ちょっと早いジェッツのシーズン前半戦レビュー「金近の成長」「岳の献身」「田代の帰郷」【B MY HERO!】

B MY HERO! 特派員
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「LaLa arena TOKYO BAYの4階最上段の席でこれを書き始めています」(JIRO) 【(C) JIRO】

 Hello there! 今シーズン2度目のコラムを書かせていただきます、B MY HERO!特派員、千葉ジェッツブースターのJIROです。僕は今、LaLa arena TOKYO BAYの4階最上段の席でこれを書き始めています。このアリーナでの試合も徐々になじみが出てきました。試合開始90分前でもブースターの皆さんのワクワクが最上階まで伝わってきます。

 早いもので今シーズンも間もなく折り返し、相変わらず強いチーム、苦戦を強いられているチームなど様々な状況ではありますが、一般ブースターが感じとる千葉ジェッツの“今“を書いてみようと思います。

R of Hope

チームのピンチを自分の成長のきっかけにした金近廉 【(C) B.LEAGUE】

 開幕戦を新しい本拠地、LaLa arena TOKYO BAYで迎えた千葉ジェッツに、同地区最大の強敵でもある宇都宮ブレックスが立ちはだかり、初戦からオーバータイムにもつれ込む接戦を展開したのは記憶に新しいと思います。

 翌日のGame2で千葉ジェッツにいきなりの試練が訪れます。

 それは新加入のスタープレイヤー渡邊雄太選手の怪我でした。

 スリーポイントを放った際に少し接触がありバランスを崩して着地してしまい、足首を捻挫し数週間チームを離れることに…。

 今シーズン、バスケットボールの最高峰であるNBAから、日本に帰国しBリーグに挑戦することを発表、千葉ジェッツと契約しました。大きな期待がかかる中での怪我にブースターも心配を隠せませんでした。

 それでも千葉ジェッツは“Master of JETS富樫勇樹”の牽引もあり8勝1敗の好スタートを切ります。インサイドの要 ジョン・ムーニー選手、オールラウンダー D・J・ホグ選手、レインボースナイパー クリストファー・スミス選手など安定の活躍がある中で、このチームの主力の一人であることを証明しているのが若干21歳で身長196cmのシューター、金近廉選手です。

 東海大学在学中に日本代表デビュー、2022-23シーズン中に入団を発表し大きな話題になり昨シーズンデビューすると、そのビジュアルも相まって一気に人気者になり新人王も受賞。今シーズンは開幕前から新アリーナのお披露目イベントに出演するなど、ジェッツとしてもチームの顔としての活躍を期待しているのがわかりました。

 しかし決して順調なキャリアスタートをさせたわけではありません。シューターとしてスリーポイントを武器にしながらも厳しいチェックを受け、特に昨シーズン後半は本人も悩んでいるのがブースターでも感じ取れるほど確率を落としていたイメージです。ブースターの期待値が高い分、プレッシャーも強かったと思います。

 しかし今シーズン、トレバー・グリーソンHCに変わりオフェンスシステムが大きく変化した中で、徐々に金近選手が目覚めます。持ち前のスマートなシュートフォームから繰り出される最大の武器であるスリーポイントはもちろん、速攻ではダンクを見せるなどファンを魅了し、更に身体を張ってリバウンドに絡む姿はジェッツブースターの心を熱くさせます。オフェンスではオフボールスクリーンの使い方も向上し、ディフェンス意識も強くなり相手のキーマンとのマッチアップも増えてきました。ブースター仲間とも、金近廉の成長が今のジェッツの成績に繋がっているという話をしています。

 この急成長の要因は前述した”試練”、渡邊雄太選手の怪我だったと思います。

 どこかで富樫選手や渡邊選手、原選手に頼る意識が少なからずあったであろう中で、同ポジションの渡邊選手の早期離脱が、金近選手の中で責任感が強くなった瞬間かもしれません。上手くいくことばかりではありませんが、ひとつひとつのプレーに集中し熱を持ってプレーしているように感じ取れます。

 先日渡邊選手が復帰し、より一層思い切りの良さを感じさせるプレーで、12月11日の越谷戦では4Q 3点ビハインド残り1分を切ったシチュエーションで、同点打となるスリーポイントをヒットさせチームを救いました。

 この責任感の強さを前面に出しスキルセットを増やし、“自分が主役だ!”と言わんばかりのプレーを続けることで、真のエースとなる日もそう遠くはないはずです。

 このホームでの群馬クレインサンダーズ戦で小川麻斗選手も復調の兆しが見えてきました。彼もまた若手有望株でジェッツと2年契約を交わし大きく期待されている一人ですが、思うようなプレーが出来ず悩んでいるようにも見えていました。12月14日の試合ではクリストファー・スミス選手と共にその日のヒーローに選ばれると、“麻斗コール”で笑顔になり、少しホッとした表情だったのが印象に残っています。

