通り、昨年は5月に前十字靭帯と半月板を痛めて以降は試合に出ることはありませんでしたが、離脱前までで打率.267、ホームラン3本、OPS.722となかなかの数字を残していました。
怪我をしたのが前十字靭帯と半月板ということで持ち味のスピードにどのくらい影響が出るか心配ですが、例えばサッカー選手の宮市亮は前十字靭帯を3度断裂して、それでも昨年のJリーグで瞬間的なスピードとして時速35.1kmを記録しており、うまくリハビリができれば前十字靭帯を断裂してもスピードを戻せることを証明しています。
塩見も宮市のように、いい状態で戻ってきてくれることを祈るばかりです。

西川、塩見といった実績のあるベテラン勢に挑戦するのは岩田、並木の俊足コンビでしょう。

岩田は昨年センターで60試合出場と、西川に次ぐ2番目の出場試合数を記録しました。盗塁数も10を記録し、しかも失敗0ということで、1軍の舞台でも持ち前の俊足が通用することを証明できた昨シーズンでした。
シーズン通じての打率が.228ともう一歩感はありますが、9月/10月は3割を超える打率を残しており、西川や塩見に負けず、センターのレギュラー争いに入ってきて欲しいです。

並木は怪我もあって昨シーズンは33試合の出場に止まりましたが、29回の出塁機会で得点数15と出塁すれば50%以上の確率で得点を記録しています。年間でヒットを100本打てればリーグの得点数ランキングのトップ10を狙うことも夢ではありません。フェニックスリーグでは打率.423を記録し、打撃面の成長をアピールしています。
代走要員で終わるにはもったいない能力を持っている選手なので、今シーズンはよりスタメンで試合に出ることにこだわってキャンプからアピールしてもらいたいです。

丸山和郁もセンターを守るのに十分な守備能力を持っている選手ですが、昨年はライトでの出場の方がセンターの3倍以上あり、もしかしたら今の1軍の首脳陣はセンターよりもライトのほうで考えているのかもしれません。
ただ、もし澤井の打撃の調子がよくて、澤井がライトにはまるようなことがあれば、丸山和郁もセンターのポジションを争うことになるでしょう。

あと、上記の選手たちの状態があまり上がってこず、赤羽の打撃の調子が好調なのであれば赤羽がセンターを守る機会が増えてくるかもしれませんが、センターはかなり候補選手がいるので、不慮の事態が起こらない限りは優先順位が高くなることはあまりないように思います。

2軍:モイセエフ・ニキータはどんな成績を残してくれるのか

今年の2軍の一番の注目は、モイセエフ・ニキータでしょう。
担当した余田スカウト曰く「体力的な部分はスワローズの選手の中でもトップクラス」ということで、現在行われている新人合同自主トレの1,000m走でも3本中2本でトップとそのポテンシャルを見せてくれています。
従来スワローズは高卒選手に対して体作りの期間を設けていて、だいたい5月ごろから試合に出るようなスケジュールを組んでいるのですが、モイセエフ・ニキータについては3月中旬のイースタン開幕戦からスタメン出場することでしょう。

戸田のセンターの状況はどうなっているかというと、昨年の戸田で最もセンターを守ったのは先代の背番号31である山崎コーチで、33試合に出場していました。山崎コーチは昨シーズン限りで引退したために、その分の出場機会がまるっと空いています。
また、2番手は岩田で25試合、3番手は丸山和郁で21試合、その後になると増田や太田など内野手登録の選手の名前が入ってきており、優先的にセンターで使われていた選手は見当たりません。
そんな状況なので、恐らく今シーズンはモイセエフ・ニキータが優先的に使われるようになると予想します。

1年目のモイセエフ・ニキータに期待したい成績としては、巨人の浅野翔吾選手の1年目の2軍成績(打率.262、7本塁打、OPS.740、三振率.190)並みになります。打率.270前後、5本塁打以上、OPS.700以上、三振率.200以下といったところでしょうか。ドラフトの順位の違いはあれど同じ高卒外野手として、浅野選手が残した成績はひとつの目安になってくると思います。
浅野選手は昨年高卒2年目にも関わらず1軍でもある程度活躍しており、モイセエフ・ニキータも上記で書いたくらいの成績を残せれば、2年目から1軍の舞台での出場機会が見えてくるのではないでしょうか。


ライト

候補選手とデプス

【skaviosa01】

ライトは他の外野のポジションと比べた時に、30歳手前の中堅選手が1軍でも2軍でも試合によく出ているのが特徴です。青木宣親に続く、次のスワローズを担う選手がそろそろ出てきてもらわないと困るポジションと言い換えてもいいかもしれません。
ほぼ候補の選手横一線、なんなら昨シーズンはライトのポジションについていなかった他の選手も加わりそうなライトのスタメン争いです。開幕スタメンを誰が勝ち取るのか、シーズン終盤は誰がレギュラー格となっているのか、全く予想がつきません。

