連載:「Sports assist you」仕掛け人の証言

コロナ禍でJFAが果たすべき情報発信 大切にしている「3つの軸」

宇都宮徹壱

「スピード感」と「果たすべき役割」

大脇氏「『自分たちに何ができるのか』と考えている選手たちの力が結集すると、これだけのスピード感になることを強く実感します」 【スポーツナビ】

 SNSでの発信をする一方で、サッカーファンからどのようなリアクションがあるのかをチェックするのも、大脇氏の重要な仕事のひとつだ。一つひとつのコメントを精査しつつ、メディアでの報道にも目配りしながら、自分たちに何が求められているのかを常に意識している。サッカーに関する情報発信には自信はあっても、感染予防に関しては専門外。それゆえ、手探りの状態が続いた時期もあったという。

「JFAのサイト内に『正しいウイルス対策のポイント』というページがあります。3密の回避とかステイホームとか、手洗いとかマスクとか、本当に基本的なことだけが書かれてあるんですね。ある時、JFA医学委員会の先生に『どういうことを書き足せばいいんでしょうか?』とお聞きしたんです。そうしたら『今のままでいいから、もっと広めることに力を入れてほしい』と言われましたね。私たちに求められているのは、そういうことなんだと、その時に改めて思いました」

 JFAでは2月27日からテレワークが続いている。自宅では、2歳になる娘の母親でもある大脇氏。お子さんにもサッカーをやらせたいですか、と尋ねると「選択肢のひとつとして与えたいですね」と笑みを見せる。一方、JFA職員としては「自分のサッカー人としてのキャリアと、プロモーション畑を歩んできたことが、今の活動にも生かされている」とも。そして「スピード感」と「果たすべき役割」という2つの言葉が、このプロジェクトを下支えしていることを強く自覚していると語る。

「11年の東日本大震災の時、JFAがスピード感のある対応をしていたというお話を先輩方からお聞きすることがあります。今回も『自分たちに何ができるのか』を考えて行動した選手とJFAの両者がかみ合って、このスピード感が生まれたと思っています。そして私自身、公益財団法人が果たすべき役割について、深く考えるきっかけにもなりました」

 さて、5月6日までとされていた緊急事態宣言は、さらに1カ月ほど延長されることが決定した。「Sports assist you」のプロジェクトも、いよいよ第3フェーズに向けた取り組みが求められよう。その一方で、JFAが起点となったプロジェクトは、他競技団体への広がりを見せている。事態の推移を見守りつつ、サッカー界のバトンがどのように他競技に受け継がれているのか、さらなる取材を続けていきたい。

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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