侍Jをけん引した「Wヒロト」の凄さは? 今季ブレーク選手の飛躍を予感していた男たち【スピードボール編】 

加賀一輝
 フジテレビ系『すぽると!』内の企画「プロ野球100人分の1位」が今年も放映中だ。同企画はプロ野球選手が各部門のナンバーワンプレーヤーを挙げるもの。各部門の1位が発表されると毎年トレンドワードに入るほどの話題となり、選手からも目標にされていると聞く。

 2011年、無名時代の柳田悠岐(ソフトバンク)を井端弘和氏(侍ジャパン監督)が紹介したのはよく知られた話。今のナンバーワン選手を確認するだけでなく、近未来のナンバーワンを見つけられるのもこの企画の魅力の一つだ。

 本稿では昨年の少数意見から、今季飛躍した選手についてのコメントを拾っていく。かつての井端氏のように「慧眼」を披露したのは誰なのか。スピードボール編を見ていこう。

昨季MVP右腕が「怖い」と語るボール

いまや阪神のエース格になった才木。同僚の村上は最初からスピードボール部門で挙げることを決めていたそうだ 【写真は共同】

「ずっと前から決まってたんですよ。才木浩人(阪神)しかいないです」

 こう語っていたのは阪神のチームメイトである村上頌樹。昨季MVPに輝いた右腕が断言するほど、才木のボールは際立っていたという。

「キャッチボールしてて怖いんですよ、マジで。すっごい球投げてくるんで、『俺今日死ぬんちゃうか』『頼むぞ俺』と思いながら(笑)」

 最速157キロを誇るストレートはいわゆる「ホップ系」の球筋で、侍ジャパンの一員として投げたプレミア12では1分あたりの回転数が2600〜2700台を記録。これはメジャーリーグの平均を大きく超えており、まさにワールドクラスのボールだ。村上が「怖い」と表現するのも無理はない。

「球が速くて伸びてくるので、怖いんですよね。他の人とキャッチボールして、才木とまた戻ったら怖いですもん。なので絶対スピード部門は才木やと思ってました。ここだけは決めてました」

 ストレートの質の高さは入団当初から評価されてきた一方、それが実戦で100%発揮されるまでは時間を要してきた。右肘のトミー・ジョン手術や育成落ちも経験した上で、這い上がってきた。規定投球回に到達したのは、意外にも今季が初めて。2桁勝利(13勝)も初めてと、高卒8年目にして初物づくしのシーズンを送った。

 ちなみに、村上はこうも語っている。

「真似できるならあんなスピードボール投げたいですよ。でも投げれないんで、そこは我慢します」

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著者プロフィール

1988年3月6日、愛知県生まれ。成蹊大学卒業後、一般企業を経て独立。ライティング、MCなど幅広く活動する。2016年〜23年まで『スポーツナビ』にて編集・編成を担当。在職中に五輪・パラリンピックへの派遣、『Number』『文春オンライン』等への寄稿を経験。趣味は草野球で、1週間で20イニング投げることも。

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