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シント=トロイデン買収の真相
第4回 プロジェクトにおける3つの狙い

ベルギー1部のシント=トロイデンVV(STVV)をDMM.comが買収した計画の始動から今夏まで、激動の3年半の舞台裏に迫った。

立石が思い描いていた当初の関わり方

STVV買収の話が進んでいた17年、立石はあくまでアドバイザーとして関わるつもりだった
STVV買収の話が進んでいた17年、立石はあくまでアドバイザーとして関わるつもりだった【飯尾篤史】

 STVV買収の話が進んでいた2017年、FC東京は激動のただ中にあった。


 成績不振のため、2シーズン連続して監督を途中解任。篠田善之監督の後任にコーチの安間貴義を昇格させ、立て直しを図っていた。


 STVV買収に関する報告は、立石敬之のもとにも届いており、アドバイスをすることはあったが、FC東京のGM(ゼネラルマネージャー)という立場に変わりはない。このプロジェクトに、自身が本格的に関わることはないと考えていた。


 仮に買収が成功したとしても、あくまでもアドバイザーという立場で関わればいい、と思っていたのだ。


「そもそも、そんなに簡単に買収できるとも思っていませんでしたから。もし成功したら、そのときは、FC東京とそのクラブが業務提携を結び、選手やスタッフを送り込んで経験を積ませたりして、FC東京の強化に役立てたい、と考えていたんです」


 そのため、買収交渉のミッションは、大学の後輩であり、30年来の付き合いである山形伸之に託した。さらに、強化担当者としてアンドレ・ピントを紹介し、FC東京での仕事に集中していた。

夢を実現させるためのラストピース

 現役時代にボランチとしてプレーした立石は、国見高校時代に全国高校サッカー選手権で優勝を果たすと、創価大時代にブラジルやアルゼンチンに留学して経験を積んだ。大学卒業後はブラジルのECノロエスチでプレーし、帰国後はベルマーレ平塚、東京ガス(のちのFC東京)、大分トリニータでプレー。1999年限りで現役から退くと、大分でコーチや強化部長などを歴任。06年にはイタリアのエラス・ヴェローナFCでコーチを務め、07年からはFC東京強化部に所属していた。


「もともと僕は監督をやりたかったから、その準備をしていたんです。そうしたら2010年にFC東京がJ2に降格してしまい、強化部長が代わることになった。そこで僕が後任に任命され、再建を託されたんです」


 J2で迎えた11年、すでに引退していたブラジル人FWのルーカスを現役に復帰させ、シーズン途中に獲得すると、そのルーカスの活躍もあり、1年でのJ1復帰に成功する。


 その後、ランコ・ポポヴィッチ監督、マッシモ・フィッカデンティ監督を招へいするとともに、渡邉千真、太田宏介、長谷川アーリアジャスール、東慶悟らを獲得し、チームを編成していく。15年からはGMに就任し、普及・育成・強化の各分門を束ね、中・長期的なクラブ戦略を担った。


「当時、FC東京は2020年の東京オリンピックに選手を送り込もうと、予算を組んでU-23チームを作った。それで久保建英、岡崎慎、波多野豪、平川怜と、ユースから何人も昇格させた。一方、トップチームは苦しんでいたんだけれど、選手はそろってきていたから、リーグ優勝経験のある監督を呼んで、勝負を掛けようと思っていたんです」

立石(右)はFC東京のGMとして、中・長期的な目線でチーム作りを進めていた
立石(右)はFC東京のGMとして、中・長期的な目線でチーム作りを進めていた【写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ】

 ターゲットは、14年シーズンにJ1リーグ、ヤマザキナビスコカップ(現ルヴァンカップ)、天皇杯の3冠を成し遂げたガンバ大阪の長谷川健太監督だった。17年シーズン限りでG大阪との契約が切れる長谷川にアプローチし、さらに、翌シーズンに向けたチーム編成も着々と進めていた。


 DMM.com(DMM)からSTVVのCEO(最高経営責任者)就任のオファーを受けたのは、そんな時期だったのだ。


「株式を99.9%取得できそうだという話は聞いていたんです。そうしたら『サッカーのプロが経営に関わらないならお金は出せない』ということになって、僕の名前が出たらしい。『いやいや、無理ですよ』と。声を掛けた長谷川監督にも申し訳が立たないですから」


 しかし、もとはと言えば、自ら思い描いていた夢のプランである。その実現の最後のピースが、自分がCEO就任のオファーを受けること。


 山形が抱いたのと同じ気持ちが、立石の中にも湧き上がってきた。


 これを受けなければ、一生後悔するかもしれない――。

飯尾篤史
飯尾篤史

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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