1軍:今シーズンこそ決着させたい「ポスト青木」の争い

昨年の1軍で最もライトのポジションについたのは丸山和郁です。85試合は1軍の全試合の約60%にあたります。
送球の強さや守備範囲の広さ、上手さには定評があり、昨シーズンは何度も丸山和郁の守備で助かった場面がありました。スタメンで出ていなくてもチームに貢献できる選手にまでは成長しています。
丸山和郁がレギュラー格になるには、やはり打撃でどこまで結果を出せるかでしょう。昨シーズンの5月までは3割超えの打率をキープしていたのですがそこから徐々に調子を落としていき、夏場には2軍落ちも味わいました。2軍では打率.324と立派な数字を残しており、本当にもうあと一歩でブレイクというところまで来ている選手です。

丸山和郁のライバルになりそうなのは澤井です。
大卒1年目のシーズンでイースタンのホームラン王を獲得し、昨年は怪我で出遅れてベストコンディションとはいえない状態にも関わらず2軍でのOPS.798としっかりと結果を残してきています。2軍での打撃実績でいえば、丸山和郁よりも澤井の方が1軍に近い数字になるでしょう。
澤井は守備についてはそこまで期待されない選手になるでしょうから、1軍でレギュラーとなるには圧倒的な打撃成績が求められます。昨年は1軍でも2軍でも落ちる球に弱いところを見せていましたが、2023年の2軍のスタッツを見てみると変化球に対するRV(そのボールを打った時にどのくらい得点を増やせそうか)はプラスの数値になっており、昨年落ちる球への弱さを見せたのはフェニックスリーグで負った膝の怪我の影響が大きく、膝のコンディションが戻ってきているのであれば今シーズンは落ち球への課題を克服した姿を見せてくれるのではないかと思います。
ライトに澤井、レフトにサンタナだとセンターに入る選手が大変なことになりそうですが、それも許せるくらいの打棒を澤井には期待したいです。

昨年1軍で丸山和郁に次いでライトの出場回数が多かった増田や、昨シーズン外野のどこのポジションでも安定したプレーを見せた西川も1軍のライトのスタメン候補になるでしょう。

大穴は内山と塩見でしょうか。両者ともコンディション面に不安を抱えており、内山はキャッチャーができる腰の状態ではないと判断されれば、塩見はセンターを十分に守れるほどにスピードが戻ってきていないと判断されれば、ライトに回される可能性もあるかと思います。

2軍:生き残りをかける選手たちがどこまで結果を残せるか

改めてライトのデプスを見てみると、昨シーズン2軍で最もライトとして出場したのは今年で25歳となる濱田の42試合、2番目は濱田と同い年の澤井の29試合、3番目は今年で28歳となる太田の21試合となります。澤井は今年で3年目なのでまだ猶予があるでしょうが、濱田は7年目、太田は11年目と、そろそろ1軍で結果を残しておいて欲しい選手たちです。

一方で23歳以下の選手で昨年の2軍のライトのポジションについたことがある選手は西村くらいで、他に候補として松本龍之介やモイセエフ・ニキータもあるかもしれませんが、両者共に他にメインポジションを抱えている選手なので、そこまで回数が増えることはないでしょう。

そのため今年も戸田のライトには、1軍のベンチに入れなかった中堅所の選手がスタメンとして入ることが多いと予想します。

これまで見てきたとおりスワローズの野手陣はかなり25歳~30歳までに選手を多く抱えており、このあたりの選手たちは今シーズン1軍での活躍を求められていると思います。どの選手も2軍である程度の結果を出したことがある選手ばかりなので、何かきっかけ一つで1軍でも成績を残せるようになると信じて、今シーズンも応援していきたいです。


おわりに

結果も大事だけどそろそろ世代交代しないとまずいかも

これまで各ポジションの年齢構成と出場試合数から今シーズンの選手の起用法についてあれこれ書いてきましたが、いかがでしたでしょうか。
各ポジションごとにデプスを作って、昨年の出場試合数とクロスで見たら何か面白いものが出てくるのではないかなと思って昨年末から書き始めたものの、特になにか新しい観点みたいなものが提示できていないのではないかというところで、ちょっと反省しております。
今回私が作った資料を見てもし何か気づいたことがあったという方がいらっしゃいましたら、私の苦労も少しは浮かばれます。

個人的にこの記事を書いていて感じたこととしては、東京ヤクルトスワローズのレギュラー格の選手たちのほとんどが「ベテラン」と言われる年齢になってきているな、ということでした。

昨シーズンの各ポジションで最も試合に出た選手の、今シーズンの年齢は以下の通りになります。

キャッチャー:中村 35歳
ファースト:オスナ 33歳
セカンド:山田   33歳
サード:村上    25歳
ショート:長岡   24歳
レフト:サンタナ  33歳
センター:西川   33歳
ライト:丸山和郁   26歳

