マドリーダービーの「特別な空間」 ラ・リーガ探訪記(4)

スポーツナビ

欧州でも話題はラグビーに

ツアー最終日はマッチデー。リーガの熱を体感することができた 【Getty Images】

「ジャパン、ジャパン! すばらしい勝利! イングランドでもトップニュースだよ。アイルランドは、とても悲しんでる」。

「日本中が、騒ぎになっているようだよ」。そう答えると、彼も笑顔で何度もうなずいた。

 ラ・リーガによるメディアツアー最終日はマッチデー。ツアーのトリを飾るのは、ヘタフェvs.バルセロナ、アトレティコ・マドリーvs.レアル・マドリーの生観戦だ。件の会話は、ヘタフェのホームスタジアム、アルフォンソ・ペレスにて、隣に座る英国人記者からかけられたもの。ラグビー日本代表の快挙は、欧州記者を十二分に驚かせたようだ。

ヘタフェの本拠地、アルフォンソ・ペレス。小規模なスタジアムでも観客の熱気が試合を盛り上げる 【スポーツナビ】

 まずは我々にとっての第一試合、ヘタフェvs.バルセロナ。2日前にヘタフェによるプレゼンテーションを受けた影響もあってか、一行はどちらかというとヘタフェ寄りだ。米国人記者が「ヘ・タ・フェ!」とチャントに合わせて声をあげれば、英国人記者も「ノーメッシ!」(この試合、リオネル・メッシはベンチ外)と叫ぶ。一方で、アルゼンチン人記者とメキシコ人記者は、メモを取りながらじっくりと観戦。取っている行動はバラバラながらも、フットボールを存分に楽しむ気持ちは皆同じであった。

 試合は、バルセロナが2-0で勝利。ヘタフェのハイプレスと球際での激しさに苦しんだが、前半41分、GKマルク・アンドレ・テア・シュテーゲンからのロングボールに抜け出したルイス・スアレスが決めると、後半開始早々にも追加点。終盤に退場者を出したものの逃げ切った。

 ただ、未だにヘタフェサポーターのブーイングの音が、耳にこびりついて離れない。約15,000人の熱烈な応援は、確かに選手たちに力を与え、スコア以上の熱戦を演出していた。

マドリーダービーは「特別な空間」

クルトワの記念碑はゴミで埋め尽くされていた 【スポーツナビ】

 コンパクトなスタジアムで、ラ・リーガの「熱」を感じた一行。その後は、マドリーダービーを控えるA・マドリーの巨大な本拠地ワンダ・メトロポリターノへと移動した。試合開始2時間半前の到着だったが、会場付近は人、人、人。レッドとホワイトのストライプが入った、おなじみのユニフォームを身にまとい、A・マドリーサポーターが次々と会場へと吸い込まれていく。また、スタジアム周辺には、過去の所属選手の記念碑が通路に刻み込まれているのだが、対戦相手であるR・マドリーへと移籍したティボー・クルトワには、痛烈な「お返し」がなされていた。
 試合開始直前、席に着くと、何とも言えない高揚感が身を包んでいた。特にどちらのサポーターというわけではないのだが、会場の規模、音響、そして醸し出される雰囲気が、自らが「特別な空間」にいることを感じさせてくれる。試合開始直前、一面、赤に染まった観客席のサポーターたちが一斉に歌い始める。響き渡る「アトレティ」の大合唱。隣に座るアラブ人記者とともに、試合にのめり込んでいった。

 試合は、両チームとも「負けたくない」という意志が前面に出た展開となった。序盤、8分に訪れたA・マドリーの決定機、ジョアン・フェリックスが右足で放ったシュートは、惜しくもゴール左に外れる。これが決まっていれば、新たなスターの誕生の日に立ち会えたのかもしれない。以降はこう着状態が続き、後半30分、R・マドリーのカリム・ベンゼマが放ったヘディングシュートも、GKヤン・オブラクが好セーブ。結局、両チームとも決定機を多く作り出すことはできず、スコアレスドローでの決着となった。

 試合を終えたのは、現地時間で23時を回ったところ。大半の記者が翌日朝の便で帰国ということもあり、急ぎ帰路へ着いた。

 24時過ぎにホテルに戻ると、ロビーにて各国の記者とともに別れを惜しんだ。24日の到着から28日まで、5日間をともにした。さまざまな情報交換とサッカー談義を行い、言葉の壁を越えた仲間になれた、と思う。

 別れ際、インド人記者にも、米国人記者にもこう声をかけられた。「来年は東京だ。楽しみだね」。世界各国から期待を込めてやってくる人々を前に、我々は何を見せられるだろうか。

(取材・文:大迫拓郎/スポーツナビ)
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント