令和の菊でも魅せた武豊の神騎乗V! 調教師絶賛「ひと言で騎手が上手い」

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菊花賞史に残る名騎乗だ

武豊の“神騎乗”に友道調教師も絶賛、スタンドから大きな声援が送られた 【スポーツナビ】

 2019年、令和最初の菊花賞は、皐月賞、日本ダービーを制した春のクラシックホース2頭に加えて、東の菊花賞トライアル勝ち馬までもが不在。もっと言えば、春二冠で掲示板に入った上位馬はヴェロックスとニシノデイジーのわずか2頭という、なんとも寂しいメンバー構成だった。オッズの上ではヴェロックスが抜けた1番人気ではあったが、これはいわゆる「押し出された1番人気」というやつだろう。決定的な主役がいない菊だった。もちろん、春惜敗続きだったヴェロックスが菊の大輪をつかむこともまた大きなドラマではあったとは思うが、それよりも競馬の神様は新たなヒーローの誕生を祝福した。いや、この場合、もはや「神=武豊」と言った方がいいのかもしれないけれど……。

 そんな神騎乗を絶賛したのは、13頭目の挑戦にして菊花賞を初勝利し、史上13人目の牡馬クラシック完全制覇を達成した友道調教師だった。レース後の共同インタビューでマイクを向けられると、いの一番に口から出た言葉がこうだった。

「ひと言で言えば、ジョッキーが上手いですね」

 これは、全国の競馬ファンの感想を代弁したと言っていい。ダービーに続きニシノデイジー馬券を握っていた浅はかな僕も「やっぱ淀の長距離はユタカ様だわ……」と後悔しても後の祭り。でも、こうして財布がだいぶ薄くなってしまっても、菊花賞史に残る名騎乗を見ることができたのだから良かった、とむしろ精神的にはプラスに思えてしまうところもまた、天才・武豊の魅力なのだろう。馬券はしこたまやられたけど、ユタカさんが勝ったから良かったよ、と。(余談ながら、ゴール後のスタンドからの声援も異様に大きかったような)

開花した素質馬ワールドプレミア、長距離のスターに

まだまだ成長が見込めるワールドプレミア、令和の長距離スターとなるか 【スポーツナビ】

 さて、ジョッキーにばかりスポットを当ててしまったが、もちろんどれだけ武豊が神騎乗をしたとしても、馬が動かなければ勝利はない。体質や気性面の幼さから春は涙を飲んだ素質馬が、ついにその能力を花開かせた菊花賞でもある。と言って、まだキャリア6戦。春のほとんどを故障で休養していたこともあり、素質開花といっても八分咲き。ワールドプレミアが満開となるのは来年以降だろう。

「走りそのものが良くなっていますね。全身を使えるようになってきましたし、トビも大きくなっている。もっと成長してくれると思います」と武豊。また、友道調教師は今後のレースについては未定としながらも、これからの可能性についてこう言及している。

「本当は春のGIから活躍できると思っていた馬でしたが、何とか秋に間に合って良かったですね。今日みたいに長距離のレースがいいと思うので、長距離で活躍できる馬になってほしい」

 主役不在と思われた中から現れたニューヒーロー候補。武豊とのコンビで正真正銘、令和の主役、長距離のスターとなるか。その名のごとく日本を飛び立ちワールドクラスへと羽ばたいてほしい。(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)

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