コロナ禍でJFAが果たすべき情報発信 大切にしている「3つの軸」
インタビューに答える日本サッカー協会(JFA)の大脇氏。取材はZoomを使って行われた 【スポーツナビ】
「3月11日から4月5日は、われわれにとって第1フェーズだったと捉えています。学校に行けなくなって自宅に籠もっている、サッカー少年少女たちに向けたコンテンツを、とにかく出し続けようという感じでした。次の第2フェーズは、緊急事態宣言が解除されるまで。『3つの軸』に沿って、優先順位を付けながら順次アップしていこうということで、その具体例が日本代表の試合映像です。これはスポーツ観戦ができなくなった、大人のサッカーファンの余時間消費を目的に企画されました」
ここでいう「3つの軸」とは、(1)新型コロナの正しい啓発、(2)家で楽しめるコンテンツ、(3)身体を動かすためのメソッド。当プロジェクトでは「事態の推移に応じて、コンテンツの傾向や出し方も意図的に変化を持たせています」と大脇氏。そんな彼女は、早稲田大学のア式蹴球部女子部で主将を務めた経歴を持つ。その後、同大学の大学院を修了して、2012年にJFAに入社。同年に日本で開催されたU-20女子ワールドカップ(W杯)では、新人ながらU-20女子日本代表の撮影スタッフにも抜てきされた。
「私はナショナルレベルではなかったので、プレーヤーとしてのキャリアは大学までと決めていました。大学院では指導や分析の勉強をしていたんですが、たまたま映像(の撮影や編集)ができるということで、その頃からJFAでもお手伝いをさせていただくようになったんです。ただしテクニカルスタッフということではなく、むしろ『リスペクト』のようなプロモーションや広報の仕事に、当時から軸足が動いていましたね。12年のヤングなでしこの撮影の仕事も、そうした流れから任されたと思っています」
第3フェーズで「何を発信すべきか」
「Sports assist you」はヨーロッパでプレーする選手たちの呼び掛けからプロジェクトがスタートした 【Getty Images】
「欧州組の皆さんから『自分たちも何かやりたい』というお話をいただいた時は、すごくうれしかったし、ありがたく思いました。私たちだけでは、どうしてもできることは限られてしまう。けれども、実は欧州組の皆さん同じ思いであることを知って、これがサッカーの力、スポーツの力だなって思いました。それだけに、自分たちの責任も強く感じています。せっかく日本代表の選手たちが表に出てくれるわけですから、もっと全体のバランスを考えながら、コンテンツを提供していかないと常に考えていますね」
前回のコラムで私は、このプロジェクトに関わるスタッフが「サッカー」と「サッカー以外」の出自に分かれており、なおかつ両者が絶妙な補完関係にあることを指摘した。小学1年生からプレーを続けてきたという大脇氏は、明確に前者。だからこそ、現役プレーヤーから協力の申し出があった時はうれしく感じたし、情報発信についても「プレーヤーの立場だったら」というのが発想の原点にある。そんな中、最近よく考えるのは「次のフェーズで何を発信すべきか」であるという。
「第3フェーズに向けたコンテンツというのは、まだ作られていません。(緊急事態宣言の)解除後がどうなっているかも分からないですし。ただ、いつかは日常が戻って、サッカーの活動が再開される日が戻ってきます。そうなった時に、ずっとトレーニングできなかったプレーヤーが、いきなりトップコンディションでサッカーをするのは無理ですよね。最近は指導普及部の人たちとも話をしながら『日常に戻るためのコンテンツ』というものを考えています。それが、どのタイミングで出せるかは分かりませんが」