連載:欧州サッカーフリークが選ぶビッグクラブのマイベスト

“黄金コンビ”金子達仁×倉敷保雄が選ぶ マドリー&バルサのベストシーズンは?

吉田治良
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リモートでの対談とはいえ、久しぶりに名調子を聞かせてくれた倉敷氏(上)と金子氏(下)の黄金コンビ。2人が中継をしていた頃と比べ、ラ・リーガからキャラが立った選手が減ったという 【吉田治良】

 ファン待望の復活だろう。かつてラ・リーガのテレビ中継でコンビを組み、そのテンポのいい掛け合いで人気を博したスポーツライターの金子達仁氏とアナウンサーの倉敷保雄氏。スペインサッカーに造詣が深い“黄金コンビ”が今回、欧州屈指のメガクラブ、レアル・マドリーとバルセロナについて大いに語ってくれた。2本立ての前編では、両氏がそれぞれのクラブの「ベストシーズン」をチョイスする。

グローバル化でサッカーから毒が消えた

──お二人がラ・リーガの中継でコンビを組まれていたのって、いつ頃でしたか?

倉敷 90年代末から2000年代初頭、デポルティボが「スーペルデポル」と呼ばれていた頃ですよね。

金子 僕は98年の12月からですね、忘れもしない。

倉敷 あの頃のリーガって、今よりもキャラが立った選手が多かった。僕らもキャラいじりをしていて、それが許されていた時代というか。

金子「DD砲」とか無茶なこと言ってましたもんね。

倉敷 マラガのデリー・バルデスとダリオ・シルバですね。バルサのトリデンテ(リバウド、クライファート、サビオラの3トップ)も勝手に3兄弟にしてましたから(笑)。

金子 クラシコにも何回も行きましたよね。カンプ・ノウでもサンチャゴ・ベルナベウでもしゃべらせもらったのは、すごく嬉しかった。

倉敷 当時のクラシコって、今とは気合の入れ方が違うというか、ちゃんと憎しみ合ってましたよね。観光客が入り込む余地がない、スペイン人によるスペイン人の文化でしたから。

金子 今はディズニーランド化しちゃいましたもんね。基本的にサッカーは日々進化していると思うし、最新のサッカーが最高のサッカーだとは思うんですけど、クラシコに関して言うと、正直もう腑(ふ)抜けですよね。

倉敷 僕はフィーゴがバルサからマドリーに移籍した後のクラシコ(02年11月23日)を見て、古代ローマのコロッセウムってこんな感じだったんだろうなって思いましたから。1人の選手がひどい目に遭うのを10万人近くが楽しみにしてるって、異常ですよね。

金子 あの頃のひりつくような刺激は皆無。それこそフィーゴめがけて豚の生首が飛んできた、なんて時代ではもうないんですね。

倉敷 たぶん、技術的とか戦術的な面では今の方が上だし、見どころもそちら側になっているんでしょうけど、かつての物語的な面白みはなくなってしまった感じがします。

──リーガがつまらなくなった?

倉敷 いえ、単に嗜好(しこう)の問題だと思いますよ。

金子 あとは社会が変わったってことでしょう。例えば30年前のオランダ対ドイツって、激ヤバだった印象があります。互いに挑発しまくりで、でもそれが許された時代。隣国であるだけで親しくもなかったし、関係性も深くなかったから。でも、バイエルンの主力が根こそぎオランダ人になったりするような時代になると、もう憎しみ合ってもいられない。良くも悪くもグローバル化したことによって、民族とか国境に対する心理的なハードルがどんどん低くなっていった。これ、いいことなんでしょうけど、サッカーからは毒が消えましたよね。

倉敷 1つのチームの中で14か国語が話されるような時代ですからね。それと、差別的な発言はもちろん、人をちょっと馬鹿にして笑うようなことも絶対に許されないような時代になって、サッカーもある種の品行方正を求められるようになりましたよね。「物語」ではなく「技術」を楽しみましょうと。UEFAとかFIFAが聞いたら喜びそうな見方が、残念ながら主流になっているのかなっていう気がします。
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著者プロフィール

1967年、京都府生まれ。法政大学を卒業後、ファッション誌の編集者を経て、『サッカーダイジェスト』編集部へ。その後、94年創刊の『ワールドサッカーダイジェスト』の立ち上げメンバーとなり、2000年から約10年にわたって同誌の編集長を務める。『サッカーダイジェスト』、NBA専門誌『ダンクシュート』の編集長などを歴任し、17年に独立。現在はサッカーを中心にスポーツライター/編集者として活動中だ。

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