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選手の感染リスクは? PCR検査は必要?
岩田教授に聞く「無観客試合」
ダイヤモンド・プリンセス号に乗船しその内情を動画で告発したことが話題となった、感染症に詳しい岩田健太郎先生。プロスポーツ再開について話を聞いた
ダイヤモンド・プリンセス号に乗船しその内情を動画で告発したことが話題となった、感染症に詳しい岩田健太郎先生。プロスポーツ再開について話を聞いた【(C)『新型コロナウイルスとの戦い方はサッカーが教えてくれる』エクスナレッジ】

 間もなく日本にも「スポーツの灯火」が戻ってくる。


 6月19日にはプロ野球が開幕。サッカーは6月27日にJ2とJ3、7月4日にはJ1が再開される(J3は開幕)。ただし、どちらも最初は無観客試合(このほど決まった新名称では「リモートマッチ」)。新型コロナウイルスによる緊急事態宣言は解除されたものの、ゼロリスクとはほど遠い状態で、われわれはスポーツ再開に向けて歩みを進めることになる。


 本格的にスポーツ興行が再開されるのを前に、今回は神戸大学医学研究科感染症内科教授の岩田健太郎さんに話を聞いた。岩田さんと言えば今年2月、横浜港に停泊していたダイヤモンド・プリンセス号に乗船して、その内情を動画で告発したことが話題になった(のちに削除)。ヴィッセル神戸のファンとしても知られ、このほど『新型コロナウイルスとの戦い方はサッカーが教えてくれる』(エクスナレッジ)という新著も上梓している。


 オンラインによる今回のインタビューでは、「無観客試合」にテーマを絞った。無観客にすることで得られるメリットとは何か。プロ野球とJリーグがPCR検査を行うことは是か非か。試合中に選手が感染するリスクをどう考えるべきか。運営に携わる人が気をつけるべきことは何か。感染症の専門家であり、自身もサッカープレーヤーを続けている岩田さんの提言を、ここに再現する。(取材日:2020年6月11日)

異なる分野でも同じ基準を作ることが重要

──プロ野球が6月19日に開幕、Jリーグが6月27日から再開されます。このタイミングについて、先生の評価はいかがでしょうか。


 妥当だと思います。(試合開催と感染リスクは)トレードオフの問題ですし、「正しい開催のタイミング」というものも特にないわけですから。感染リスクが完全にヘッジされていること、選手がトレーニングを開始してから十分な期間が与えられていること、そしてスタジアムの受け入れ体制。あらゆる条件を考慮しての、このタイミングだと思っています。


──今年3月、JリーグとNPB(日本野球機構)が合同で、専門家の先生3人を迎えて「新型コロナウイルス対策連絡会議」を立ち上げています。プロ野球の開幕とJリーグの再開の道筋は、この対策連絡会議が重要な役割を果たしました。野球界とサッカー界が今回、このような情報共有を行ったことについては、どうご覧になっていますでしょうか?


 悪い話ではないと思います。屋外でのプロスポーツ興行という点では、野球とサッカーはわりと似通った条件だと思います。感染症対策という観点でも、野球とサッカーとで整合性を取るというのは、とても理にかなっていると言えます。われわれの世界では「ハーモナイゼーション」と言うんですが、これはすごく大事なんですね。


 例えば日本国内では、37.5度以上の熱が4日以上続くとか、他にもいくつかの条件が合わないとPCR検査はできなかったわけです。ところが検疫では、海外から帰国した人に関しては、症状があろうとなかろうと無条件にPCR検査をしていました。これはすなわち、国内の法制度のハーモナイゼーションができてないわけです。こういう矛盾があるのは、よろしくないですね。


 日本の役所はよく「管轄が違うから」ということを言いますが、それはずるい言い方です。管轄が違うのであれば、違う者同士で話をすり合わせて、同じ基準を作っていくべきなんです。その作業を怠っているんですよ。その点、野球とサッカーが同じ基準でスポーツ興行を再開するのは、ある程度のハーモナイゼーションが取れているわけで、非常に正統なやり方だと思います。


──先ほど「トレードオフ」という言葉が出てきました。要するに「ゼロリスクはない」という前提を、まず確認しておく必要があるわけですね?


 そうです。先月(5月25日)、福岡県の高野連(高校野球連盟)が県独自の大会を開催しないことを発表しました(編注:6月12日に代替大会の開催を決定)。そのときの説明で「新型コロナの感染リスクがある」ことが理由になっていました。それなら「感染リスクがゼロになるまで待つのですか?」という話になってしまいます。できない理由を列挙して開催を見送るのではなく、むしろ「この条件をクリアできたら開催しましょう」という発想にしていくべきだと思います。

宇都宮徹壱
宇都宮徹壱

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著はスポーツナビでの連載をまとめた『J2&J3 フットボール漫遊記』(東邦出版)

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