連載:「Sports assist you」仕掛け人の証言

JFA小暮氏が見据えるプロジェクトの今後 次のフェーズは「他競技への横展開」

宇都宮徹壱

業界の歴が浅いからこそ感じる「サッカーの価値」

小暮氏「サッカーの力、スポーツの力を考える、良いきっかけになりました」 【スポーツナビ】

 スタート時は、欧州組の日本代表が主流だった「Sports assist you」。最近ではJリーガーや女子サッカーや障がい者サッカー、さらにはサッカー以外のアスリートにまで広がるようになった。また当初は、一斉臨時休業で学校に行けない子供たちがメインターゲットであったが、最近は医療関係者やスーパーの店員といった「コロナウイルスと戦う全ての人々」への感謝と応援にシフトしている。

 プロジェクトの開始から約2カ月。次の方向性を模索しながらも、目指すところは変わらないというのが小暮氏の考えだ。

「正直、少し前は『コロナが明けてから』の情報発信をどうするか、考えていました。でも今は、さらに先になることを見据えながら、『スポーツがない寂しさをどう癒やしていくのか』を中長期的に考えていく必要性を感じています。と同時に、スポーツは平時でないと成立しないということも、痛感していますね。本来でしたら今頃は、JFAや日本代表のプロモーションの仕事をやっていたでしょう。ただ、戦う相手はコロナになりましたけれど、自分の役割は大きく外れていないとは思っています」

 小暮氏は20代の頃、大学を半年休学してローマでカルチョ三昧の日々を送っていたという。また、日産に務めていたこともあり、横浜F・マリノスのファンでもある。純然たるサッカーファンゆえに、JFAのプロモーションをつかさどる部署への転職は、さぞかし晴れがましく感じられたに違いない。しかし、世の中が「サッカーどころではない」状況となった今、逆に小暮氏は「サッカーの価値」や「サッカーの力」を考えるようになったという。最後は、当人の言葉で本稿を締めくくることにしたい。

「サッカー本来の価値って、プレーする選手や試合そのものであることは間違いないです。けれども、本質的なものに付随する価値というものについて、もっとフォーカスする機会があってもいいように思います。サッカーへのこだわりも大事ですが、サッカー以外からの発想も受け入れる土壌が、JFAにはあります。だからこそサッカー業界の歴が浅い僕が、日々できることをがむしゃらに取り組めるのかもしれないですね。僕自身、サッカーの力、スポーツの力を考える、良いきっかけになりました」

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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