LiLiCoが語りたい! 映画『アイ,トーニャ』 “腐った”人たちに囲まれた彼女の半生
第2弾はフィギュアスケート映画『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(配給元:ショウゲート/ブルーレイ&DVD販売元:ポニーキャニオン)を紹介します。
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登場人物の誰とも友だちにはなりたくない
「ナンシー・ケリガン襲撃事件」で全世界を騒がせたトーニャ・ハーディングの“痛すぎる”半生とは? 【(C)2017 Al Film Entertainment LLC】
私たちくらいの年齢だと、トーニャが要因とされるあの「ナンシー・ケリガン襲撃事件(1994年)」は誰でも憶えていますよね。あるいはその事件後10年間くらいに生まれた人でも、何らかの形で耳にしている。日本のワイドショーも毎日取り上げていて、本当にすごかった。
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嫌な人ばかりが登場するが、なかでもお母さんの恐ろしさが際立っている 【(C)2017 Al Film Entertainment LLC】
インタビュー形式で答えつつ、その発言に関連したシーンに飛ぶというのもそうなんですけど、もっと言えばそのシーンを演じて再生しつつ、カメラ目線になって私たち観客に問いかけているところが結構あったりする。あれがとってもうまいんですよね。
あの人たち、ダメじゃないですか。みんなとことんダメ人間で、彼らに説明されると「うんうん、そう考えていたんだね」という気持ちに――いえ、共感するわけじゃないのよ。だけど、観客を巻き込んでいくところが映画の作り方として面白いなと。
史実に基づいた映画とはいえ、浮世離れした登場人物もいる。写真はその代表例、太ったボディガード 【(C)2017 Al Film Entertainment LLC】
このなかの誰とも友だちになりたいと思わないです、本当に嫌な人ばっかり。特にお母さん(アリソン・ジャネイ演じるラヴォナ・ゴールデン)、恐ろしいですよね。初登場のシーンで外見的にも実在の人物とそっくりですし。ラヴォナとショーンも、そして彼氏から夫になるジェフ・ギルーリー役のセバスチャン・スタンも、俳優が実在の人たちとそっくりであることはスタッフロールでわかりますけど、似過ぎです。
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愛を知らぬまま成長したトーニャ
選手と家族、コーチとの関係を美化せず描いた作品に、昨今のスポーツを取り巻く問題を考えさせられる 【(C)2017 Al Film Entertainment LLC】
私もお母さんとすごく仲が悪かったんですけど、ただハグしてほしいだけでした。お母さんと娘の関係はそれだけなんです。でもこの母親は幼いトーニャがスケートのスクールに通っているとき「トイレに行きたい」と訴えると、「滑り続けな」と言い、お漏らしするのを傍観しているんです。
もしかしたら、スパルタの自分が良いお母さんだと勘違いしているのかもしれない。でもこういう親はたくさんいると思うんですよね。最近、パワハラとかモラハラという言葉が生まれて社会問題になっているじゃないですか。それがスポーツ界では認められる傾向にある。
実際、スポーツの世界ではそのくらいやらないと一流になれない可能性はある。厳しい世界でそのスポーツの頂点に立ったお子さんを持つお母さんは、少なからずああいう面があるのかもしれない。なぜかと言えば、子どもに対して一番最初に「ナンバーワンになれ」と言うのはお母さんかお父さんのはずですから。子どもにはまだその感覚がないですもん。オリンピックとかゴールドメダルとか。
そうして育ったトーニャは、愛を知らないからこそ、旦那さんにDVされても「こんなもんか」って感じていたと思うんですよ。友人にも“だめんず”を惹きつけてしまう女性がいますけど、トーニャも人の温もりが欲しかったんだと思うんですよね。彼氏(ジェフ)はとんでもない人だけど、自分を愛してくれる人で、彼女が探していた温もりがあったのでしょうし、唯一、彼女を気にしてくれていた人だったのだと思います。
そんなスポーツ界におけるファミリー問題、コーチ問題を美化せずストレートに描いているところがすごい。トーニャは「これが真実だ」と最後に言うけど、とんでもない話ですからね、これ。