8人中5人が33歳以上です。
何なら今年は外野の一角のレギュラー格として塩見が入ってくるかもしれず、また来年村上が抜けてサードのレギュラー格が茂木になったら、更にレギュラー格の高年齢化が進行することになります。これはあまりいい状態とは言えません。

高津監督が昨シーズンを振り返るインタビューのときによく「若手の突き上げがなくて苦しかった」という旨のことを言っていますが、確かにこうして各ポジション別に最も試合に出た選手の年齢を並べてみると高津監督のチームの現状に対する危機感は正しいのだろうと思います。

ただ、レギュラーの高齢化が進行しているからと言って、いまレギュラーの人たちを無理やり控えに回してしまうというのは健全な競争とは言えません。やはりプロの世界なのであれば、スタメンは結果で勝ち取るべきです。要は今のスワローズの20代中盤の選手たちは、「世界一」のボールを捕ったキャッチャーやトリプルスリーを3回達成したセカンド、4年連続で2桁ホームランを打っているファースト、昨年あと一歩のところで首位打者を逃した外野手、日本代表に選出経験のある外野手といった人たちから実力でレギュラーを奪う必要があるのです。

このように書くとハードルがかなり高いように見えますが、今のレギュラー格の選手たちからスタメンを奪うような人がいないと今シーズンのチームとしても良い結果は出ないでしょうし、この目標を達成できる選手が出てこないとなると、この先数年スワローズはかなり苦しい戦いを強いられることになるかもしれません。

今シーズン、チームとしては日本一を目指すことが一番大きな目標になるのでしょうが、個人的には未来のスワローズを担う選手たちが独り立ちするシーズンになって欲しいと願っています。

次世代のコアとなる選手が出てきてほしい2軍

これまで見てきた通り、今年の東京ヤクルトスワローズの野手陣は20代中盤に差し掛かる選手が多く、野手38人中、23歳以下の選手は全体の30%未満の11人しかいません。
しかも11人中5人が捕手登録(内山、中川、矢野、松本龍之介、鈴木)、残りの5人は内野手登録(伊藤、澤野、西村、髙野、田中)、外野手登録はモイセエフ・ニキータの一人だけと、ちょっとここは編成の偏りが気になるところです。

ただ、人数は少ないとはいえどの選手も将来チームの軸になりえるだけのポテンシャルを持っています。

今年で高卒3年目となる西村は、台湾ウィンターリーグで技術力を感じさせるヒットを量産していました。西村はスイングスピードが速いので、もしかしたら青木GM補佐がやっていたように、気持ちスイングを緩めてボールに当てにいく感覚で振っていくくらいのほうがいいのかもしれません。
また、台湾ウィンターリーグでは打席の中で少し後ろに立つようになり、苦手だった外角の球への対応がかなり改善されてきたように見えます。
昨年のファン感の連動企画として公開された2軍のスタッフ座談会にて、ポテンシャルをベタ褒めされていただけに、今年こそこれまでの2年間の印象を一変させるような活躍を期待したいです。

昨シーズン高卒ルーキーながら見事に戸田の投手陣を守備面で支えた鈴木については、今年は守備だけでなく打撃でも成長したところを見せてほしいです。昨年の新人合同自主トレのフリーバッティングで戸田球場のバックスクリーンの最上部まで飛ばし、「村上並みのパワー」と評されたほどにボールを飛ばす力はあります。

個人的には高卒ルーキーの田中陽翔の打撃も結構楽しみです。
高卒選手にしてはガッチリとした体格に加えて、映像を見た限りだとストレートへの対応については問題なさそうで、昨年の高卒ルーキーの鈴木や髙野よりも1年目から2軍で数字が残せそうな気がします。問題はプロの投手が投げる変化球への対応がどうなるかでしょうか。

そしてモイセエフ・ニキータです。
前述した通り現実的な目標としては巨人の浅野選手の1年目の2軍成績になるでしょうが、期待したいところとしては1年目の村上宗隆の2軍成績、打率.288、ホームラン17本、OPS.879になります。モイセエフ・ニキータがこれくらい打てば、イースタンリーグの優勝も見えてくるかもしれません。
モイセエフ・ニキータが「スワローズの7年周期」の系譜を継ぐ大打者になることを祈るばかりです。

結局一番大事なことは怪我をしないこと

ここまで色々希望的観測を述べてきましたが、結局一番大事なことは怪我をしないことであるというのは、スワローズファンの皆様であれば重々ご承知のことだと思います。怪我さえしなければスワローズの野手陣は間違いなく12球団でも上位に入ってくる戦力です。どれだけ主力選手が怪我せずに戦えるかで順位が変わってくるといっても過言ではありません。

今年1年、東京ヤクルトスワローズの選手が誰も怪我をせず、健康に楽しく野球をプレーすることができて、その延長線上に3年ぶりのセリーグ制覇、そして4年ぶりの日本一があることを祈念してこの記事を終わりとさせていただきます。

ここまで長文をお読みいただきありがとうございました。
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