有森裕子が語る「夏レースの戦い方」 暑さ厳しい世界陸上で上位に入るには?

折山淑美
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夏のレースでも好成績を残してきた有森裕子氏に、暑さの中でのレース戦略を聞いた 【写真:青木紘二/アフロスポーツ】

 陸上の第17回世界選手権(カタール・ドーハ)が、27日に開幕する。初日の現地23時59分(日本時間28日5時59分)からは女子マラソンが行われ、日本からは谷本観月(天満屋)、池満綾乃(鹿児島銀行)、中野円花(ノーリツ)がエントリー。深夜帯のレースとはいえ厳しい暑さが予想されるなか、どんなレース展開となるのだろうか。

 その展望と酷暑におけるレースの進め方を、1992年バルセロナ五輪銀、96年アトランタ五輪銅の2大会連続でメダルを獲得した有森裕子氏に語ってもらった。(取材日:9月10日)

日の丸を背負うことは貴重な経験に

世界陸上ドーハ大会の女子マラソンに出場する(左から)池満綾乃、谷本観月、中野円花。3人とも初の代表となる 【写真は共同】

 今回の世界選手権のマラソンに出場するのは、谷本観月さんと池満綾乃さん、中野円花さんの3名ですが、全員がマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)出場資格を持った中での世界選手権出場。それぞれに自分たちのマラソンに対する価値観や、次を見据えたうえでの選択でもあると思うので、尊重すべきものだと思います。日の丸を背負って走るという経験は少数の人しかできないものだけに、彼女たちにとっては貴重なものになるでしょう。

 その中でも谷本さんはまだ24歳と若く、東京の次の五輪も狙える年代で面白い選手だと感じています。彼女が1時間11分02秒の自己新で5位になった昨年の山陽女子ロードレースはかなり暑い条件のレースでした。所属が名門の天満屋でしっかり練習をしているだろうし、地に持っている体力はありそうだなと感じました。身長も153センチとコンパクトな体ですし、暑さにも弱くない印象もありました。

 ハーフのベストがまだ11分台なので、できれば10分を切るところまでは持っていってほしいですが、暑さを味方にして入賞を目指してくれたらと思います。池満さんと中野さんはともに28歳での初代表ですが、自分の力をしっかり出して走り、世界とはどういうものかをチームの後輩たちに伝える役割も果たしてもらえたらと思います。

競技への意識が変わったある大会

91年8月、世界陸上東京大会の女子マラソンで快走する有森氏(左) 【写真は共同】

 3人とも初出場ですが、私の世界大会初出場は1991年の世界選手権東京大会でした。地元開催だった上に日本最高記録保持者として追われる立場だったので、すごいプレッシャーがかかっていました。
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著者プロフィール

1953年1月26日長野県生まれ。神奈川大学工学部卒業後、『週刊プレイボーイ』『月刊プレイボーイ』『Number』『Sportiva』ほかで活躍中の「アマチュアスポーツ」専門ライター。著書『誰よりも遠くへ―原田雅彦と男達の熱き闘い―』(集英社)『高橋尚子 金メダルへの絆』(構成/日本文芸社)『船木和喜をK点まで運んだ3つの風』(学習研究社)『眠らないウサギ―井上康生の柔道一直線!』(創美社)『末続慎吾×高野進--栄光への助走 日本人でも世界と戦える! 』(集英社)『泳げ!北島ッ 金メダルまでの軌跡』(太田出版)ほか多数。

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