ルイス・ガルシア、久保を語る ラ・リーガ探訪記(3)

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Jリーグ、アジア市場のライバルは

かつての名選手がアンバサダーとして集うメディアツアー。久保についても話を聞くことができた 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】

 ラ・リーガによるメディアツアー3日目(現地時間26日)の夜、当初は未定となっていたスケジュールに、予定が入った。ラ・リーガがスポンサー向けに主催するリーグアンバサダーのイベントだ。さすがにラ・リーガともなると、アンバサダーも豪華絢爛。元バルセロナのカルロス・プジョル、元レアル・マドリーのフェルナンド・レドンド等、多くの名選手が顔をそろえる。マドリード市民憩いの場、エル・レティーロ公園にて行われたイベントには、アンバサダー、スポンサー関係者をはじめ、芸能人も多く訪れるなど、華やかなイベントとなった。

華やかに装飾された会場。イベント中は多くの関係者で埋め尽くされた 【スポーツナビ】

 そうしたイベントの中で、各国記者から成るメディアツアー参加者は、欧州、アジア、アメリカの3大陸に大別され、大陸ごとにラ・リーガのメインスポンサーを務める企業関係者、そして、数人のアンバサダーを囲む形で話を聞く流れとなった。

 スポンサー数社と話をしてみると、スポンサーメリットとして出てくるキーワードは、「世界数十億のサッカーファンにアプローチできること」、そして、「アジア市場(特に中国とインド)」だ。前者は、やはりバルセロナやレアル・マドリ―といった影響力の大きなクラブを要することが、スポンサーにとって大きな魅力となる。また、世界的な名選手がいることも、メリットの一つであろう。リーガ・スポンサーである「REXONA」社は、クリスティアーノ・ロナウド(現ユベントス)と10年間にわたって契約を続け、計り知れないマーケティング効果を得たと語ってくれた。

ラ・リーガのメインスポンサーには数々の大企業が名を連ねる 【スポーツナビ】

 そして、次がアジア市場だ。スペインに来てからというもの、「チャイナ」という単語を聞かなかったアジェンダは一つも存在しない。ある企業関係者は、中国市場が「トッププライオリティー」であると、明確に答えていた。巨大市場である中国、その中でも抜群の人気を誇るラ・リーガの力を借りることは、大きなマーケティング効果を発揮するということだ。

 では、日本は? 聞いてみた。「Jリーグを知っているか?」。答えはNo。聞き方が悪かったせいもあるが、Jリーグがアジアに影響を及ぼすリーグとなっていくには、こうした巨大な相手と競っていく必要があるという現実も突き付けられた。

「マジョルカで1年と言わず2年」

セレッソ大阪でもプレーしたフォルランもアンバサダーの一人 【スポーツナビ】

 スポンサー各社へのインタビューを終えた後、限られた時間(かつ質問は一問!)ではあったが、アンバサダー数名に話を聞くことができた。一人目がルイス・ガルシア。アトレティコ・マドリ―、リバプールで活躍した左足の技巧派に、久保建英(マジョルカ)の印象を聞いた。ルイス・ガルシアは前のめりに語る。

「(久保は)すばらしい選手。特に右サイドでの動きが好きだね。少し時間が必要かもしれないが、今のスタイルを続けていけば、マジョルカにとって、必要な選手になるだろう」

 そして、こう続けた。

「(トップでプレーできるかは)彼次第だ。とても若いし、1、2年のマジョルカでの経験は彼にとっていいものになるだろう。彼の年齢で試合に長い時間出続けることも重要だと思う。だから1年と言わず、2年と経験を積むといい。(レアル・マドリーからソシエダにレンタル中のマルティン・)ウーデゴールのように、経験を積んで輝く時がくるよ」

 ルイス・ガルシアは、特に「長い時間、出場すること」「継続すること」を強調していた。バルセロナの下部組織で育ち、複数のレンタル移籍によって成長した彼だからこその意見かもしれない。

 二人目は、フレデリック・カヌーテ。セビージャで活躍し、晩年は中国でもプレーしたストライカーに、広く日本人選手の印象を聞いた。「日本人選手は、全体的にテクニックが高いという印象だ。国際的なステージでもいつも印象的なパフォーマンスをみせているよね。(北京国安時代に)広島などのクラブと、試合をしたが、常に良いプレーをしていた」。一方で課題も口にする。

「向上すべき点としては、効率性だ。どのように多くのゴールを奪うか、ゴール前で仕留めきれるかという部分の効率性。最終的にはゴールを奪うという部分がとても重要だからね」

 所属したどのクラブでも、貴重な得点源として活躍してきた男の言葉は確かに真理である。

 インドネシア、インドの記者は、ルイス・ガルシアへの質問内容が丸かぶり。その質問とは、「どうすれば、ラ・リーガのようなリーグに選手を輩出することができるのか」。インドネシアの記者は、質問の最後に「わたしは、知りたいんだ」とも付け加えていた。

 ルイス・ガルシアは、多くの要素(ピッチ内外での組織力、コンパクトなディフェンス等々)を挙げつつも、モダンになること、ディシプリン(規律)の重要性を説いていた。国内リーグが盛り上がりを見せているインドネシア、インドだが、飛躍へのきっかけを探っているところだろう。

 あわただしく過ぎたインタビューの後、イベントが開始され、華やかな雰囲気の中、宴は夜遅くまで続いた。

 スペインに到着して以来、ラ・リーガの持つ大きなパワーと、人々の生活への浸透度には驚かされ続けている。週末は世界に名だたるダービーマッチである「マドリーダービー」が待っている。街はどのような雰囲気に包まれるのか。楽しみでならない。

(取材・文:大迫拓郎/スポーツナビ)
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