連載:井上尚弥、さらなる高みへ

田口良一が井上尚弥にかける大きな期待 「フェザー級制覇できる」と断言

船橋真二郎
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2013年6月、日本ライトフライ級タイトルマッチの記者会見を行う田口と井上(写真左より) 【写真は共同】

 5月18日(日本時間19日早朝)、イギリス・スコットランドのグラスゴーにて、現WBA世界バンタム級王者で世界3階級制覇王者の井上尚弥(大橋/17戦全勝15KO/26歳)が、IBF同級王者エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ/19戦全勝12KO/26歳)とのWBSS(ワールドボクシング・スーパーシリーズ)準決勝に臨む。

 バンタム級で連続初回KO勝ちと圧倒的な強さを見せる井上がプロで初めてKOを逃した相手が、のちにWBA&IBF世界ライトフライ級統一王者となる田口良一(ワタナベ)だった。

「勝負になる」気持ちは揺らがなかった

 井上のプロ3戦目。当時の日本ライトフライ級王者・田口挑戦へと進むための前哨戦となった日本1位の佐野友樹(松田)との一戦は、早々に右拳を痛めた井上が並みのホープではないことを証明する試合になった。左手一本で巧みに試合を運び、4ラウンドに左フックでダウンを奪うと、最終10ラウンドにレフェリーストップを呼び込んだ。アクシデントにも動じない精神力、引き出しの多さを見せつけた。

 会場で視察した田口も「今までとはレベルが違う相手」と再確認させられたが「勝負になる」という気持ちが揺らぐことはなかった。

「時々、少しアゴが上がったり、ガードが空いたりするのが見えて。そこに左フックを合わせるのが作戦のひとつでした。でも、井上君相手に簡単ではない。全体的なレベルの底上げが必要だと思ったし、ベストコンディションでやっと勝負になるぐらいだと覚悟もしていました。気持ちで負けたら、一気に詰められることはスパーリングで分かっていたし、自分の調子も良かったので、リングに上がるときは吹っ切れて、『自分が勝つ』という強い気持ちで臨めました」

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井上の変化を感じた試合終盤

若きモンスター・井上(写真右)との激闘は判定まで持ち込まれた。田口は「ラウンドが過ぎるのが、あっという間だった」と振り返る 【写真は共同】

 13年8月25日の井上戦。ラウンドが過ぎるのが、あっという間だったと振り返る。井上はやはり「すべてがハイレベル」で、倒そうと雑になることもなかった。それでも「自分のパンチも当たる」という手応えが田口を前に出させ続けた。

 井上の変化を感じたのは終盤だった。
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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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