無敗戴冠サリオスに世界のムーアも太鼓判 武豊5度目の2着「勝てると思ったが……」

スポーツナビ

「2歳のこの時期にこれだけの競馬ができる馬はそうはいない」

最後の直線、武豊騎乗のタイセイビジョン(青帽)が一瞬は迫るも、最後はサリオス(赤帽)が突き放してのゴール 【スポーツナビ】

 レースは藤岡佑介騎乗のビアンフェが予想通りにハナを主張し、前半1000mは57秒2。これはハイペースで話題になった前週のGI阪神JFでレシステンシアが踏んだ57秒5より0秒3も速い。この激流の中、サリオスは先行3番手を追走していた。

「ペースが速かったし、前にいる馬は最後に止まると思った」とは、中団で脚をタメていたタイセイビジョンの鞍上・武豊だ。事実、先行好位につけていた馬は軒並み、最後の直線坂で失速。逆に、外から満を持して追い込んだタイセイビジョンは、先に抜け出したサリオスを一気に差し切る勢いだった。武豊も「直線で前に向いたときは勝てると思ったけど……」と悲願の朝日杯Vを意識したほど。しかし、ここからが2歳馬離れしているというか、サリオスの末恐ろしいところだ。

「追ってからの反応が良かったし、最後はよく伸びてくれました。後ろの馬を寄せ付けなかったですね」とムーア。前走のサウジアラビアRCもそうだったが、このサリオスという馬は他馬に並ばれそうになってからが強い。タイセイビジョンが迫ったのも結局は一瞬のことで、最後はむしろ差を広げながらのゴールだった。

レース後、ムーアは集まったファンにサインのプレゼント 【スポーツナビ】

「先頭に立つと後ろの馬を待つというか、ジョッキーの指示を待つというか……。求められればその通りに伸びる馬なんですが、もっと自分から行ってくれればと思うところもありますね」

 サリオスのそんな性格に苦笑いを浮かべた堀調教師だが、後方2、3番手にいたグランレイ、タガノビューティーが3、4着に突っ込んでくるような典型的な追い込み天国の中、ただ1頭先行好位から、しかも後続を待つような競馬で完勝してしまうあたり、只者ではないことがより強調されている。そこは二冠馬ドゥラメンテ、2015年の年度代表馬モーリスをはじめ数々の名馬を育ててきた敏腕トレーナーも最大級の賛辞でサリオスの素質を評価している。

「馬体の方は6月の頃からしっかりして完成度が高いですし、もともと総合力の高い馬です。2歳のこの時期にこれだけの競馬ができる馬はそうはいない。この出会いに感謝したいですね」

スプリンターとしての資質も十分?

来春クラシック候補へ一番乗り、その一方で陣営はスプリンターとしての資質も見出している? 【スポーツナビ】

 来春の始動戦や目標について堀調教師は「馬の様子を見て、オーナーサイドと相談して決めたい」とだけにとどめたが、常識的に考えれば、まずは距離を延ばして皐月賞路線ということになるだろう。堀調教師もそこは「延ばすとしたら徐々に、ということになります」と答えている。しかし、それ以上に興味深かったのは「延ばすだけでなく、短いところも対応できると思います」と語ったことだ。これはつまり、トレーナーの目からはサリオスにスプリンターとしての資質も見出しているということだろうか?

 いずれにせよ、モーリスでマイル&2000mの2階級制覇を成し遂げた堀調教師だ。来年はアッと驚くようなローテを組んでくるのかもしれない。そして、歩む路線がいずれのものになろうと、サリオスが相当な器であることはムーアの次の言葉が太鼓判を押している。

「僕が競馬ファンだったら、この先もずっとサリオスのことを追い続けます。それくらい、この馬には必ず明るい未来が待っていると思います」

 王道のクラシックか、それとも短距離戦か――ムーアが語る“明るい未来”がより輝くのはどちらの路線になるだろうか。(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)

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