森重真人の覚悟と健太トーキョーの進化「意図的に優勝という言葉を発している」
厳しいだけではない監督のマネジメント
G大阪時代に3冠を達成した長谷川監督(右)。昨季から就任したFC東京で、その経験を存分に発揮し、隙のないチームへと変貌させてきた 【(C)F.C.TOKYO】
それは日々、随所に感じられますよね。負けたあとの取り組み方や言葉の掛け方、勝ったあとの気の引き締め方とか、連戦中のチームのまとめ方もそう。やっぱり、素晴らしいんですよね、練習中の雰囲気の作り方なんかも。「おまえら、ちゃんと気を引き締めてやれよ」なんて言葉で言わなくても、ピリッとした空気を作れるというか。
健太さんもこれまで、いろんなチームで指揮を執ってきて、こうしたらうまくいく、これをやったらダメだ、といった経験を積んでこられたんだと思う。そうした健太さんの「さすがだな」と感じさせるものに、僕らは日々触れながらトレーニングをしています。
――ただ厳しいだけの監督ではない、と。
本当にそうですよ。厳しいだけじゃない。いろいろな引き出しがあると思います。
――森重選手の話をすると、この1年ほど、インタビューなどで「優勝」という言葉を口にすることが多いように感じます。機が熟してきたと感じているからかもしれませんが、一方で、あえて意図的に言葉にしている面もあるんですか?
やっぱり10年も在籍していると、雰囲気が変わってきたな、っていうのを感じることがあるんですよね。今は慶悟がキャプテンとして、チームのことを考えながら、いろいろと発信してくれているけれど、慶悟だけに任せればいいわけじゃない。経験のある選手が言葉にして言うことで、みんなに意識してもらうことも大事だなと思ったので、あえてというか、意識的に発している部分は、確かにあります。
――周りに「優勝」を意識させたい、と。
それは選手に対してだけでなく、クラブに対しても、ファン・サポーターに対してもそう。やっぱり優勝するチームって、みんなが本気だと思うし、優勝にふさわしいチームだな、っていう雰囲気があるもの。だから、そうした雰囲気を作り上げていかないといけないな、っていう想いがあります。
羽生、石川がフロントにいることの意義
ともに戦ってきた先輩たちが引退後、クラブに残ってチームを良くするために働く――理想のサイクルに入ってきた、と森重は言う 【新井賢一】
そうですね(笑)。やっぱり若い頃って、周りに対して言いにくいじゃないですか。まずは自分がやらなきゃいけないし。もちろん、ベテランになったからといって、選手の立場でいろんなことに口を出すのは良いことではないかもしれないけれど、「一緒に、ふさわしいチームになりましょう」と発信するのは、大事なことだと僕は思います。
いくら選手が頑張っても、優勝する体制が整っていなければ、難しいですからね。クラブ全体でしっかりと準備し、優勝するのにふさわしいチームになっていきたい。それもあって、いろんなところに語り掛けるようにはしています。
――そういう意味で、これまで一緒に戦ってきた羽生直剛さん(強化部スカウト担当)や石川直宏さん(FC東京クラブコミュニケーター)がフロントに入ったのは、心強かったり、互いに要求しやすかったりするのでは?
本当にそうで、選手の気持ちを理解していて、現場に足りないものが何かも分かっている人たちがフロントに入ったのは、大きいです。ただ、それも東京の歴史が作り上げてきたものというか。東京で選手として活躍した人がフロントに入ってクラブを良くし、その下ではまた新たな選手が活躍する――そんなサイクルにようやく入ってきたのかなって。ニュウ(羽生)さんとナオ(石川)さんがフロントに入ったことで、クラブのあるべき姿に近づいてきたんじゃないかな、って感じています。それこそ鹿島なんてそうじゃないですか。
――確かにそうですね。監督だって鹿島の選手として活躍した人が就任する時代に入ってきましたね。
一時代を築いた選手が引退後、チームを良くするためにクラブで働くというのは、クラブを成長させていく上でも、素晴らしいこと。なんだかんだ言っても、東京はクラブ創設20年なので、まだまだこれから。そうしたサイクルがさらに確立されていけば、東京はもっともっと良くなっていくと思います。
(企画構成:YOJI-GEN)
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1987年5月21日生まれ。広島県広島市出身。FC東京所属。攻撃の起点にもなれるセンスあふれるセンターバック。広島高陽FCからサンフレッチェ広島ジュニアユースを経て広島皆実高に進学し、2006年に大分トリニータに加入。10年にFC東京へ移籍した。日本代表として14年ブラジル・ワールドカップに出場。愛称は「モリゲ」。