連載:プエルトリコ野球から学ぶヒント

プエルトリコでもあった「投げすぎ」問題 エリート育成機関の基準とビジョンとは?

中島大輔
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躍進を支えるアカデミー

カルロス・ベルトラン・アカデミーには、プエルトリコの高校生年代のトップ選手180人が通う 【撮影:龍フェルケル】

 2010年代になり、アメリカ自治領プエルトリコの野球は“ルネサンス期”に突入した。

 現在メジャーリーグ屈指のショートであるフランシスコ・リンドア(インディアンス)とハビエル・バエス(カブス)が11年にMLBのドラフトで1巡目指名されると、翌年にはカルロス・コレアがプエルトリコ人として初めて全体1位でアストロズに入団した。投手ではエドウィン・ディアス(メッツ)が18年に最多セーブに輝き、ホセ・ベリオス(ツインズ)は昨季14勝を挙げている。

「今、プエルトリコの野球はピークに向かおうとしている。子どもたちが順調に成長しているからだ。練習環境もよくなった。我々のようなアカデミーが子どもたちの成長をサポートしている」

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40歳のエドウィン・マルドナード(写真)は、プエルトリコ代表のコーチを務めた経験もある 【撮影:龍フェルケル】

 そう話したのは、カルロス・ベルトラン・アカデミーでエグゼクティブ・ディレクター(校長)を務めるエドウィン・マルドナードだ。現役時代はMLBのマイナーリーグでプレーし、15年のプレミア12ではプエルトリコ代表のコーチを務めた。

 メジャー通算2725安打を放ったカルロス・ベルトランは11年秋、600万ドルの私財を投じて自らの名を冠したアカデミーを設立した。非営利組織で、政府の援助を受けて運営される。野球と学業で一定のレベルに到達した180人の高校生が島中から通い、卒業後にカレッジ(大学)進学やMLB入団を目指している。

 マルドナードによると、プエルトリコには野球に特化したアカデミーが約10校ある。

「プエルトリコのアカデミーにいるほとんどの子はエリート選手だ。我々の哲学は子どもたちを成長させることにある。ケガをさせず、未来に向けて成長させていきたい」

 マルドナードが誇らしげに語るように、過去10年のプエルトリコ野球の躍進はアカデミーによるところが大きい。彼らは将来有望な子どもたちを育てる環境を整えると同時に、成長の“障害”を取り除こうと取り組んでいる。

 後者の最たるものが、投手の「投げすぎ」問題だ。
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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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