 金近選手、小川選手だけでなく、復帰を控える二上耀選手、トビンマーカス海舟選手、菅野ブルース選手など千葉ジェッツヤングコアが、それぞれの責任感を強くもち、良い意味で兄貴分たちに頼らなくなった時、新しい千葉ジェッツの形が見えてくるはずです。

背中で伝える優しい戦士

常に体を張るのが“推し”こと、荒尾岳の真骨頂 【(C) B.LEAGUE】

 流行りの“推し”を僕の中で一人選ぶとしたら、僕がNBLを見始めた頃に入団した荒尾岳選手、一択です。名門トヨタ自動車アルバルク東京(現アルバルク東京)から移籍してきた日本人ビッグマンは、日本代表にも選出されるほどの選手でした。

 千葉ジェッツ加入後は、主にディフェンスで身体を張り数多くの外国籍ビッグマンとマッチアップ。当時ジェフ・ギブス選手(現越谷アルファーズ)とのローポストでのぶつかり合いを目の当たりにした僕は、一気に荒尾選手のファンになりました。
※ここから先は親しみをこめて“岳”と書かせていただきます。

 Bリーグが開幕してから千葉ジェッツではあまりプレータイムを得られず、千葉ジェッツで5シーズン過ごした後に移籍。滋賀、広島、仙台と渡り歩き各チームでもインサイドで身体を張る姿を目にしました。

 2018-19シーズン滋賀レイクス在籍時に、青山学院記念館で行われたサンロッカーズ渋谷との試合で岳を観に行きました。終始ディフェンス強度を保ちながらプレーを続けた岳は、その試合の終盤でファウルアウト。会場出入口でたまたま岳に会った時に僕は「久しぶりに見たインサイドディフェンス、しびれたよ~」と声を掛けると、岳は「いや~ちょっとやりすぎました~」と照れくさそうに笑って応えてくれた思い出もあります。

 そんな岳が千葉ジェッツ史上初の出戻りプレイヤーとして登録したのが2022-23シーズン。当時は“ベテランメンター枠”で獲得したと思ったブースターが多かったのではないでしょうか。しかしシーズンが始まると、アルバルク時代のHCでもありジェッツで再会した当時のHCジョン・パトリック氏のもと、思っていた以上にフロア上での姿を見ることになります。

 戦場と言われるインサイドで戦い仕事を終えると、サウナから出てきたかのように汗だくの姿でベンチに戻りどっしり座る姿がブースターの心を掴んでいきます。岳自身も「あれ…俺、こんなに出るの…?」といった表情にも見えていました(笑)。

 それでも選手である以上、コートに立ち仕事をすることは喜びの一つだと思います。ジェッツに戻った2023年、チームは天皇杯を制覇。岳は「今までの天皇杯優勝はベンチから見ていましたが、今回は試合に出場して優勝できたことが嬉しい」とどこかのインタビューで答えていたのが印象的でした。

 得点は取れなくても、岳にできる仕事をこなす姿がチームにもジェッツブースターにも響いています。「岳さんのディフェンスを見て、こういうディフェンスじゃなきゃ勝てないと思って…」と原選手が述べたように、ベテランである岳が頑張り続ける姿は、今のチームにとって気持の面でも支えになり、マイケル・オウ選手やトビンマーカス海舟選手といった若手インサイド陣にとって最高のお手本になっています。

 今シーズンが始まる前に一度自由契約交渉リストに載り移籍も覚悟しましたが、それでもまた千葉ジェッツと契約してくれた岳は今シーズンもしっかりとフロアに立ち、ずぶ濡れになりながらも変わらず若い世代にその大きな背中を見せつけチームにエナジーをもたらし、ローポストディフェンス、ボックスアウト、スクリナー、スペーシングなど、インサイドで生き残るための基本スキルを忠実に実行し、“地味な仕事”でチームの勝利に大きく貢献しています。

 今シーズンは現在平均0.3得点 0.7リバウンドですが、平均貢献度が0.7 +/-は0.8と岳がフロアにいる時間帯はゲームを安定させ、バスケットボールはスタッツに残る事だけが全てではないということを証明しています。

 今シーズンのジェッツが負けた試合はオフェンスリバウンドを取られセカンドチャンスに繋げられている事で流れを掴みきれないケースが多いと感じます。さらにチームは現在、D・J・ホグ選手、ジョン・ムーニー選手をケガで欠き、渡邊選手も12月11日の越谷戦で肩を負傷、ジェッツのインサイドは台所事情が厳しい状況です。

