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エイバルを支える69カ国1万1000人の株主
創設時から変わらぬ理念を守りながら
乾貴士(左)が所属するエイバルは人口わずか2万7000人の小さな町クラブ。ラ・リーガ1部に定着して6シーズンになる
乾貴士(左)が所属するエイバルは人口わずか2万7000人の小さな町クラブ。ラ・リーガ1部に定着して6シーズンになる【Getty Images】

 ラ・リーガがスペイン政府の文化機関インスティトゥト・セルバンテス東京と共同で開催するオンラインセミナー「#TodayWePlay」。7月6日の第3回は、乾貴士が所属するエイバルの常務取締役ジョン・アンデル・ウラシア氏による講演が行われた。

日本との共通項は産業の力で復興

 導入はクラブの歴史とは切っても切れない関係にあるエイバルの町について。自身もエイバル出身だというウラシア氏は、人口わずか2万7000人の地元について次のように紹介している。


「エイバルは1346年にできた小さな渓谷の町です。町のサイズは最長でも500メートル以下しかありません。人口は2万7406人で、ヨーロッパの5大リーグに所属するクラブの中では最も小さな町になります。バスク自治州の中央に位置し、アスレティック・ビルバオやレアル・ソシエダ、デポルティーボ・アラベスらバスクのビッグクラブはみな1時間以内の距離にあります」


 エイバルはバスク語で「谷」を意味する。工業が盛んで、19世紀末から20世紀初頭にかけては軍需産業で栄えた。チームがアルメロス(武器職人)の愛称を持つのはそのためだという。


 1936〜39年の内戦時には町が全壊したが、皮肉にも軍需産業が復興の後押しとなった。「第二次世界大戦で敗戦した日本も同じだと思います。我々も日本も戦争によって崩壊した後、産業の力で復興を遂げたのです。それは我々の共通項だと言えます」とウラシア氏は言う。


 そして内戦直後の1940年、2つの地元クラブが合併し、ソシエダ・デポルティーバ・エイバルが生まれた。その後、ウラシア氏は今日に至るまでのクラブの歴史を紹介しながら、本拠地イプルアの変遷についても紹介。続いてテーマはエイバルの国際戦略に移っていく。


「我々の国際化の歴史は2013-14シーズンに始まりました。2部に昇格したこのとき、クラブはスペイン政府から新株発行による200万ユーロ(約2億4000万円)の増資を義務付けられました。そこで我々は既存の株主たちと共に、極めてリスクの高い決断を下します。いち個人、いち企業グループのオーナーを迎えるのではなく、クラブの保有権をできるだけ多くの人々に分散させることを決めたのです。


 それは我々のような小さな町クラブにとって困難な挑戦でした。それでも我々は、常に多くの人々に保有されてきたクラブの伝統を守りたかった。クラブのルーツ、伝統や歴史は尊重されるべきものであり、1940年にクラブ創立者たちが示した理念、人々のクラブであることを辞してはならないと考えたからです」

小口株主募って200万ユーロの増資を実現

 小口株主を多数募り、総額200万ユーロの増資を実現する。その困難な目標を成し遂げるべく、クラブは「Defend Eibar(エイバルを守れ)」というクラウドファウンディングのキャンペーンを実施。世界中に向けてクラブの情報を発信することで、共感を持つ投資者を探し求めた。


 幸運なことに、エイバルは同シーズンに史上初の1部昇格を実現する。結果としてエイバルの存在は多くのメディアに取り上げられ、世界中にその名が知れ渡っていった。それらの後押しもあり、現在クラブは69カ国に散らばる1万1000人の株主によって支えられているという。ウラシア氏は言う。


「我々は以前から負債ゼロを経営のモットーとしてきました。ですが、世界中に多くの株主を獲得したこのときより、より大きな責任感を持って経営に取り組んでいくことを決意したのです」


 その後、ウラシア氏は乾選手の加入がクラブにもたらした変化、日本とのつながりについて説明(※これらは個別で行ったインタビューで詳しく触れているので、そちらを参照いただきたい)。なお、乾については「もう彼はいちエイバル人として認識されており、通りを歩いていても誰も驚くことはありません」と話していた。

 最後に、ウラシア氏はクラブが行っているさまざまな社会活動について紹介した後、次の言葉で講演を締めくくった。


「我々は人々の手で支えられてきた特別なクラブです。80年前の創立時から変わらぬ理念を守りながら、この10年間は世界最高峰のリーグへの定着も実現してきました。そのなかでも日本のような国とのつながりが生まれたことは本当に誇らしいことです。我々はこれからもクラブの独自性を守りながら、日本とのつながりを深めていきたいと考えています」

工藤拓
工藤拓

東京生まれの神奈川育ち。桐光学園高‐早稲田大学文学部卒。幼稚園のクラブでボールを蹴りはじめ、大学時代よりフットボールライターを志す。2006年よりバルセロナ在住。現在はサッカーを中心に欧州のスポーツ取材に奔走しつつ、執筆、翻訳活動を続けている。生涯現役を目標にプレーも継続。自身が立ち上げたバルセロナのフットサルチームは活動10周年を迎えた。

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