 そんな中で、荒尾岳という日本人ビッグマンの存在は、今後シーズンが進むにつれてより一層大切な存在になっていきます。優しい眼差しでベンチから若手の成長を見守り、コーチTGから声がかかれば、仕事に行く父のようにゆっくりとフロアに向かい、ベンチに戻ってくる頃には“サウナ上がり”のように真っ赤になって戻ってきます。それだけ激しい戦いをしている“推し”荒尾岳を、僕はこれからも心の底から応援し続けていきます。

HOME TOWN FUNABASHI

船橋出身の田代直希が千葉ジェッツで早くも存在感をアップ 【(C) B.LEAGUE】

 ご存知の通り、今シーズンからホームをLaLa arena TOKYO BAYに移しシーズンがスタートしました。バスケットボールのリーグがここまで大きくなり、僕が生まれた船橋市にチームが誕生し、10,000人以上が集まるアリーナまで完成しました。そんな千葉ジェッツに強い気持ちで移籍してきた選手がいます。背番号4番の田代直希選手です。

 地元船橋市出身で、中学生の頃はららぽーとで映画を見るなどでよく遊んでいたというエピソードもあります。田代選手は既に千葉ジェッツでも大人気選手の一人となりました。人気の理由は簡単、その人柄です。インタビューでの言葉から伝わる熱い気持ちや、チームメイトやスタッフへの気遣いなど全てがジェッツブースターの心を掴んでいます。“船橋の為に全力を尽くす”の言葉通りプレーでも集中し、怪我人が多いチームを救う活躍を続けています。

 ひときわ地元への思いが強い田代選手を地元開催のオールスターに送るべく、千葉ジェッツブースターが一丸となりON FIREで投票。こちらも地元船橋出身で田代選手とは同級生の原修太選手と共に残りの二枠で出場が決定しました。この田代選手の票には、長く在籍した琉球ゴールデンキングスのブースターさんの票も入っていると思います。それだけ人を惹きつける人柄を持っている証拠がこのオールスター出場に繋がったと思います。

 千葉ジェッツからは、ファン投票で富樫選手と渡邊選手、そして原選手と田代選手の4選手が出場します。数少ない枠の中で4選手は多いですが、市立船橋高校出身の宇都宮ブレックス遠藤選手も出場が決定し、船橋にゆかりのある選手が集うオールスターなので、とても楽しみにしています。

大きな力

スタージェッツの声援は4階席まで届いてます 【(C) B.LEAGUE】

 千葉ジェッツは現在、12月15日の群馬クレインサンダーズ戦を終えて16勝5敗。今シーズン初めてホームで負けてしまいましたが、ホームでは10勝1敗と圧倒的強さです。この成績の要因は10,000人を超えるブースターの熱い応援があるからこそだと思います。

 ジェッツのチアリーダー“スタージェッツ”が毎試合最初から最後まで声を出し続け、GO JETSをこだまさせます。開幕戦以来、久しぶりに4階最上段で観戦しましたが、彼女たちの声は最上段まで届いています。この声が響き伝わり最上段席までもが全体的にフロアまで声を振り下ろした時、どこにも負けない熱狂的なホームになれるポテンシャルがあると感じました。声を出すことは義務ではないし観戦スタイルは自由ですが、最後の1秒1点を争う展開で10,000人が総立ちするような瞬間を僕は夢見ています。

 怪我人が多く、予想されていたほど順風満帆なシーズンではない千葉ジェッツですが、新加入のジョナサン・ウイリアムス選手も素晴らしいハッスルを見せてくれています。チーム全員でこの危機を乗り越えて更なる絆が生まれた時、チャンピオンリングが見えてくると思います。

 今チームはまだまだ旅の途中です。今後もシーズンが進む中でトラブルや辛いこと、そして楽しいことも嬉しいことも沢山あるでしょう。

 ただ、どんなことがあろうといつも思うことは一つです。

「だから、千葉ジェッツは楽しい」

 僕たちブースターも一喜一憂しながら終着点がどこになろうと、チームと一緒に旅を続けたいと思います。

 それでは、またどこかで。

Come fly with me!
GO JETS!

Kenichi JIRO Yoshii(B MY HERO!特派員)

【(C) B.LEAGUE】

1981年1月28日生
千葉ジェッツブースター、ジェッツブースターで結成されたバスケットボールチーム『ROCKS』の代表も務める。 いつかバスケットボールの新しい大会を開催し、街にバスケットゴールを増やすことを夢見ている小太りおじさん。
・趣味:ドライブ、飲み会、チェアリング
・お気に入りの選手:ショーン・エリオット(元サンアントニオ・スパーズ他)、デビン・ヴァセル(スパーズ)、荒尾岳(千葉ジェッツ)、小川麻斗(千葉ジェッツ)


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著者プロフィール

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